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V.A.『Good Mellows For Sunset Feeling EP』
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橋本徹が監修する新レーベルSuburbia Records第1弾として大好評を博した『Good Mellows For Seaside Weekend』の兄弟編となる『Good Mellows For Sunset Feeling』が7/17に先行入荷します。夕暮れどき特有のメロウな気分を、美しいマジック・アワーの光景のようにシネマティックな音像に託した、82分52秒の恍惚の音楽旅行。しかもトゥ・ロココ・ロット/ビョーク/Nujabesなどのサンプル・ソースとして名高いジジ・マシン「Clouds」を始め収録曲の半数以上が世界初CD化。心地よく甘美な至宝がしなやかに連なり、柔らかな叙情と透明感あふれる優美なメロディー、瑞々しいオーシャン感覚とアトモスフェリックな麗しいサウンドスケープも健在。夕陽と海の音楽が誘う、メロウ・ドリーミンでヘヴンリー&エレガントな音の桃源郷へぜひ。また、そのコンピCDの中から、特に入手困難だった曲やDJユースに向いた曲を選りすぐった、4曲入りのアナログEPも同時リリース。アプレミディ・セレソンでお買い上げの方にはもれなく(通販含む)、橋本徹・選曲のスペシャルCD-R(CD/EPどちらかの方には『Good Mellows For Sunrise Feeling』と『Good Mellows For Moonlight Feeling』、どちらもの方にはそれに加えて『More Good Mellows For Sunset Feeling』)をプレゼント致しますので、お見逃しなく!
『Good Mellows For Sunset Feeling』ライナー(橋本徹)
2015年春に、僕が監修・選曲を手がける新レーベル“Suburbia Records”の第1弾としてリリースされ、国内から海外まで多くの嬉しい反響をいただいた『Good Mellows For Seaside Weekend』。海辺の週末をイメージして、波の音や鳥のさえずりも心地よいピースフルな至福の名トラックを集めたそのコンピレイションの兄弟編として、2015年夏、新たに『Good Mellows For Sunset Feeling』をお届けできることを、とても嬉しく思う。夕暮れどき特有のメロウな気分と、ひとさじの感傷も入り混じる甘やかな情感、それでいてどこか清々しく爽やかなチルアウト感覚を、美しいマジック・アワーの光景のようにシネマティックな音像に託してみた。
合言葉は“Good Mellows, Good Fellows”。そして「夕陽と海の音楽、メロウな音の桃源郷へ」。“海辺の週末”編に優るとも劣らない、“夕暮れメロウ”な心を打つ素晴らしい名作群を集めることができて、胸の高鳴りを抑えることができない。しかも収録曲の半数以上が初めてCDで聴けるようになるという、特筆すべきトピックも。柔らかな叙情と透明感あふれる優美なメロディー、瑞々しいオーシャン感覚とアトモスフェリックな麗しいサウンドスケープも健在。メロウ・ドリーミン〜ダビー&フローティン〜ジャジー&オーガニックなとびきりの至宝が、83分近くにわたってメランコリックなトワイライト・アンビエンスを伴って連なる恍惚の音楽旅行。それは、いつまでも見ていたくなる甘美に移ろうマジック・アワーの情景のように(FJDによるジャケットのペインティングにも、そんな脳裏に焼きつくようなワン・シーンが描かれている)、永遠に聴いていたくなる音の流れ。さっそく収録された全曲を順に紹介していこう。
オープニングを飾るのはポーランドの新星Das Komplexの「Like A Fish」。自身のレーベルFather And Son Records And Tapesから2015年春に発表されたファーストEP『Nowadays』に収められていた珠玉のメロウ・チルアウト・バレアリカで、今年に入ってDJプレイすると最もオーディエンス(とりわけ女性)から問い合わせを受ける曲だ。特に『Good Mellows For Seaside Weekend』ライナーで触れたInternational Feelアンビエント・ラインの名作、EFEEL「Dawn Over A Quiet Harbour」へのリレーは、まさしく鉄板。鳴りの気持ちよさも抜群で、きらきらと甘美に揺らめくその心地よさは、新たなサマー・クラシックの誕生と呼ぶのに相応しい。
続いては、このコンピレイション最大の話題と言えるかもしれない、イタリアの生ける伝説的な名アンビエント・プロデューサー、ジジ・マシンの世紀の名曲「Clouds」の世界初CD化。トゥ・ロココ・ロット「Die Dinge Des Lebens」/ビョーク「It's In Our Hands」/Nujabes「Latitude」(Remix)/Moomin「A Day And A Night」という、きら星のごとく輝く傑作群のサンプル・ソースとしても名声を博す、チルアウト・メロウ・ピアノ・アンビエントの最高峰だ。Friendzoneのプロデュースで、クラウド・ラップの雄Main Attrakionz「Church」にもサンプリングされていて、ジジ・マシン本人もとても気に入っているというエピソードもある(彼はGaussian Curveというユニットで「Talk To The Church」という曲を後に吹き込んでいるが、関係あるのだろうか)。初出はSub Rosaレーベルから1989年にリリースされた、ディス・ヒートのチャールズ・ヘイワード(こちらはドローン・アンビエント)とのスプリットLP『Les Nouvelles Musiques De Chambre Volume 2』。その“新しい室内楽”というタイトルの命名もうなずける、ひたすら美しくメランコリックな旋律と音のレイヤーは、坂本龍一や中島ノブユキ、ゴンザレス『Solo Piano』などを愛する方にも、ぜひ聴いてほしい。ジジ・マシンは300枚ほどしかプレスされなかったという1986年のプロモ・オンリーのファースト・アルバム『Wind』も、リリカルで叙情性に富んだ「Clouds」と同テイストの素晴らしいアンビエント作品であることを、付け加えておこう。そして2014年には、オランダのレーベルMusic From Memoryで、『Good Mellows For Seaside Weekend』を発想するアイディアの源泉のひとつともなった、レア&未発表音源集『Talk To The Sea』が編まれ、再評価の声が決定的に高まっていくことになる。同年にはTempelhofとのコラボレイションで『Hoshi』も発表、2015年にはGaussian Curveとしてポスト・バレアリックを示唆するような名盤『Clouds』が登場する。そうした最近の流れの過程で手がけた、ベルリンのオーガニックかつ先鋭的なクリエイターSven Weisemannの「Falling Leaves」のリミックスも、やはり彼らしい郷愁を誘うピアノ・アンビエントだった。
続くTommy Awardsは知る人ぞ知る、という存在だろうが、ヨーロッパ的な美学と憂愁に包まれるこの「Hotel Odemark」は、僕が前世でも聴いていたのではないかと思うほど心の奥深くで運命的に惹かれる、愛してやまない曲。スウェーデンのJon MollerとAlexander Holmによるユニットで、ヴァイナル・オンリーの2013年作『EP2』より。ファーストEPの主要曲「Blind Andy」のコヨーテによるリミックスも含む粒揃いの4トラックの中でも、最もメランコリックで胸に沁みてくる、夢とうつつをたゆたうような幻想性。メロウ・バレアリカのひと言では何か大切なものを伝えることができない、幽玄のメディテイションへと誘ってくれる。溶けだすようなギター、ダビーでシネマティックな音の表情は、ポール・マーフィーが主宰するレーベルClaremont 56を思わせる、と言えなくもないが、僕が例に挙げたいのは、マンチェスターのBeginやベルファストのMaricopa。ジョイスが歌うカエターノ・ヴェローゾ作「Joia」をサンプリングした「Help Me」が大好きで、いつか『Good Mellows』コンピに入れたいと思っているBegin(いつもヴォイス・サンプルにブラジル音楽愛好家ぶりがうかがえる)は、身を委ねたくなるようなドリーミーなセンスと浮遊コードが特徴的で、2010年のシングル「Velocity」や、ソフト・サイケなColorama「Hapus?」のリミックスも愛聴盤だ。一方、Back To The BalearicsレーベルからのEP『Pastel Love Part Two』がよかったMaricopaは、メロディックでスウィートなフィーリングが共通していると思う。
次は再びジジ・マシン関連作で、ジョニー・ナッシュ(アートワークやファッションへのこだわりが感じられる彼の主宰するMelody As Truthの3枚のEPも僕は愛聴している)/ヤング・マルコとのドリーム・チームGaussian Curveによるチルアウト・メロウ・ミディアムの逸品「Impossible Island」。アムステルダムのMusic From Memoryに新録された、ポスト・バレアリックそしてポスト・ニュー・エイジと言うべき、透明で静謐、繊細で美しく穏やかなアンビエント・ジャズ盤『Clouds』の白眉だ。このアルバムで、ジジ・マシンはローズ/ピアノ、ジョニー・ナッシュはローズ/ギター/メロディカ/シンセ/トランペット、そしてヤング・マルコはシンセにリズム面とプロダクション・リーダーを担当。一発録りライヴ・レコーディングながら、まさにガウス曲線を描くような移ろいゆく音像が気持ちよく、僕は同時期に聴いたこともあり、A.r.t.Wilsonことアンドラス・フォックスのアンビエント・カセットをLP化した『Overworld』を連想したりもする。もちろん「Clouds」をセルフ・リメイクした「Broken Clouds」もお聴き逃しなく。
ご存じジョン・タイとピート・ファウラーによるバレアリック・ユニット、シーホークスの「No More Raindrops」(Steel Pan Dub)は、2011年にホーム・レーベルのCaptains Logよりリリースされた限定500セットのCD(ミニ・アルバム)付きスペシャル仕様7インチ『Another Summer With Seahawks』から。ビズ・マーキー「My Man Rich」でもサンプリングされたジャズ・クルセイダーズ「Way Back Home」を下敷きにしたゆったりとしたリズム、ダビーなギターやヴォイス・サンプル、ひたすら気持ちよい残響音が揺らめくように溶け合う、とろけるような極上オーシャン・トリップ気分のサマー・フローティン・バレアリカ。The Orbのアンビエント・ハウス・クラシック「Little Fluffy Clouds」で使われたリッキー・リー・ジョーンズのナレイションを加工したオリジナルに対し、こちらはホット・チップのアル・ドイルが清涼感あふれるスティール・パンを奏でる典雅なダブ・ヴァージョン。
そしてマスタリング直前でライセンスOKの知らせが届き歓喜した、イビサ「Cafe Del Mar」のオリジネイター、ホセ・パディーヤ「Adios Ayer」(Original Mix)の登場。バレアリック・チルアウト屈指の人気を誇るこの曲は、絶対に2001年のこのテイクが最高だと思う。じんわりと心が暖かくなり、ゆっくりと熱いものがこみ上げ、切なくも何とも言えない幸福感がにじんでくる。“Thinking of tomorrow with the sunset in your eyes”と歌いだされる、まさに夕暮れメロウな名作。ネイチャー・アンビエンスに導かれ、ストリングスやピアノに包まれた優美な旋律、ほのかに香るサウダージと異国情趣もビューティフルとしか言いようがなく、胸が詰まってしまう。
そのホセ・パディーヤの14年ぶりとなる最新アルバム『So Many Colours』のリリース元ともなり、名門レーベルの風格をより増しているInternational Feelの主宰者がマーク・バロット。カタログ1番のRocha名義やEFEELなどのエディット・プロジェクトの活動も充実しているが、2014年に発表され、ホセ・パディーヤも「これこそが自分にとってのバレアリック・ミュージックそのもの」と絶賛したファースト・ソロ・アルバム『Sketches From An Island』から「Deep Water」を。“島からのスケッチ”という形容通り、雄大な自然の美しさが浮かぶ、水しぶきのようなSEも快いサマー・ブリージンなナンバー。たゆたう波に揺られるような、ゆっくりと大海原を行くような、心地よいメロウネスと映像美豊かなオーシャン・フィールを味わうことができる。僕はアルバムのラストに置かれた、聖地イビサ島を讃えるような鳥のさえずりに彩られたピアノ曲「Sacred Island」にも強く惹かれるが。
イギリスのニュー・ディスコ・レーベルNeedwant編集で、“New Chill And Warm Sunset Sounds”を標榜する『Future Balearica』は、コンセプチュアルかつ粒揃いの選曲に僕も一目置いているコンピレイションだが、プロジェクト・クラブの「Leaves Of Millfield」は、サンシャインをテーマにしたそのヴァイナル・サンプラーEPからの瑞々しい爽快クール・チルアウト・チューン(カップリング曲のFete「The Islands」も、南国的な至福のトロピカル・グルーヴだ)。甘く優しいアコースティック・ギターが心地よく鳴り響き、ピアノや涼やかな電子音響と共に醸しだす、ウィンディー&サニーなビーチ感は、ポール・マーフィー〜Claremont 56の作品にも通じる。この曲を気に入ったら、プロジェクト・クラブの2009年Is It Balearic?からのデビュー・シングル「Intro」も聴いてみてほしい。2011年Above Machineからの「Field Of Dreams」あたりも。Needwant発のコンピ『Future Balearica』は、“A New Wave Of Chill”というサブ・タイトルを冠して第2弾も制作されている。
続いても、コヨーテ主宰Is It Balearic?からの2010年作、究極のシー・クルーズ・サウンドだと思う「Panorama Suite」が何と言っても最高だったMax Essa。20年以上のDJ歴をもつニュー・ディスコ〜バレアリックの礎を築いたマエストロのひとりで、Bear Funkからのソロ・アルバムや、そのレーベルを主宰するスティーヴィー・コーティーとのコラボ・アルバムも見逃せないが、近年は日本に移住して活躍を続けている。今回選んだのは、そんなMax Essaのチルアウト・サイドを代表する名品だと思う「All Is Not Lost」で、2014年にBack To The Balearicsより発表された『Your Carnival Sounds Like This EP』のリード・トラック。清涼感と黄昏感、それにマリン・フレイヴァーを併せもつアコースティック・ギター、幻想的で透明な叙情漂うアトモスフェリックなシンセ・パッドが印象的なユーフォリック・アンビエントだ。
次もヴェテランが続き、1994年にWarpからリリースされ、チルアウトの指針となったと誉れ高い『It!』や、アーリー90sのUKハウス・クラシック「Feel It」で知られる、クリス・ココのデュオ・プロジェクト。よりアブストラクトなグルーヴへと進んだ1997年のセカンド『New World』からの、ここに収めた「La Isla」は、ありそうでないタイプの隠れた秘宝として大推薦したい。スパニッシュ風味のブルージーなギターに、ドープなベースの存在感、ナレイションに澄んだ女声コーラス、ダブ処理の効いたプロダクションのカッコよさ。BEAMS RECORDSで行われた『Good Mellows For Seaside Weekend』のリリース記念イヴェントでDJプレイしていたら、ポール・マーフィーとMax Essaのご両人が問い合わせてきた、嬉しい一場面も忘れられない。
『Good Mellows For Sunset Feeling』も佳境に入り、ここからは沈みゆく夕陽、そして陽が暮れた後の、夜の帳が降りてくる情景を思い浮かべながらのセレクション。Christian RonnによるプロジェクトGangaの「Luna」は、僕がこの15年ほど、特別な思いと共にリリースを追い続けている、コペンハーゲンのMusic For Dreamsから2004年に発表された12インチ。Lunaという娘の誕生にインスパイアされて生まれたという、ビューティフル・メランコリー・チルアウトの極みだ。小さな幸せとセンティメントが入り混じるような、美しいスパニッシュ・ギターと漂うシンセ。ダビーなアコースティック・ギターの揺らぎに惹かれるという、自分の音楽的嗜好に気づかせてくれた曲でもある。ケネス・ベイガー主宰のMusic For Dreamsは、バレアリック名門として確固たる信頼を得ているレーベルだが、僕は未だに、彼が2001年に編んだデジ・ブック仕様の2CDコンピ『Music For Dreams』を、毎晩のように眠る前に聴いていたことをよく憶えている。最近もそこからの限定10インチ・ヴァイナルで、Blissの「The Suns Of Afterlife」をDJの始まりや深夜にスピンしているほどで、本当の意味でチルアウト/ダウンテンポということを意識するきっかけとなり、コンパイラーとしても影響を受けたと言っていいだろう。今回のコンピを選曲するにあたっても、ジャン・リュック・ポンティーのヴァイオリンをフィーチャーして「夏の日の恋」を引用した、ケネス自身の「Love Won't Leave Me Alone」を収録候補に考えていた。彼の2006年のファースト・アルバム『Flagments From A Space Cadet』では、ジュリー・クルーズを迎えたミニー・リパートン「Les Fleurs」のカヴァーも見逃せないが。
しっとりとした黄昏が似合う次のIshmael「Time & Time Again」も、300枚限定ハンド・スタンプ仕様ホワイト・レーベルの10インチ・ヴァイナルで、2015年春にリリースされた絶品ビートダウン・ジャズ。由比ヶ浜の「Good Mellows」で開かれた『Good Mellows For Seaside Weekend』のリリース記念パーティーで、さっそく陽が沈んだ頃にかけたら、夜の海のさざ波に反射する光と溶け合って、官能的なほどだった。その際もそうだったが、DJプレイしていると、不思議と(というより必然か)CALM好きの音楽ファンから問い合わせを受ける曲でもある。印象的なエレピのループ、暖かなアコースティック・ピアノにウッド・ベース、ダビーにこだまする女性ヴォーカルに、夜の香りを添えるホーン。ほのかなスウィング感もたまらない。ノスタルジックでロマンティックな響きがじんわりと染みて、スピリチュアル&メロウに浮遊する。ムーディーマンのMahogani Music諸作にも通じるブラック・フィーリングが漂っているのもいい。
本来はこの後に、イギリスのFar Outから今春リリースされて話題を呼んだ、セオ・パリッシュによるマルコス・ヴァーリ「1985」のリコンストラクションを、と考えていたが、8分を越える長尺ゆえに断念したことも、余談ながら付記しておこう。やはり使用許諾を得ていた、ロシアのSaint Petersburg Disco Spin Clubによるダニー・ハサウェイ「Love, Love, Love」の好リワーク「Love Spin」を、とも思ったが、そちらも“Moonlight”というテーマで構想している次作の『Good Mellows』コンピのために、温存しておくことにした。
『Good Mellows For Seaside Weekend』にもエントリーしたClaremont 56のバレアリック・デュオ、スミス&マッドの片割れB.J.スミス(ホルガー・シューカイとのBisonやクレイジー・PとのWhite Elephantなどでも活動)は、前回はアウトキャスト「Hey Ya!」のナイス・リワークを収めたが、満を持してファーサイド「Runnin'」のフォーキー・メロウ・カヴァーを。ファーサイド版のサンプル・ソースとなったスタン・ゲッツ&ルイス・ボンファ「Saudade Vem Correndo」を連想させる、アコースティックなブラジリアン風味の逸品に仕立てられている。言ってみれば、黄昏気分のバレアリック・サウダージ・ソウル。ホーム・レーベルNuNorthern Soulからのファースト10インチ『Dedications To The Greats』のB面曲だが(A面のモス・デフ「Umi Says」のリメイクも必聴)、やはりヒップホップ名作のチルアウト解釈において、B.J.スミスは群を抜いていると感じさせてくれる。『Good Mellows For Seaside Weekend』リリース直後には、コンピレイションの選曲オファーもいただいた、NuNorthern Soulのレコード・スリーヴに綴られている“We are eclectic, we are not a SOUL music label, we release music with SOUL”というレーベルのマニフェストが、僕の選曲信条と強く共振する言葉であることも付け加えておこう。
オーストラリアはメルボルンのホープであり、アンビエント・ビートダウンの旗手アンドラス・フォックスは、この『Good Mellows For Sunset Feeling』のメイン・アクトのひとりと考えていたので、何を収録するか、最後まで嬉しい悩みだった。ウォッシュト・アウトやピーキング・ライツでもお馴染みのブルックリンの名門インディーMexican SummerからのEP『Vibrate On Silent』に収められていた「Driftwood」(Instrumantal)か、Basso主宰のドイツGrowing Binでアナログ化されたA.r.t.Wilson名義のアンビエント作『Overworld』からの「Rebecca's Theme」(Water)か、あるいはそのA.r.t.Wilsonの「Sun Sign Aries」にメロディカやパーカッションを被せたBrenda Ray「Shimmer And Sway」(Dawn Dance)か。ゆるやかでふんわりしたハンドメイドな質感、ウォームなキーボード〜TR-707・ワークは紛れもない彼の個性で、大いに迷ったが、やはり結局、得意のドリーミーで透明感のあるアトモスフェリックな作風や、ラリー・ハードを思わせる繊細な美学や色香がより伝わる、元ルームメイトだというヴォーカリストのOscar S. Thornとの共演作を優先させることにした。そして選んだのは、チェット・ベイカーやファラオ・サンダースもリリースしているアムステルダムのDopeness Galoreから、アンドラス&オスカー『Cafe Romantica』に心残りしつつも、『Embassy Cafe』より「Running Late」。ペヴェン・エヴェレットやクレイグ・デヴィッドに影響されたという、しなやかに艶めくファルセット・ヴォイスが、優しく広がるキーボードと淡く甘美に溶け合い、“間”を生かしたビートと浮遊感のあるコードが夢幻のメロディーをきらめかせる、文句なしの傑作。夕陽の見えるイビサの海辺のレストラン&DJスポットをイメージしたという、NuNorthern Soulのコンピ『La Escollera Session 1』にもエントリーされていたのも納得だ。
アンドラス・フォックスの諸作からも感じられる、“90年代的なきらめきとロマンティシズム”のようなものが、コンピ全体の通奏低音になっている、と選曲の過程で意識していたからか、ラスト・ナンバーにはブラジリアン・ハウスの金字塔として名高い、NYハウスの看板レーベルNervousから放たれた1997年のクラブ・ヒット、バイロン・スティンギリーの胸を打つファルセット・ヴォイスに酔いしれる「Flying High」(MAW Brazilian Vocal)を選んだ。数々の歴史的フロア・アンセムを生んだ元テン・シティーの名ヴォーカリストのソロ作だが、ここでのマスターズ・アット・ワークのリミックス・ワークには、心底から感激した。アコースティック・ギターのカッティングとボサ・ビートは、大好きなホセ・フェリシアーノによるスティーヴィー・ワンダー「Golden Lady」の至上のカヴァーを彷彿させ、Free Soulファンからも絶大な人気を集めたことは言うまでもない。ちょっと懐かしさが募るような、温かい気持ちに包まれて、僕にとって大切な思い出と共にある音楽を連ねた『Good Mellows For Sunset Feeling』は幕を閉じていく。
追記:
コンピCD『Good Mellows For Sunset Feeling』の中から、特に入手困難だった曲やクラブ・ユースに向いた音源を選りすぐった、4曲入りのアナログEPも2枚リリースされますので、そちらもぜひお楽しみください。
『Good Mellows For Sunset Feeling』(CD)
01. Like A Fish / Das Komplex
02. Clouds / Gigi Masin
03. Hotel Odemark / Tommy Awards
04. Impossible Island / Gaussian Curve
05. No More Raindrops (Steel Pan Dub) / Seahawks
06. Adios Ayer (Original Mix) / Jose Padilla
07. Deep Water / Mark Barrott
08. Leaves Of Millfield / The Project Club
09. All Is Not Lost / Max Essa
10. La Isla / Coco Steel & Lovebomb
11. Luna / Ganga
12. Time & Time Again / Ishmael
13. Runnin' / B.J. Smith
14. Running Late / Andras Fox feat. Oscar S. Thorn
15. Flying High (MAW Brazilian Vocal) / Byron Stingily
『Good Mellows For Sunset Feeling EP』(レコード)
A1. Like A Fish / Das Komplex
A2. Hotel Odemark / Tommy Awards
B1. Leaves Of Millfield / The Project Club
B2. Luna / Ganga
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