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Luedji Luna『Bom Mesmo É Estar Debaixo D'Água』

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Apres-midi Records - Artists

アプレミディ・レコーズの単体アーティスト第23弾として、2017年の前作『Um Corpo no Mundo』が“アフロ・ブラジリアンの宝石”と絶賛され大好評を博したブラジルの女性シンガー・ソングライター、ルエジ・ルナの最新アルバム『Bom Mesmo É Estar Debaixo D'Água』が7/30にリリースされます(この日本盤CDが待望の世界初フィジカル化!)。配信のみのリリースながら「ミュージック・マガジン」誌の年間ベスト企画/ブラジル音楽部門で2020年のベストワンに選出されていた、静かな情熱が揺らめく歌唱とアフロ・ブラジル〜ソウル〜ジャズから室内楽までが自由な創造性で融合されたアレンジメントが素晴らしい、ルーツ回帰とアーバン感覚が両立する今のブラジル・シーンを代表する名作であり、しなやかにブラック・ディアスポラ〜黒人女性としての表現を追究した、ニーナ・シモンのカヴァーも含む至宝のような12の物語が綴られ、コロナ以降のブラジル音楽を象徴し前進させた一枚として、歴史的にも語り継がれるに違いない名アルバムです。アプレミディ・セレソンでお買い上げの方にはもれなく(通販含む)、橋本徹・選曲のスペシャルCD-R『Best Of Suburbia Radio Vol.35』をプレゼント致しますので、お見逃しなく!


Luedji Luna『Bom Mesmo É Estar Debaixo D'Água』ライナー(江利川侑介)

「ミュージック・マガジン」が毎年行っている年間ベスト企画のブラジル音楽部門で、このルエジ・ルナのアルバム『Bom Mesmo É Estar Debaixo D'Água』は2020年のベストワンに選ばれた。僕もパネリストとして参加しているのだが、アーティストたちの作品に順位をつけるこの企画は、とても責任の重い仕事だ。当然ながら今一度その年のリリースを洗い直し、すべての候補作を何回も聴き直すことになるのだが、そんな作業を通じて2020年を代表する一枚に相応しいと思ったのが本作だった。それはもう一人のパネリストである栗本斉さんも同じだったようで、この手の合評にしては珍しく、本作は文句なしでのベストワン選出だったと記憶している。

ルエジ・ルナはブラジル北東部にあるバイーア州の州都サルヴァドールのルエジ・サンタ・ヒタ(Luedji Santa Rita)で生まれ、ブルー・カラーが多く働くブロタス地区で育った。音楽に溢れる家庭だったそうだが、安定した仕事をという両親の薦めもあり法律の道へ進む。進学した私立学校に黒人女性の生徒は少なく、そこでいじめも経験するが、シャイで物静かだった彼女を変えたのは言葉だった。言葉を駆使し、書くことで沈黙を破るようになり、それが音楽になっていたのだと彼女は英「ガーディアン」のインタヴューで語っている。

大学を卒業するも晴れない気持ちだった彼女は、ヨガや瞑想を取り入れることで、歌いたいという自身の心の声に気づく。弁護士のインターンとして稼いだお金で歌手になるためのレッスンを受けるようになると、ブラジル音楽産業の中心地であるサンパウロに拠点を移し、そこで出会った映像作家の一人であるジョイス・プラードが撮影したミュージック・ヴィデオ「Banho de Folhas」が大ヒット。その曲を収録したアルバム『Um Corpo no Mundo』(2017)で本格的にデビューを果たすと、この作品は日本のApres-midi Records、そしてイギリスの名門Sternsからもライセンス・リリースされるなど、ワールドワイドに高い評価を獲得した。

本作『Bom Mesmo É Estar Debaixo D'Água』はそれ以来、約3年ぶりに発表されたセカンド・アルバムだ。各種配信プラットフォームでは2020年の10月14日にデジタル・リリースされ、同時に先述のジョイス・プラードが手掛けた23分にも及ぶミュージック・ヴィデオもYouTube上で公開されている。
 
作品のテーマは黒人女性の人間性を取り戻すこと。そのために彼女は黒人女性の視点から愛について語る手法を選ぶ。彼女たちに求められるのは抑圧や飢え、闘争についてばかりで、愛をテーマにした物語はこれまでほとんどなかったからだ。詩は自身で書いたものもあれば、同郷サルヴァドールやミナスの詩人のもの、ニーナ・シモンの曲を引用し、そこにポエトリー・リーディングが続く曲もある。愛の概念を語る詩から、指輪も靴もなく家を飛び出す女性、モノとして扱われていると感じる女性、肉体関係があっても一緒にいたくないと言われる女性など、ストーリーも実に様々。音楽家となるきっかけが言葉への目覚めだったというだけあり、彼女の歌詞に対する感覚は極めて鋭敏だ。そんな12の物語を通じて、彼女自身、そして多くのブラジルの黒人女性が直面している孤独感や見捨てられた気持ち、また一個人として生活したいという切実な願いを代弁したのが、本作と言えるだろう。

プロデュースは前作にも参加していたケニア人ギタリストのカト・チャンゲが担当。加えてコンゴ系ブラジル人のフランソワ・ムレカ(ギター)、キューバ人のアニエル・ソメリアン(エレクトリック&アコースティック・ベース)、ルナと同郷バイーア出身のフヂソン・ダニエル・ヂ・サルヴァドール(パーカッション)などなど、実にマルチカルチュラルな面々で制作されている。音楽的にもチャンゲのルーツであるケニアの音楽やジャズ、ソウルからの強い影響もあるし、レゲエのリズムを取り入れている曲もある。一方で「そういった場所や所属、定型化したサウンドを意識することなく、自由に創作し、その自由の中でそれぞれのアイデンティティーを刻み込んでいった。そしてそれは全くもって理にかなっていた」と、彼女は「Brasil Calling」のインタヴューで語っている。

ルナの歌声は前作同様で、抑制された中に底知れぬ情念を秘めている。静かに燃える炎のような歌声が変わらず魅力的だ。一方でミュージシャンたちの演奏にフォーカスすると、前作よりも躍動的で、歌と伴奏といった趣の前作から歌と対等の関係に変化しているように感じる。これはプロデューサーがセバスティアン・ノティーニからカト・チャンゲに変わったことも影響しているだろう。抑制的な世界観でバイーアの音楽が持つ生命力を小宇宙的に表現したノティーニの作風に対し、本作ではそれぞれがより自由に個性を発揮するよう録音されているのは先述の通りだ。

だからといって、それぞれがいたずらに個を主張するようなことはなく、常に主役はルナが紡ぐ物語だ。その意味では前作と同じ抑制のきいた作品だが、にもかかわらず前作よりも切実にルナの情念が迫ってくるように感じるのは、ここ数年の彼女を取り巻く状況の変化なのかもしれない。

先述の英「ガーディアン」の記事で、ルナはブラジルの現政権によるマイノリティーへの迫害や人権軽視について言及しているが、彼女だけではなく、僕の知る多くのミュージシャンも現政権に対し「No」の声をあげている。失政・汚職による経済の低調もそういった状況を加速させ、とりわけ2016年のリオ五輪後、バブルが崩壊してからは分断が深まるばかりで、ブラジル全体に不穏な空気が漂っている。それに加えてこのパンデミックな状況だ。ミュージシャンはコンサートの機会も奪われ、沈鬱とした気持ちになってもおかしくないだろう。

そんななかでも彼女は怒りや不満を爆発させるのではなく、異なるルーツを持つミュージシャンたちと前例のない愛の物語を紡ぎ、人々に静かに問いかけている。そんな高貴なふるまいの裏側にある、彼女の深い葛藤や苦悩も痛いほど伝わってくるし、同時にその毅然とした姿勢に襟をただされる。なぜなら、これは彼女やブラジルだけの話ではなく、僕を含めた今この時代を生きるすべての人に向けられたメッセージであり現実だからだ。

2020年を象徴する音楽作品であり、黒人女性による愛の物語、そして静かなる闘争の記録でもある、こういった作品が日本でもCDでリリースされ、モノとして人々の手に渡るのはとても意義あることだと思う。本作を購入した人、配信で聴いた人でもいい、ぜひソーシャル・メディアなどでルナたちにそのことを発信してあげてほしい。困難な状況でも愛し愛されることの大切さを説いた本作が、はるか彼方の日本で聴かれ、ポジティヴなエネルギーが彼女たちのもとへ還っていくのなら、こんなに美しいことはないだろう。
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