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Cantoma『Just Landed』

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Suburbia Recordsの単体アーティスト・アルバム第1弾となるCantomaの『Just Landed』が、3/19に先行入荷します。バレアリック〜チルアウト屈指の名盤として誉れ高い前2作に優るとも劣らない待ちに待たれていた新作で、日本盤2か月先行発売+ボーナス・トラック2曲収録。アプレミディ・セレソンでお買い上げの方にはもれなく(通販含む)、FJDアートワークによるA3ポスターとコースターとポストカードとメモ帳、橋本徹・選曲のスペシャルCD-R『Free Soul for Good Mellows ~ Disc1』(同時入荷の『Cantoma For Good Mellows』/『Cantoma For Good Mellows EP』のいずれかと併せて2枚ご購入の方にはそれに加えて『Free Soul for Good Mellows ~ Disc2』、併せて3枚ご購入の方にはさらに『Free Soul for Good Mellows ~ Disc3』)をプレゼント致しますので、お見逃しなく!


Cantoma『Just Landed』ライナー(日高健介)

“バレアリック”という音楽ジャンルが日本で定着してからしばらく経ち、人によって様々な意味を持つと思う。元々は、地中海のスペイン沖合にある、バレアレス諸島に属する、太陽を満喫できる享楽的な雰囲気に溢れる避暑地で、昔はヒッピー達が集まっていた楽園、イビサ島で産まれた、先鋭的な独自の音楽シーンのクラブでプレイされたミュージックを指している。「“バレアリック”は言葉として安易には定義できないと思う。真の“バレアリック”という言葉は、イビサの1986~1989年の時代、そしてロンドンでは1988~1989年の時代を表している。それ以降、“バレアリック”の意味が変わっていった。あるアティテュードやフィーリングでプレイするレコードにも当てはまると思うが、スパニッシュ・ギターが入っているすべてのレコードが“バレアリック”だと勘違いされがちで、それは真実ではない」とCantomaことPhil Mison(フィル・マイソン)は2006年に行われたPHONO誌の“バレアリック”特集の取材で語っていた。

流麗な音楽に対する純真な好奇心を持ち、かつラテン・テイストを盛り込み、当時実に革新的な、多岐に渡る独特なセレクションをプレイする独自のDJスタイルで、近代クラブ・ミュージックの創造に多大な影響を及ぼしたと言われている黄金期のAmnesiaのレジデントDJ、Alfredoや、この島を代表するクラブで、後に人気コンピレイション・シリーズの名となるCafe Del Marで、イビサのサンセットに相応しい、かけがえのない極上なチルアウトのサントラをプレイし、自らこのジャンルの誕生に計り知れない余波と功績を残したJose Padilla(ホセ・パディーヤ)。イビサを初めて訪れた1990年以降、この二人の重鎮達の自由奔放で、革新的な音楽スピリットを伝授された一人のイギリス人のDJが、フィル・マイソン。イギリスのエセックス出身の彼は、この二人の先駆者に大いに影響され、バレアリックとチルアウトのジャンルが台頭してきた1990年代初頭から、これらの音楽スタイルを広め続ける草分け的な存在である、世界中を駆け巡る人気DJだ。また、これらのジャンルの作品やリミックスを手掛けるプロデューサー、リミキサー、ミュージシャンとしても活躍している。今までCantoma名義のアルバムを計2枚発表し、最近新たな別ソロ名義、Ambalaを立ち上げ、今後Music For Dreamsから作品を出す予定。DJ/プロデューサーのPete Herbertと共に、Reverso68、Fronteraの名義でも作品やリミックスを出している。Cantomaの2作目の解説を書いたフィル・マイソンの大先輩で、UKクラブ・ミュージックの先駆者の一人であるダニー・ランプリングは彼についてこう記した──「Cantomaがプロデュースしている音楽の心地よさは、イビサのリラックスした、バレアリックのスピリットに深く精通している」。

彼のDJ活動は、1991年にロンドンの名クラブ、Milk Barで始まった。毎週月曜日に開催していた元アンダーワールドのダレン・エマーソンのパーティーで前座を務め、閉店までDJしていた。元々DJになろうと全く思っていなかったが、自然の成り行きでなったそうだ。ペンギン・カフェ・オーケストラ、オノ・セイゲンなどを収録していた、ホセ・パディーヤが監修していた有名なCafe Del Marのコンピレイションを出す前に手売りしていた、伝説的な1991年頃のミックス・テープ(興味深い内容で、www.testpressing.orgで幾つか試聴できる。フィル・マイソンいわく、これらのテープの同内容がCafe Del Mar のコンピレイションになるのかと当時思っていたそうだ)を入手し魅了され、収録曲を掘り出し、このスタイルの音楽をプレイし始めた。共通の友人を通して、毎週月曜にMilk BarのレジデントDJだったダレン・エマーソンを経由して、このクラブのマネジャーの手元に彼が作ったミックス・テープが渡り、気に入られ、早い時間にDJするオファーを受ける。

1992年に、イビサで魅了された憧れのDJ、ホセ・パディーヤに友人を通してまた自分が作ったミックス・テープを渡してもらった後、翌年の春に運命的にロンドンのレコード屋、Tag Recordsでバッタリ出会う。ホセ・パディーヤはフィル・マイソンのミックス・テープを漠然と覚えていたそうで、彼がMilk BarでDJしたときに訪れ、少しDJもしてくれた。そしてタイでDJブッキングがあるので、代役としてCafe Del MarでDJしてくれないかとホセ・パディーヤに誘われ、フィル・マイソンは引き受ける。翌週に彼はイビサに行き、2か月間Cafe Del MarでDJする。その後同年の9月に、そして翌年の夏に長期にわたりCafe Del Marでプレイし、師匠のホセ・パディーヤの元で今の独自のバレアリック、チルアウトのDJスタイルを総本山のCafe De Marで確立し、注目され始める。その後に彼は、早々と1995年に初のミックスCD『Chillout - The Album』を出すオファーを受け、その後に数多くのレーベルから『Chillout』『Soundcolors』『Real Ibiza』等、計10枚以上のミックスCDとコンピレイションを手掛けるようになる。

DJとプロデューサーとして、師事したホセ・パディーヤに何を学んだのかとフィル・マイソンに訊いてみた。「ホセ・パディーヤと出会えなかったら、今DJしていないと思う。彼と偶然にソーホーのレコード屋で会ったおかげで、1993/94年のCafe Del Marでのレジデンシーを手に入れた。“サンセット時にアンビエント・ミュージックをプレイする際に、かけている音楽を平坦でつまらなく披露するのを避け、必ず刺激的にプレイし続けるのが大事だ。また、誰も予想つかない曲をかけなさい”と、彼から昔アドヴァイスされたのを今でも覚えていて、そうしようと心掛けている」。

フィル・マイソンが親しくしている、Cantomaの前2作を出した、デンマークのバレアリック系のレーベル、Music For Dreams 主宰のKenneth Bager(ケネス・ベイガー、本来の発音はケネス・ベイユー)と、Claremont 56/Leng Records 主宰のMuddことPaul Murphy(ポール・マーフィー)に、彼のDJとプロデューサーとしての印象を訊いてみた。

ケネス・ベイガーはこう語っている──「彼のDJはとても素晴らしくて、プレイする度にいつも時間軸を超越した気分にしてくれる。どのジャンルでも彼自身の古今の音楽知識は凄まじい。彼は非常に滑らかで、流麗な音楽を創造し、ほぼ毎度間違いなくピッタリのボタンを押すのだ。彼は、チルアウト・シーンの真のマスターだ」。

前作『Out Of Town』を出したClaremont 56/Leng Records主宰のポール・マーフィーいわく、「フィルは、偉大な音楽の歴史を保持している。Cafe Del Marで過ごした頃に染みついた経験が、彼の音楽制作に滲み出ている。彼が放つ見事にアレンジされている生演奏とヴォーカルがフィーチャーされている作品の大半は、イビサのバレアリックの世界に心地よく同期している。言うまでもなくフィルは、私にとって最も好きな安定しているDJの一人だ。私自身が開催しているClaremont 56のパーティーのレギュラーDJを務めていて、彼が毎回DJするのを聴くのは大好きだ」。

1994年の夏のCafe Del Marでのレジデンシーを終えた後にフィル・マイソンは、初めて音楽制作に携わる。ケネス・ベイガーの誘いで、ホセ・パディーヤ、Mental Generation/Blissのステファンと一緒にアルバムをレコーディングしにコペンハーゲンに行くが、結果的にお蔵入りとなる。そのセッションの何曲かが1998年に出たホセ・パディーヤのデビュー・アルバム『Souvenir』に浮上する。1992年のロスキルド・フェスティヴァルで知り合って以来、お互いのバレアリック・ミュージックへの関心と知識を分かち合い、ケネス・ベイガーとの親交が深まり、やがて1999年に彼が立ち上げたレーベル、Music For Dreamsから、今度はソロ・アルバム制作のオファーを受け、フィル・マイソンは音楽制作に本格的に打ち込み始める。まず2001年にMusic For Dreamsから人気曲「Pandajero」を始めとするシングルを出した後、2003年に“チルアウトの金字塔”と絶賛され、推定1.5万枚も売れ大ヒットしたデビュー・アルバム『Cantoma』を同レーベルから出す。翌年にアメリカでQuango、そして日本でもHorizonからリリースされ、フィル・マイソンはそのタイミングで2回の来日も果たしている。

Music For Dreamsいわく、デビュー作は今となっては、レーベルのカタログを代表するアルバムであり、未だに人気を博し、2015年には初めて多数未発表のボーナス・トラック入りの豪華な3枚組のアナログ盤として出され、その人気ぶりを再確認されたばかりだ。また、この1作目収録の「Pandajero」は、2006年に公開されたマシュー・マコノヒー、セラ・ジェシカ・パーカー、ブラッドリー・クーパー出演のハリウッド映画『恋するレシピ~理想のオトコの作り方~』でも流れ、Cantomaの楽曲の数々は、これまで無数のラウンジ/チルアウト・コンピレイションに収録されている。

Cantomaの2作目を制作したフィル・マイソンは、Claremont 56主宰のポール・マーフィーに近づいた。ポールはそのときのことをこう語っている──「フィルはこの素敵なアルバムを我々が出さないかと提案した。我々のレーベルから出せて本当に嬉しかった。リリースすることができ、光栄だ」。そうして2010年に傘下レーベル、Leng Recordsから『Out Of Town』が発表される。この作品のライナーを書いたダニー・ランプリングは、『Out Of Town』についてこう力説していた──「今このアルバムを聴くと、イビサのスピリット、心の平穏な気持ち、愛情、調和、友情、思い出、過去と現在と未来を呼び起こし続けていると想像する。そんな理由で、多くの方々は彼の音楽に魅了されながら、人生を満喫し、毎日精一杯生き、輝き続け、音楽という恵みを楽しみ続けられる」。

『Out Of Town』収録楽曲からは2枚のシングルが出た。1枚目にはRay Mangによる「Under The Stars」とLexxによる「Gambarra」のリミックス。2枚目にはMax Essaによる「North Shore」とDJ Cosmoによる「Dix Vertes」のリミックス。そして、現代バレアリック/ニュー・ディスコを代表するプロデューサー達、Idjut Boys、Mudd、DJ Cosmo、Max Essa、Tiago、Lexx、Pete Herbertのリミックスが勢揃いした編集盤『Out Of Town - The Remixes 』もリリースされる。

2013年にフィル・マイソンは、自身のレーベル、Highwood Recordingsを立ち上げ、最新アルバム『Just Landed』からの第1弾シングル「Alive」を出す。今まで他のレーベルから作品を出していたが、なぜ自身のレーベルを立ち上げたのかと、本人に訊いてみた。「自分自身がレーベル運営できるのかを試したかったためだ。作業的には重労働であり、やりながら少し間違いを犯すだろうと思うが、多くを修得することができ、自分の音楽を自ら出すのはとても面白い」。

2015年に旧作2枚が共に初アナログ化され、Cantomaの不動な人気の健在ぶりを証されたタイミングで、6年ぶりの待望の新作『Just Landed 』と、Cantomaの珠玉の名作が選りすぐられたコンピレイション『Cantoma For Good Mellows 』が、編集者/選曲家/DJ/プロデューサー、橋本徹(SUBURBIA)が監修・選曲するレーベル、Suburbia Recordsから共に発表される。また、この2枚のリリースに合わせて、2003年の2回の来日以来、13年ぶりの日本でのDJツアーも今春に予定されている。

近年、フィル・マイソンは音楽制作とDJをするために世界中を駆け巡りながら、多忙なスケジュールを精力的にこなし続けている。最近ロンドンのショーディッチで開催された野外パーティー、“Balearicos”を2年間続けて監修し、Pete Herbert、Ray Mang、Justin Robertson、Music From MemoryのJamie Tiller、Velvet SeasonsのGerry Rooney、MuddことPaul Murphy、Moonboots、Faze Action、Max Essa、そしてさらにバレアリック・レジェンド達、Nancy NoiseとLeo Mas等このシーンを代表する錚々たるメンバーを集め、このイヴェントを盛り上げている。また、ニューヨークのザ・スタンダードやサンセット・ビーチ、クロアチアのラヴ・インターナショナル・フェスティヴァルでのClaremont 56の船上パーティー、デンマークでのアップル・フラワー・フェスティヴァル、モスクワのDenis Simachev、イタリアでのSunset SessionsとBestival、そしてJustin Strauss、Ruf DugとBassoを招き、ロンドンの名高いハイ・エンド・オーディオ・サウンド・システムを駆使したBrilliant Cornersでレギュラー・パーティーを開催し、イビサで開催されたDJ Harvey主宰のMercury Rising Party、アムステルダムのRed Light RecordsクルーのパーティーであるInspirations、ベオグラードのDisco Not Disco、Moovin FestivalでのAficionadoのステージ等々、世界のトップ・レヴェルのパーティーで彼は定期的にプレイしており、今回の久々の来日ではどんなプレイを繰り広げるのかが楽しみだ。Mixcloud(https://www.mixcloud.com/discover/phil-mison/)には、1990年代の最高なCafe Del Mar時代も含む、フィル・マイソンの多数の新旧ミックスがアップされており、ぜひお薦めしたいので、試聴してみていただければと思う。

フィル・マイソンは現在、Music For Dreamsからの新たなプロジェクト、Ambalaの制作を進めている。Cantomaと比べ、Ambalaはややアップテンポな楽曲を中心に打ち出したいそうだ。近日中にリリースされるデビュー・シングルには、伝説的なグループ、レイドバックと、同レーベルから素晴らしい作品を出している、デンマークを代表するギタリスト、ヤコブ・グレヴィッシュとのコラボレイション作が収められる。このヤコブ・グレヴィッシュがフィーチャーされているAmbalaの楽曲「Sol Serra」は、北欧の自動車メイカー、ボルボ・ジャパン社の無料配布用のコンピレイションCD『Volvo Seek Feeling 3 Music for XC90』に選ばれ、収録されることも決定した。また、Pete Herbertとのユニット、Reverso 68の新曲も制作中で、今夏のダンスフロアを盛り上げることをめざしているそうだ。


『Just Landed 』楽曲解説
フィル・マイソンは、2011~12年ぐらいから本作の収録楽曲のデモ制作を始め、大半の制作をロンドンのハックニーのスタジオ、12 Tree Studiosで2013~14年に行ったそうだ。彼はベースとキーボードをほぼ全曲で弾き、ギターを楽曲の半分で弾いている。本作を制作する際に彼は、収録楽曲のスタイルを全て異なるものにしつつ、一枚のアルバムとして通して聴くことができ、統一されながらある特定なフィーリングを産み出す作品に仕上げるのをめざしていたそうだ。

1. Tabarin
バレアリック様式美が完璧に近いほど表される、哀愁が大いに溢れるスパニッシュ・ギターのイントロから始まる、時間の流れが緩い、南国の空間に浮遊する感覚を連想させる「Tabarin」。間違いなく「Pandajero」に継ぐモダン・バレアリック・クラシックスになると確信できるほどの力作。本作が出る直前に先行リリースされたアルバムからの第2弾シングルには、フィル・マイソンが大ファンである、NYクラブ・シーンで80年代から活躍している重鎮、Justin StraussがパートナーBryan MetteとWhatever/Whatever名義で手掛けたこの曲のリミックスが収められ、極上なバレアリック・アシッド・ハウスに仕上がっている(この日本盤のみのボーナス・トラックとしても収録)。

2. Alive feat. Bing Ji Ling
フィル自身のレーベル、Highwood Recordingsの記念すべき、そして本作からの第1弾シングル。フェノミナル・ハンドクラップ・バンドの元メンバー、トミー・ゲレロ・バンドの中核メンバー、バレアリック・スーパー・グループ、Paqua(Claremont 56)のメンバー、そしてソロ・アーティストとして、Rush! Productionsからの2枚を含む6枚のアルバムを出し、人気レーベルであるDFA、Aficionado等からも数多くの作品を出しており、最近Tokyo Black Starの次作となるリル・ルイスのクラブ・ヒット「Club Lonely」のカヴァーでも歌っている、マルチ・ミュージシャンであるBing Ji Lingが、「Alive」のヴォーカルを取っている。フィル・マイソンにBing Ji Lingとなぜ共作したかったのかを訊いてみると、彼はこう応えた。「2008年頃にニューヨークに滞在したとき、ザ・ロフトのパーティーのフロアでクイン(Bing Ji Ling)と知り合った。その後彼からソロ・アルバムをもらったりして、交流を始めた。彼は実に素晴らしい歌声を持っていて、存在感もあると思い、いつか共作するのは良い案だと思った。Paquaのメンバーとしての彼の仕事ぶりも凄く好きで、彼と一緒にスタジオに入り、共作するのはとても楽しかった」。Idjut Boysのコンラッドも「Alive」をリミックスしており、今後U-Starから出る予定。

3. Just Landed
Cantomaならではのこの清々しさが溢れるダウンテンポ・トラックは、Reverso 68、Fronteroを一緒に組んでいるPete Herbertによりリミックスされ、「Alive」と合わせて、アルバムからの第1弾シングルとして2013年にリリースされた。フィル・マイソンいわく、「本作のために最初に録音した楽曲だ。この曲を作り始める前に、昔録り貯めしたフルートのアウトテイクがあり、その音素材を交えた、昔のCafe Del Marを彷彿させるメロウなパーカッションがメインのトラックを作ろうと思い、作った楽曲だ。サンセットの瞬間にかける曲ではなく、その1時間前に人々が到着し始め、ドリンクをオーダーし、寛ぎ始めているときにプレイする音楽だと思う」。

4. Echo
「Echo」と「Talva Lumi」は、前作『Out Of Town』から参加しているフィンランドの歌姫、Suad Khalifaがフィーチャーされている。フィル・マイソンは、彼女のヴォーカルを、フィンランドのグループであるUusi FantasiaのCDを聴いて気に入り、MySpace経由で連絡を取った後にヘルシンキに行き、レコーディングを行ったそうだ。そのとき『Out Of Town』収録の「Suomi」「North Shore」「Viusu」に彼女の歌を吹き込んだ。フィル・マイソンはSuad Khalifaのことをこう話す。「Suadと一緒にレコーディングするのはいつも楽しい。彼女は素晴らしい歌唱力の持ち主なので、僕の曲で歌ってもらうのは素敵な組み合わせだ」。彼女は、現在フィンランドのエレクトロニック界の有望アーティスト、Jaakko Savolainenとツアーしているそうだ。「Echo」には日本語を歌う女性シンガーもフィーチャーされ、そのことに関してもフィル・マイソンに訊いてみた。「ロンドン在住の私の友人であるアワイ・クニさんという方だ。1曲の中に2か国語のミックスがあったら面白いと思い、二人にこの曲の中で歌ってもらった」。

5. Abando feat. Javier Bergia
「Abando」は、フィル・マイソンが昔Cafe Del MarでDJしたときによくプレイしていた楽曲「El Secreto De Las 12(深夜0時の秘密)」を出した、“スペイン産ニュー・ウェイヴ~アンビエント~プログレッシヴ・ミュージックの奇跡”と評されているフィニス・アフリカエのメンバーで、30年以上も活躍しているカルト的な人気を放つスペインのSSW、ギタリストでプロデューサーであるハヴィエ・ベルジアのヴォーカルがフィーチャリングされている。彼は、1980年代にはルイス・デルガドと共にAtrium Musicae(アトリイウム・ミュージカエ)の一員であり、その後にフィニス・アフリカエ(Finis Africae)に加入。Lexxからハヴィエ・ベルジアの名盤『Tagomago』を渡される前にフィル・マイソンは彼のソロ作は知らなく、Moonbootsが「Midnight Round Mekiness」をプレイしたとき、圧倒されたそうだ。

ハヴィエ・ベルジアの再評価が最近著しくなり、2013年にEM Recordsからフィニス・アフリカエ『El Secreto De Las 12(深夜0時の秘密)』と『A Last Discovery: The Essential Recordings, 1984-2001』がリリースされ、さらにこのグループの最高傑作と言われている1991年に発表された名盤『Amazonia』も2015年の12月に再発されたばかりだ。

またUKの注目再発レーベル、Emotional Rescueからハヴィエ自身のソロ・ワークスが集められたベスト盤『Eclipse』が2014年にリリースされた。このレーベルを主宰するスチュアートにフィル・マイソンはハヴィエ・ベルジアを紹介してもらい、通訳をしてくれたスペイン人の友人の付き添いがいて、この二人は「Abando」のレコーディングを行ったそうだ。

6. Talva Lumi
本作にいろいろなスタイルの楽曲を収録したく、かつ流れを作りたいというフィル・マイソンの意向が伝わってくる、アルバムの流れを一旦加速させるファンキー・ロック調のトラック。「Echo」で流麗なヴォーカルを披露したSuad Khalifaのサウダージなヴォーカルが、リズミックなスパニッシュ・ギターと絶妙に絡み合い、地中海の地平線を眺めながら踊りたくなるような楽曲。フィル・マイソンいわく、「真冬のヘルシンキでこの楽曲を作り始め、その後にSuadにロンドンのスタジオに来てもらい、最後のヴォーカル録りを行った。必ずしも4/4ではないが、ファンキーなバレアリック風の、アップテンポな曲を私は作りたく、この楽曲ができあがった。トランペットを吹いたAlex Bonneyは、前2作にも客演している」。

7. Clear Coast feat. Brenda Ray
「Clear Coast」は、1970年代からUKのポスト・パンク/ニュー・ウェイヴ全盛期にかけて活動を開始し、スリッツ、ポップ・グループ等と同様にレゲエ、ダブ、ジャズ、ロックを融合したプログレッシヴ・ミュージックを出し続けた、フィル・マイソンのお気に入りバンド、It’s Immaterialにも客演したことのある、イギリス北西部に拠点を置く女性歌手でマルチ・ミュージシャン、ブレンダ・レイのヴォーカルとメロディカ演奏がフィーチャリングされている楽曲。EM Recordsから2007年に『Walatta』、2012年に『D'Ya Hear Me!: Naffi Years, 1979-83』といった彼女自身のアルバムと編集盤が出されている。2014年にMoonbootsのレーベル、Aficionado Recordingsから『Ramshackle Rumble』、去年来日を果たしたアンドラス・フォックスのAndrew Wilson名義との共作「Wilson Shimmer And Sway (Dawn Dance)」を自主レーベルで出し、次世代のプロデューサーからリスペクトが厚く、共演を果たしている。フィル・マイソンは、Moonbootsが彼女の激レアと言われている「Theme From A Tall Dark Stranger」をプレイするのを聴いて、虜になったそうだ。ブレンダ・レイについて彼はこう語った。「彼女は自分の音楽を録るときに特別なやり方で行い、共作するために彼女と一緒に時間を過ごせたのは何よりも光栄だった」。

8. Vialas Journey
哀愁溢れるアコーディオンとフィル・マイソンが自ら弾いたスパニッシュ・ギターがフィーチャーされている楽曲。フィル・マイソンが何にインスパイアされて、この楽曲を作ったかをこう語ってくれた。「ある日、南フランスのドキュメンタリーを観ていたとき、澄みきった青空の快晴な日に、並木道沿いにドライヴしている人々のワン・シーンが映し出され、その光景に相応しい架空の楽曲を作りたく、完成させた楽曲だ。前作にもアコーディオンをフィーチャーしている楽曲があり、どちらもその楽器を演奏してくれたのはTara Cremeだ」。

9. Sea Of Blue
この楽曲についてはフィル・マイソンはこう語っている。「この楽曲で自身のヴィンテージなスタインウェイのピアノを弾いてくれたのは、Lucinda Gallantというピアニストであり、私は幸運にも彼女を紹介された。数年前に、私はギリシャの島、Zakinthosの入り江で泳いだ。泳ぎ終わった後、頂上にあるカフェで昼食を摂るために坂を登った。このカフェで海の素晴らしい景色を見ることができ、サングラスをかけなければならないほど太陽の光線が眩しかった。そんな瞬間に聴きたい音楽がこの曲だ」。

10. Claudio’s Theme
この楽曲は、師匠であるダニー・ランプリングとの初の共作。フィル・マイソンは1988年に初めて彼のDJと出会った。「プレイしている音楽をどのように紹介するのか、そして彼がDJしているときに発するエネルギーに多大な影響を受けたよ。彼のラジオ番組を聴き、すべての楽曲を探すのに夢中になっていた。彼は一方では有名どころのトラックを番組でプレイするかたわら、フラメンコのギタリスト、Ottmar Liebertや本物のCafe Del Marの名曲もプレイし、驚かされた」。ダニー・ランプリングは昔からフィル・マイソンの作品をサポートしてくれ、彼いわく、「『Out Of Town』の解説も書いてくれ、今まで一緒にトラックを作ったことはなかったが、自然な成り行きでトラックを共作することになった」。恐らく曲名の男性、Claudioはダニー・ランプリングの息子の名前。Claudioが産まれた瞬間にCantomaのファースト・アルバムがかかっていたそうだ。フィル・マイソンにダニー・ランプリングとどんなアプローチでこの曲を作曲したのかを訊いてみた。「真にサンセットに相応しい楽曲を作ろうと試みた。ダニーが、かなりスペースアウトではあるが、同時にシンプルな曲にしたいと提案した。世界のどこかで、絶妙なタイミングでこの楽曲をプレイするときを楽しみにしている」。


Phil Mison Discography
Albums:
Cantoma: Cantoma ( Music For Dreams ) ( 2003 )
Cantoma: Out Of Town ( Leng Records ) ( 2010 )
Cantoma: Just Landed ( Highwood Recordings ) ( 2016 )
Frontera: Frontera ( Music For Dreams ) ( 2006 )

Compilations
Pure Ibiza 2 ( I Label ) ( 2009 )
Originals Volume Six ( Claremont 56 ) ( 2011 )

Mix CDs
Chillout - The Album ( X:Press Records ) ( 1995 )
Chill Out Too - Sunset House ( Avex UK ) ( 1996 )
Chill Out Free ( Avex UK ) ( 1997 )
Soundcolors ( X:treme Records ) ( 1998 )
Soundcolors 2 ( X:treme Records ) ( 1999 )
Soundcolors 3 ( X:treme Records ) ( 2000 )
Real Ibiza 4 - Balearic Bliss ( React ) ( 2001 )
Real Ibiza V - The Sun Lounge ( React ) ( 2002 )
Real Ibiza VI ( React ) ( 2003 )
Out Of Town - The Remixes ( Leng Records ) ( 2011 )

Remixes
Bent, Clannad, Lazyboy, Richard Dorfmeister vs. MDLA, Ajello, Tosca, Shawn Lee's Ping Pong Orchestra, Faze Action, Cirque Du Soleil, Afterlife, Alexey Arkhipovskiy, 40 Thieves, Jose Padilla, etc.


Cantoma『Just Landed』(CD)
01. Tabarin
02. Alive (feat. Bing Ji Ling)
03. Just Landed
04. Echo
05. Abando (feat. Javier Bergia)
06. Talva Lumi
07. Clear Coast
08. Vialas Journey
09. Sea Of Blue
10. Claudio's Theme
11. Walk With The Dreamers (Ambala feat. Laid Back)
12. Tabarin (Whatever/Whatever Remix)
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