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Michael Seyer『Bad Bonez』

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アプレミディ・レコーズの単体アーティスト作品第17弾として、「21世紀版シュギー・オーティス×マイケル・フランクスのような絶妙のセンス」と絶賛されるカリフォルニアの若き男性シンガー・ソングライター/トラック・メイカー/マルチ・プレイヤー、マイケル・セイヤーが2018年春に配信&カセットで発表した傑作アルバムの待望のCD化となる『Bad Bonez』が7/27にリリースされます。揺らぐエレピのメロウネス、溶けだすようなスウィート・サイケデリア、甘美にとろける極上のローファイ・ベッドルーム・ソウル〜チルアウト・AORの新名盤で、「マック・デマルコやホームシェイクのような脱力感が気持ちいいメロウなローファイ・ポップ」「ほのかなブラジル風味の西海岸インディー・R&B」「中毒性の高いシロップ・ポップ」などとメディアやSNSで高感度の音楽好きに熱狂的に支持されており、フランク・オーシャンやモーゼス・サムニー、ベニー・シングスやモッキー、トミー・ゲレロから坂本慎太郎のファンにまで幅広くおすすめの幽体離脱的な白日夢サウンドです。アプレミディ・セレソンでお買い上げの方にはもれなく(通販含む)、橋本徹・選曲のスペシャルCD-R『Best Of Suburbia Radio Vol.12』をプレゼント致しますので、お見逃しなく!


Michael Seyer『Bad Bonez』ライナー(waltzanova)

ベッドルーム・ポップ、ローファイ・ソウル、アンビエント・R&B、ソフト・サイケデリア、トロピカル・チルアウト、ネオ・AOR……。『Bad Bonez』を聴き、それを形容するとしたら、今書いたような単語が多く挙がるのではないだろうか。それらはどれも正しい。逆に言えば、『Bad Bonez』は聴き手の音楽的嗜好や経験値に応じて、さまざまな位置づけをすることのできるアルバムである。

『Bad Bonez』を聴いたとき、僕はいくつものアーティストやアルバム名が頭に浮かんだが、昨年亡くなった“ムッシュ”こと、かまやつひろしがかつて用いた言いまわしに倣えば、「シュギー・オーティスとマイケル・フランクスの両者を掛け合わせたものをベースにして、J・ディラのビートとフランク・オーシャンのR&B感覚で味つけをする」というような説明がふさわしいと感じた。

シュギー・オーティスは、かつては「ジョニー・オーティスの息子」「スーパー・セッション」という枕詞が引き合いに出された黒人ギタリスト~シンガー・ソングライターだが、現在では『Inspiration Information』(1974年)の人、というのが適切な説明だろう。彼の代表作として知られる『Inspiration Information』は、リズム・ボックス(スライ・ストーンも『There’s A Riot Goin’ On』(1971年)や『Fresh』(1973年)などで用いていた)と自らの演奏による多重録音によって構成され、ベッドルーム・ミュージックや宅録ファンク、さらにはマルコス・ヴァーリ『Previsão Do Tempo』(1973年)と並ぶ音響派の元祖としても名高いアルバムだ。一方、マイケル・フランクスは70年代から活動を続ける、ジャズ~ボサノヴァ色の濃い洒脱なシンガー・ソングライター。チェット・ベイカーやジョアン・ジルベルトの影響を感じさせる作風は、ケニー・ランキンなどと並び称される。1977年リリースの『Sleeping Gypsy』は、シティー・ミュージックの粋を凝縮した一枚として現在では定番化。今年発表した7年ぶりの新作『The Music In My Head』で、その唯一無二の個性が今なお健在であることを示した。シュギー・オーティスもマイケル・フランクスも、現在では一般教養的に音楽好きの間では受容されているが、それが90年代以降の価値観を通過していることは書き添えておくべきことだろう。

『Bad Bonez』の冒頭3曲「Bad Bonez」「Ring Around The Rosie」「Show Me How You Feel (Eros)」に、今紹介したふたりの影を窺うことができる。ちょっとよれたようなチープなキーボードの音色にゆらゆらと漂うような音像、パーソナルに語りかけてくるヴォーカル。そしてほのかに香るトロピカル・アトモスフィア。これで一気にマイケルの世界に引き込まれていく。『Bad Bonez』はこの春に最初は配信とカセット(限定200本)でリリースされており、そのあたりはいかにも今どきのインディー・アーティストという感じがする。僕は今、そのカセットを聴きながらこのライナーノーツを書いているのだが、クレジットを見るとギターやベース、キーボードなど演奏のほとんどはマイケルが担当しており、ミックスも自身が行っている。ドラム・アレンジはアートワークも手がけているアントニオ・アイレオによるものだが、友人と作ったDIY的な手触りもこのアルバムの特徴だ。

改めて記しておくと、マイケル・セイヤーはカリフォルニアを拠点として活動するガーデナ出身のアーティスト。この22歳の俊英は、自宅と大学の寮(彼の専攻は文学だそう)で本作を録音したという。自らもベースを弾くBane’s Worldの活動も並行して行っている。自身はこれまでに2枚のEPと、『Ugly Boy』(2016年)というアルバムを発表。初期の作品はインスト中心のベッドルーム・ミュージック的な色彩が濃いものだったが、作品を追うごとにヴォーカルの比重や音楽的な統一感が増していっており、『Bad Bonez』は彼のターニング・ポイントとなる作品だろう。音楽的な文脈としては、マック・デマルコや、彼のバンドにギタリストとして参加していたピーター・セイガーのプロジェクトであるホームシェイクといったインディー・ポップの流れで紹介されることが多いが、マイケルの個性はやはりそのソウル・ミュージックへの親和性を感じさせる音楽性にある。タイラー・ザ・クリエイターの企画するイヴェントにも出演しているとのことで、今後のLAの音楽シーンに注目していくうえでも見逃せない人物になるに違いない。

『Bad Bonez』の魅力は先述のように多岐に渡るが、シティー・ソウル~ネオ・AOR的なフィーリングというのは外せないポイントだろう。どことなく70年代的なフィーリングを持った「Weekend At Santa Cruz」は、親しみやすい曲調が印象的。西海岸の週末をレイドバックして過ごす青年の後ろ姿が浮かんでくる。また、マイケルのシンガー・ソングライター的な資質を感じさせるのがメランコリックな「Waiting For You」。終盤でのサックス・ソロも効果的だ。続く「Lucky Love」は、ワルツ・テンポの優しげでノスタルジックなナンバー。この曲からは、ベニー・シングスやモッキーといった2000年代以降のシンガー・ソングライター~サウンド・クリエイターとの近接性が感じられる。ジャンル的にはアンビエント・ソウル~R&Bにも括ることができる『Bad Bonez』だが、そのテイストは「汗知らずスウィート・インディー・ソウル」という趣きだ。

『Bad Bonez』の核心は何かと問われたら、それはやはりある種の「空虚さ」や「気怠さ」を伴った浮遊感だ。聴いているうちに身体が透き通っていくような幽体離脱的感覚、と言ってもいいだろうか。それは間違いなくジェイムス・ブレイク〜フランク・オーシャン以降のもので、内省的な語り口や体温をあまり感じさせない音楽的な肌触りにも表れていると思う。「I Feel Best When I'm Alone」「An Awful Lonely Summer」といった曲タイトルからも、そんなぼんやりした“ひとり感”を感じることができる。最近のアーティストで言えば、モーゼス・サムニーやジェイミー・アイザック、といった名前を挙げるとそのニュアンスがわかってもらえるだろうか。モーゼス・サムニーの2017年作『Aromanticism』は、フランク・オーシャンを経由したアンビエント・R&Bの新たな局面を示した傑作だったが、そのアートワークもまたサウンドのエッセンスを具現化したものだった。宙に浮かぶ首のない男性。ファルセットで紡がれるセンシティヴな世界観は、ライのマイク・ミロシュなどとの共通性も持っているが、『Bad Bonez』もそのようなアーティストとの同時代性を感じさせる。

ジャケットに描かれているのは骸骨と薔薇。生と死を象徴するモティーフと言われている。先ほど「幽体離脱的」と称したが、『Bad Bonez』のサウンドは、あの世とこの世を行き来するような感覚がある。それは白昼夢的、と言ってもいいかもしれない。『Bad Bonez』から受けるそのような印象は、やはりLA産インディーという背景によるところも大きいように感じる。カリフォルニアの夏と言っても、それはかつてビーチ・ボーイズの作品で描かれたエンドレス・サマーではなく、同じような景色のハイウェイとひたすら晴れの続く気候という、どこか奥行きを欠いた平板な風景だ。ラストに置かれた「Sonata For A Bad Ghost」はメロウここに極まれりというセンティメンタルなナンバーだが、それは海辺の夕暮れよりもLA郊外のありふれた街並みが似合うものだ。

もうひとり、僕が『Bad Bonez』を聴いて連想したアーティストが坂本慎太郎だった。ジャケットでマイケル(と思しき人物)が手にしている骸骨が、坂本の『ナマで踊ろう』(2014年)のジャケット(描かれているのはやはり骸骨である)を連想させたのだろうが、彼の音楽の「からっぽ」さ、あるいは「空洞」といった言葉で表現されているフィーリングは、『Bad Bonez』のそれとも相通じているように思う。坂本慎太郎の音楽もまた、シュギー・オーティスとの親近性で語られることが多い。隙間を生かした音作りや浮遊感が共通点と言えるが、『Bad Bonez』もまた、坂本慎太郎の親戚筋に当たるような関係性のアルバムだと思う。ともあれ今年の夏は、この甘美で心地よい“まぼろしのような音楽”と親密に付き合っていきたいと思う。
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