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V.A.『Bethlehem for Cafe Apres-midi』
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15周年を迎えたカフェ・アプレミディのアニヴァーサリー・コンピとして、優雅な品格あふれる名門ジャズ・レーベル、ベツレヘムのとびきりの至宝が選び抜かれた、心躍り心和やかにしてくれるジャズ・ヴォーカル名作選『Bethlehem for Cafe Apres-midi』が12/12に先行入荷します。洒脱でスマートなソフィスティケイションの心地よさ、センスあふれる美しいアートワーク、クリス・コナー/ニーナ・シモン/メル・トーメ/ボブ・ドロー/ボビー・トゥループといった誉れ高い名シンガーはもちろん、知る人ぞ知るクール&ビューティフルな秘宝まで、全28曲・83分19秒にわたって優美な珠玉が連なる、ミッド・センチュリー・モダン・アメリカの粋と洗練が詰まった決定版コンピレイションです。それは言ってみれば、フレッド・アステアとオードリー・ヘプバーンが「パリの恋人」だった時代のジャズ。アプレミディ・セレソンでお買い上げの方にはもれなく(通販含む)、橋本徹・選曲のスペシャルCD-R『Best Selection 2014 ~ Side-C』『Best Selection 2014 ~ Side-D』とオフィシャル特典CD『More Bethlehem』をプレゼント致しますので、お見逃しなく!
『Bethlehem for Cafe Apres-midi』ライナー(橋本徹)
1953年秋、ガス・ウィルディによってニューヨークで設立されたベツレヘムは、60年代にかけて200枚以上のアルバムをリリースした独立系の名門ジャズ・レーベル。クリス・コナーやニーナ・シモンがデビュー・アルバムを吹き込んだことでも広く知られるが、その佇まいはジャズへの愛情が香る手作り感を漂わせながら、優雅な品と風格を備えている。
ベツレヘムで何かコンピを、と提案されて、まずはジャズ・ヴォーカルに特化して一枚セレクトすることにしたが(実は2004年にも同様の企画オファーが東芝EMIからあったが、担当ディレクターの異動でそのときは実現しなかった)、選曲の過程でよみがえってきたのは、僕がジャズを聴き始めて間もなかった大学時代の記憶だ。時は80年代後半、クラブ・ジャズ前夜、僕は廃盤専門店をまわって、壁に飾られたベツレヘムのオリジナル盤、その高嶺の花ぶりに溜め息をついていた(時にはアルバイト代を貯めて大枚をはたいたりもしたが)。
思えば何よりも、バート・ゴールドブラットのアートワークのセンスに惹かれていたのだろう。ヴィンテージ盤ショップの壁でも、彼が手がけたレコードは特別な光を放って見えた。ジャケットに魅せられてジャズを聴くようになった当時の僕には、ブルーノートのリード・マイルス、ヴァーヴのデヴィッド・ストーン・マーティンと共に、彼は三大ヒーローのひとりだった。そこにはミッド・センチュリー・アメリカの粋と洗練の美学が表現されていた。アートワークが素晴らしいから、裏ジャケットに著されたジョセフ・マレイニのライナーも、スタイル・カウンシルにおけるカプチーノ・キッドのように思えた。
特にベツレヘムと言えば、あの“緑ジャケ”の魅力。ヴォーカルなら愛すべきポーラ・キャッスル、ズート・シムズ/ハービー・マン/コンテ・カンドリ/ハル・マキュージック/ステュ・ウィリアムソン、マル・ウォルドロン『Left Alone』も言わずもがなだろう。だから僕にとって『ベツレヘム・フォー・カフェ・アプレミディ』も緑ジャケでなければならなかった。長年愛聴していた、ロバート・ジョンソンの『King Of The Delta Blues Singers』のイラストレイションが、かつては写真が実在しなかったロバート・ジョンソンの姿を想像して、バート・ゴールドブラットが描いたものと知ったときも嬉しかった。
ジャケットが美しくて少しずつコレクションするようになったベツレヘムだが、中身も素晴らしかった。まさにミッド・センチュリー・モダン・ジャズの粋。言ってみれば、フレッド・アステアとオードリー・ヘプバーンが「パリの恋人」だった時代のジャズ。クラブ・ジャズの洗礼を受ける前の、端正な僕の趣味にも適っていた。そして今聴いても全く古く感じない、むしろモダンに聴こえる。
敢えて思い出の一枚を挙げるなら、やはりメル・トーメの『フレッド・アステアを歌う』。アステア映画が次々にリヴァイヴァル上映された大学生の頃、彼のような洗練に憧れを募らせる中で出会い、背伸びして当時のガールフレンドにプレゼントした甘酸っぱい光景がフラッシュバックする。メル・トーメが感銘を受けたという、ジェリー・マリガン・コンボの流れを汲むマーティー・ペイチによるクール・スタイル、スタンダード・ソングの韻の踏み方の魅惑を、僕はこのアルバムで知った。
男性ヴォーカルではさらに、ボブ・ドロー/ボビー・トゥループ/ジョー・デリーズ、いずれも“洒脱”という言葉が似合う顔ぶれ。気っ風のよいスウィンギーかつユーモラスなバップ・スキャットの虜になったボブ・ドローは、マイルス・デイヴィスとのコラボレイションでも名高いが、「最もパンクなジャズ・ヴォーカリスト」という小西康陽の形容にしびれたのを機に、すべての作品を集めていった。ジュリー・ロンドンの夫だったボビー・トゥループの、スマートなソフィスティケイションの心地よさにも魅了された。ジョー・デリーズの小粋なピアノ弾き語りにも、優しさと洗練が息づいている。
ジョン・コルトレーンとの共演で知られるクルーナー、ジョニー・ハートマンは僕の好きな曲「All Of Me」を。躍動する名唱という感じのこちらに対し、静寂の名唱と言うべきジョアン・ジルベルト/カエターノ・ヴェローゾ/ジルベルト・ジルのヴァージョンもお忘れなく。ディジー・ガレスピーの「チュニジアの夜」の改作も耳を惹く、やはり黒人シンガーのフランク・ミニオンのノンシャランでヒップな存在感も特筆したい。マーティー・ナポレオンの軽妙洒脱なスウィング「Ain’t She Sweet」は、コレクター垂涎の幻のEPより。
そして僕のコレクション意欲をとりわけ刺激することになった(といっても基本的には日本盤中古をメイン・ターゲットとして、どうしてもという場合のみ高値のオリジナル盤に手を出すが、中にはブートレグのようなリイシューで我慢したものも多い)、女性ヴォーカル陣に目を移すと、ヘレン・カー/ポーラ・キャッスル/テリー・モレル/オードリー・モリス/ペギー・コネリー、それにパット・モラン・カルテットにフィーチャーされたベヴ・ケリー。特にヘレン・カーの2枚とポーラ・キャッスルはジャケットも最高で歌声もコケティッシュ、オリジナル・レコードを買わずにはいられなかった。アン・バートンにも影響を与えたオードリー・モリスと、“恋する女のジャズ”テリー・モレルも、繰り返しターンテーブルにのせた。彼女たちがレーベルをコレクションする愉しみを、個人的にはブルーノート以上に、僕に感じさせてくれたのだ。言ってみれば、ジャケも素晴らしいシーラ・ジョーダン『Portrait Of Sheila』のような女性ヴォーカル盤が、ベツレヘムにはずらりと揃っているのだから。
もちろんクリス・コナーも忘れてはいけない。『バードランドの子守唄』はジャズ名盤ガイドといった類に掲載されているような作品の中で特に気に入ったものだった。最近はマンガ「坂道のアポロン」を機に、再び脚光を浴びていると聞いたが、喜ばしいことだと思う。僕は彼女の溌剌とした歌の表情が好きなのだ。
ニーナ・シモンも言うまでもない。彼女への思い入れについては『Free Soul. the classic of Nina Simone』のライナーに詳しく書いた。二大人気曲「My Baby Just Cares For Me」「Little Girl Blue」を含むこのファーストからは、本当はスピリチュアルな「Plain Gold Ring」も選びたかったが、ラストに清冽なセンティメントが零れるような大好きなピアノ・インストゥルメンタル「You’ll Never Walk Alone」をエンドロールのように置けたのが嬉しい。今年コンパイルした『Free Soul Peace Island』には、同時期のEPからモッド・ジャズという趣きの「African Mailman」も収めた。ジェイムス・ブラウンのバック・ドラマーだったディー・フェリスのトリオが、1969年にJBプロデュースでベツレヘムから発表した(この頃までベツレヘムの商標は残っていて、60年代にはJBやオーティス・レディングのシングルもリリースしていた)「There Was A Time」の7インチ・ヴァージョンと共に。
さらに、ニーナ・シモン「Little Girl Blue」を愛する方にぜひ、という思いもこめてエントリーしたのが、ご存じカーメン・マクレエの「Last Time For Love」。そして何よりも感激してしまうのは、長きにわたって手に入れようもなかった7インチ、ドナ・ブルックスのその名も『Soft And Slow』というロマンティックなEPから、しっとりメロウ&チャーミングな「Gone With The Wind」を収録できたこと。美麗スリーヴ揃いのベツレヘム10インチ群にも増して、この7インチはとびきりの至宝と言えるマニア垂涎の一枚なのだ。そしてベヴ・ケリーの歌うパット・モラン・カルテットに加え、LAのジャズ・シティーに集うマーティー・ペイチらのジャズメンとキュートに颯爽とスウィングするミッキー・リンに、テッド・スティールのオーケストラをバックにしたティール・ジョイ、ラス・ガルシア・オーケストラのヴォーカル・クワイアといった、ミッド・センチュリーのアメリカらしい“テクニカラー・ジャズ”にも胸ときめく。
全28曲、本当に充実した作品集になったと思う『ベツレヘム・フォー・カフェ・アプレミディ』だが、いかがだっただろうか。心躍り、心和やかにしてくれるジャズ・ヴォーカル名作選。デューク・エリントン・オーケストラでレイ・ナンスが歌う「言いだしかねて」、ファンなら持っていたいベツレヘム・オリジナル・コンピLP『Bethlehem’s Girl Friends』のジュリー・ロンドン初期作「You're Blasé」などが、惜しくも選にもれてしまったのは無念だが、トータル・プレイング・タイム83分19秒、これ以上の収録は許されず、またの機会を待ちたいと思う。ちなみに他の次点曲を挙げるなら、メル・トーメ「Cheek To Cheek」、ヘレン・カー「Down In The Depths Of The 90th Floor」、ベティー・ローシェ「All Too Soon」、マリリン・ムーア「Leavin' Town」といったところ。ベティー・ブレイク「Let There Be Love」もそうだが、選曲候補としたスタンダードに、アニー・ロスの『Sings A Song With Mulligan!』の大きな影響が見てとれる(ジャッキー&ロイも、かな)。大学生の頃、それこそ毎日のように聴いていた『アニー・ロスは歌う』が、僕のジャズ・ヴォーカル趣味のルーツ、クール・ジャズ愛好の原点になっていることを、改めて思い知った。そういう意味で、ワールド・パシフィック盤でありながら、あのアニーとマリガンの共演作は、『ベツレヘム・フォー・カフェ・アプレミディ』の生みの親と言えるのかもしれない。
クール・ジャズに夢中になった当初、強く惹かれたジョージ・シアリングの名曲「Lullaby Of Birdland」を、コンピレイションの最初と最後に配しているのも、その頃の名残りだろう。歳を重ねた今の僕は、その後ABCパラマウント~インパルス~ヴァーヴ~A&M~CTIと輝かしいキャリアを歩んでいくクリード・テイラーが、若き日にベツレヘムでプロデューサーとして学んだことも多かったんだろうな、なんてことも考えながら、セレクションを進めていった。その粋と洗練と心地よさを、このコンピで快く味わってもらえたなら、選曲者としてはこの上なく嬉しい。
01. LULLABY OF BIRDLAND / CHRIS CONNOR
02. THAT OLD BLACK MAGIC / BOBBY TROUP
03. BYE BYE BABY / HELEN CARR
04. I'M SHOOTING HIGH / PAULA CASTLE
05. MY BABY JUST CARES FOR ME / NINA SIMONE
06. MOUNTAIN GREENERY / TERRY MOREL
07. THEY WAY YOU LOOK TONIGHT / MEL TORME
08. OLD DEVIL MOON / BOB DOROUGH
09. JEEPERS CREEPERS / BOBBY TROUP
10. HOW ABOUT YOU / TERRY MOREL
11. THIS CAN'T BE LOVE / THE PAT MORAN QUARTET
12. LET'S FALL IN LOVE / TEAL JOY
13. I GET A KICK OUT OF YOU / RUSS GARCIA & HIS VOCAL CHOIR
14. THAT OLD BLACK MAGIC / MARTY PAICH
15. KNOWBODY KNOWS / FRANK MINION
16. MOUNTAIN GREENERY / PAULA CASTLE
17. BLUE TURNING GRAY OVER YOU / AUDREY MORRIS
18. LAST TIME FOR LOVE / CARMEN McRAE
19. MY ROMANCE / JOE DERISE
20. AIN'T SHE SWEET / MARTY NAPOLEON
21. NIGHT IN TUNISIA / FRANK MINION
22. ALL OF ME / JOHNNY HARTMAN
23. LITTLE GIRL BLUE / NINA SIMONE
24. FOOLS RUSH IN / PEGGY CONNELLY
25. GONE WITH THE WIND / DONNA BROOKS
26. JOHNNY ONE NOTE / BOB DOROUGH
27. LULLABY OF BIRDLAND / MEL TORME
28. YOU'LL NEVER WALK ALONE / NINA SIMONE