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V.A.『Ultimate Free Soul Motown』

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Toru Hashimoto Compilation > Free Soul

Free Soul 20周年とモータウン55周年を記念して、今春リリースされ大ヒットを記録中の『Ultimate Free Soul Collection』の兄弟編となる、グルーヴィー&メロウなスーパー・キラー・チューンを満載した3枚組・75曲におよぶ(しかも¥2,750+税というナイス・プライス)決定版コンピレイション『Ultimate Free Soul Motown』が10/22にリリースされます。ポップ・ミュージック史上に燦然と輝くモータウン・サウンド、その黄金期1960〜70年代の至上の名曲・名演が4時間以上にわたって連なる、まさしく永久保存版。看板アーティストたちの珠玉はもちろん、マニア垂涎の稀少なシングル・オンリーの秘宝や、カヴァー/サンプリングでも名高い至宝まで網羅した、Free Soulならではの信頼のセレクションです。まさにモータウンの愛と夢が詰まった究極のベスト・オブ・ベスト。アプレミディ・セレソンでお買い上げの方にはもれなく(通販含む)、橋本徹・選曲のスペシャルCD-R『Ultimate Free Soul Motown - Outtakes』と『Free Soul ~ Lovesexy Edition』をプレゼント致しますので、お見逃しなく!


『Ultimate Free Soul Motown』ライナー(橋本徹) 


『Ultimate Free Soul Motown』のリリースに寄せて

Free Soul 20周年とモータウン55周年を記念して企画された究極の3枚組コレクション『Ultimate Free Soul Motown』。僕にとっては、ソウル・ミュージック/ブラック・ミュージックという枠をこえて、ポップ・ミュージックとして理屈抜きに、本能的にモータウン・サウンドに魅せられ、その虜となったあの頃から早30年か、という感慨も覚える“一生もの”セレクションだ。
30年以上にわたり聴き続け、血となり肉となっている名曲・名演、イントロが流れれば、自然にリズムを取り、つい一緒に歌ってしまうようなフェイヴァリット・ソングばかり。同時に、1960 ~70年代のモータウンは、アメリカの青春であり、ポップ・ミュージックの青春でもあったのだと思う。そこには“ヒッツヴィルUSA”こと「永遠のモータウン」の愛と夢が詰まっている。そのポジティヴな輝きに充たされるとき、僕が思い浮かべるのはやはり、エヴァーグリーンという言葉だ。
実は僕は2004年に、4枚のモータウン・コンピレイションを選曲させてもらっている。10年前には収めることができた60年代半ばくらいまでのヒット曲の中に、今回は惜しくも選にもれたものもあるが、逆に新たにぜひ選びたいという強い気持ちに駆られた作品も多い。ひとことで言うなら、Free SoulのDJパーティーや2014年の音楽シーンにおける親和性・実存性(オールディーズになりきらないリアリティー、と言えばいいだろうか)を重視してセレクトしたつもりだ。全75曲、waltzanovaによるそれぞれの解説と共に楽しんでもらえたら嬉しい。また、10年前に僕が書いた、60年代と70年代のモータウンについてのライナーを再掲させていただこうと思う。歳を重ねてしまった今の自分には、これ以上に熱い文章は書くことができない。そこにある若さ、青くさいほどの息吹き、脈打つ鼓動こそが、“The Sound Of Young America”には相応しいだろう。いち音楽ファンとしての僕の青春記、いや半生記としても、読んでいただけたならば幸いだ。


Free Soul. the classic of 60s Motown

「僕たちは理由を愛する。誠実さと希望と慈悲を抱き続けられるように」(ポール・ウェラー)

僕がまだ高校生の頃、惜しまれつつジャムを解散、スタイル・カウンシルを結成し、“Keeps On Burning”を旗印にレスポンドというインディペンデント・レーベルをスタートさせたばかりのポール・ウェラーが、「モータウンのようなレーベルをめざしたい」と熱くインタヴューで語っていたのが忘れられない。それは「ポップ・ミュージックとしての黒人音楽を追求していく」ということ以上に、リスナーやアーティストに夢を与えてくれるレーベル、という意味だったと思う。ウェラーにとってモータウンとは桃源郷だったのだろう。そのときから僕にとってモータウンは特別な輝きを放つようになった。

躍動感あふれるビートと沸き上がるエモーション。華やかなホーンに彩られ、夢と情熱と希望に満ちた、ポジティヴな音楽の生命力。そのメロディーはときに胸を締めつけ、涙腺を潤ませる。まさに“The Sound Of Young America”。そこにはかけがえのない永遠の“ 若さ”がある。
青春の映像を鮮やかにフラッシュバックさせ、甘酸っぱい何かを刻みつける、とびきりグルーヴィーなポップ・チューン。その核となるのは、ベースのジェイムス・ジェマーソン、ドラムスのベニー・ベンジャミンを中心とするファンク・ブラザーズが繰り出すグルーヴ。高音を強調したミックスに映える賑やかなタンバリン、きらびやかなヴァイブやストリングスがそこにドリーミーな彩りを添える。先頃公開され話題を呼んだ映画『永遠のモータウン』は、そんなモータウン・サウンドのインサイド・ストーリー── “ヒッツヴィルUSA”の光と影を描いた興味深いドキュメンタリー・フィルムだった。

それではさっそく、60年代のモータウンの主役たちにご登場願おう。

まずは全米ポップ・チャートに10曲ものNo.1ヒットを送り込んだダイアナ・ロス&ザ・シュプリームス。名ソングライター・チームとして鳴らしたホーランド=ドジャー=ホーランド(H=D=H)と共に彼女たちが快進撃を始める直前にリリースされた「When The Lovelight Starts Shining Through His Eyes」は、ハンドクラップがご機嫌なモッド・クラシックであると同時にFree Soul Undergroundでもフロア爆発の極めつけのキラー・チューン。邦題は「恋のキラキラ星」。ゾンビーズがBBC録音を収めた編集盤でカヴァーしていたのは嬉しかった。アメリカの青春を感じさせる、ジュークボックスが似合う初期のNo.1ソング「Baby Love」は、若さの中に色香が漂う歌声に可憐なヴァイブが印象的なキュートで切ない名曲。フランク・ザッパがブートレグのライヴ盤でカヴァーしているのを聴いたときは、言いようもなく感激した。お馴染み「Stop! In The Name Of Love」はイントロからインパクト抜群。斬新かつダイナミックなアレンジと曲構成に圧倒的に魅せられる。絶妙なイントロのアンサンブルに導かれる「I Hear A Symphony」は、転調を繰り返しながら永遠に胸を疼かせるリフレインに涙。「恋はあせらず」の邦題で知られる「You Can’t Hurry Love」は、典型的なモータウン・ポップ。80年代にフィル・コリンズがカヴァー・ヒットさせ、ホール&オーツやブリテンダーズがそのベース・ラインを引用した。このビートこそがモータウン、そしてジェイムス・ジェマーソンの最大の発明だと言えるかもしれない。特にイギリスでは熱狂的に支持されていたのだろう。ジョン・レノンが早くから「モータウンのベースは凄い」と言っていたというし、映画『永遠のモータウン』にも、60年代のモータウンのレコードにはミュージシャン・クレジットがないにも関わらず、ジェイムス・ジェマーソンがイギリスを訪れた際、ファンがわざわざ訪ねてきたというエピソードが描かれていた。それはクラッシュのその名も「Hitsville U.K.」や、ジャムの「Town Called Malice」、メイキン・タイムの「Here Is My Number」やフライデイ・クラブの「Window Shopping」といったニュー・ウェイヴ以降の素晴らしい作品群を聴いても、容易に理解できることだろう。
ダイアナ・ロス&ザ・シュプリームスの後期では、私生児をテーマにしたドラマティックな哀愁メッセージ・ソングをタイトル・トラックに冠した『Love Child』が必聴のアルバム。弾むようにしなるビートに伸びやかなヴォーカルとホーンがきらめく「He’s My Sunny Boy」は、僕が彼女たちの楽曲の中で最もクラブ・プレイした傑作。スモーキー・ロビンソンのペンによる、ジャクソン・ファイヴのスタイルを準備したようなプレ70sソウルだ。“愛の終着駅”と題された「Some Things You Never Get Used To」も、シュプリームスの喜怒哀楽の結晶という趣の、その魅力が凝縮されたチャーミングなポップ・ソウル。他にもノーザン・ソウル・シーンで近年リヴァイヴァルした「He’s All I Got」や、小西康陽さんがDJマクスウェルと「最高のソフト・ロックだ」と意気投合したという「Bah-Bah-Bah」などは、正直なところ選曲の際に、耳馴染みのヒット曲とどちらを優先させるか、最後まで迷った。
ボーイズ・タウン・ギャングのディスコ・ヴァージョンに付けられた「君の瞳に恋してる」の邦題でお馴染みのフランキー・ヴァリ「Can’t Take My Eyes Off You」のカヴァーは、テンプテイションズとの共演盤から。やはり一度聴いたら忘れようのないサビの胸キュン・メロディーが耳に残る。この看板グループ同士の共演からは、アーリー・フィリー・ソウルの立役者ケニー・ギャンブル&ジェリー・ロス作で、ディー・ディー・ワーウィックとの競作となった「I’m Gonna Make You Love Me」のヒットが生まれた。

モータウンのガール・グループのもう一方の雄であるマーサ・リーヴス&ザ・ヴァンデラスも、僕の学生時代からのフェイヴァリット。ミック・ジャガー&デヴィッド・ボウイがカヴァーした「Dancing In The Street」のプロモ・クリップが、MTVで毎日のように流れていたのが懐かしい。もちろんオリジナルも問答無用の快作。パンチあふれる歌声とパワフルに突き進むサウンドが圧巻で、暴動を誘発する恐れがあるという理由で、リリース当時はラジオ局がオンエアを控えたという逸話も残っているほど。収録されたアルバムのタイトルはずばり『Dance Party』。60年代にはブリティッシュ・ロックの両雄、フーとキンクスがレパートリーにしていた。やはりフー、そしてジャムがカヴァーしモッズに愛された「Heat Wave」は、シャッフル・ビートで軽快にスウィングするH=D=H作のアップ・ナンバー。キュートなガール・グループ・マナーとティーンエイジ・ポップ的な瑞々しさが光る「In My Lonely Room」は、フィル・スペクター・タッチの青春ハンドクラッピング・ソング。ジョージ・マーティンがプロデュースし、リイシュー盤にはポール・ウェラーがコメントを寄せていたブリティッシュ・ビート・グループ、アクションがカヴァーしていたのは忘れられない。ヴァンデラス版「恋はあせらず」という趣の「I’m Ready For Love」も、モータウン・ビートに乗せて胸がキュンとするような切ないメロディーがこみ上げる涙の名作。より渋く熱い仕上がりのテンプテイションズによるヴァージョンも最高だ。やはりH=D=Hが制作を手掛けた「Nowhere To Run」「Jimmy Mack」なども、ローラ・ニーロ&ラベルが、僕には生涯の愛聴盤である『Gonna Take A Miracle』で歌っていたこともあり印象深い。70年代を予感させる柔らかく跳ねるグルーヴが心地よい「I Can’t Dance To That Music You’re Playin’」は、メロウなジャクソン・ファイヴという雰囲気を漂わせ、Free Soulファンの間では密かに人気の高い傑作。『A Cellarful Of Motown!』というノーザン・ソウル・コンビで初めて聴いたフランク・ウィルソン作の「With A Guy Like You」も、ほんのりと哀愁を誘う歌とメロディーが優しく琴線に触れてくる、知る人ぞ知る逸品だ。

そのフランク・ウィルソンは、僕がここ数年、H=D=H以上にそのクレジットに注目しているソングライターでありプロデューサー。言わばノーザン・ソウルのキー・パーソンと呼べるだろう。自身の名義による「Do I Love You」は、フレッシュなノーザン・ビートに乗った颯爽とした歌声と、その途轍もないレアリティーで噂が噂を呼んでいたもので、『This Is Northern Soul! Vol.1』という編集盤で初めて聴けたときは感慨深かった。今回はミックスにも歌にもより華がある白人女性ヴォーカル、クリス・クラークによるヴァージョンを収録。モータウンの受付嬢だった彼女は、やはりフランク・ウィルソン制作のノーザン・ソウル・クラシック「My Sugar Baby」を歌ったコニー・クラークの名でも知られている。
そしてもう一曲、フランク、ウィルソンが書いた素晴らしいドリーミー・ポップの名作が、西海岸の実力派女性シンガー、ブレンダ・ハロウェイが歌った「All Your Love」。これは本当に甘酸っぱく胸を締めつけられる隠れた名曲。彼女は代表作「You’ve Made Me So Very Happy」も、僕が大学時代に『The Hard To Find Motown』というオムニバスで聴いて死ぬほど好きになった曲で、ブラッド・スウェット&ティアーズやスモーキー・ロビンソン、ハーツ・オブ・ストーンなどのヴァージョンが有名だけれど、今でもこの曲のカヴァーを見つけるとついついそのレコードに手を伸ばしてしまう。美しいストリングスや存在感のあるベースに彩られた起伏に富んだメロディーを、抑えながらもドラマティックに歌うハスキー・ヴォイスが感動を誘う彼女の真骨頂だ。ブレンダ・ハロウェイはデビュー・ヒットとなった「Every Little Bit Hurts」──若きスティーヴ・ウィンウッドのソウルフルな歌声が光るスペンサー・デイヴィス・グループによるカヴァーも絶品だ──のようなバラードでもその歌唱表現の豊かさを示したけれど、英国のノーザン・ソウル・ファンにも高い人気を誇るダンス・ナンバーも数多く吹き込んでいる。僕のお気に入りはポップスの王道を行くようなメロディアスなソングライティングと快活なビートが最高な「My World Is Crumbling」や「Just Look What You’ve Done」、モッズからの支持も絶大なメロウなフィンガースナッピング・チューン「When I’m Gone」あたり。未発表マスターがノーザン・ソウルDJによって発見されて話題を呼んだ「Think It Over A.K.A. Reconsider」なども忘れることができない。

他にモータウンの女性シンガーと言えば真っ先に拳がるのが、初期を代表するスター、メアリー・ウェルズ。スモーキー・ロビンソン作のチャーミングなガール・ポップ「My Guy」は、モータウン初のR&BチャートNo.1。知る人ぞ知る存在ながら、「My Guy」に優るとも劣らない、思わず笑みが零れるような同タイプのガール・ポップとして、このコンピレイション・シリーズにはパトリス・ハロウェイの「The Touch Of Venus」やキャロライン・クロフォードの「Until You Came Along」といった珍しい作品も収めた。
ビートルズもカヴァーしたモータウン初の全米No.1ヒット「Please Mr. Postman」でガール・グループ・スタイルの礎を築いたマーヴェレッツは、グラディス・ホートンのハスキーなリード・ヴォーカルを華やかに盛り立てる壮大なオーケストラル・ポップ・ソウル「Poor Little Rich Girl」が抜群。ハーヴィー・フークアとジョニー・ブリストルの作家クレジットに納得してしまう。モータウンの初代A&Rマン、ミッキー・スティーヴンソンの奥方でもあるキム・ウエストンは、H=D=H制作による最大のソロ・ヒット曲「Take Me In Your Arms」──アイズレー・ブラザーズの他、ブラッド・スウェット&ティアーズやドゥービー・ブラザーズといったロック系のカヴァーも多い──のガッツあふれるソウルフルな高揚感にも魅せられるけれど、何と言っても夫のベンによる「Don’t Let Me Down」が胸キュンの極上ノーザン。そして僕が英国ノーザン・ソウル・ムーヴメントに最も感謝しなければと考えているのは、グラディス・ナイト&ザ・ピップス「If You Ever Get Your Hands On Love」の素晴らしさを伝えてくれたこと。疾走感あふれるビートとエモーショナルな歌に爽快なくらいノックアウトされる、絶品中の絶品だ。やはり疾走するイントロのジャジーかつファンキーなカッコ良さ、力強い歌声とパーカッシヴなアレンジに魅了される、ノーマン・ホイットフィールドがプロデュースしマーヴィン・ゲイとの競作ヒットとなった、「悲しいうわさ」の邦題で知られる「I Heard It Through The Grapevine」も、もちろん最高だけれど。

続いては、モータウン黄金期の輝ける男性ヴォーカル・グループに目を移していこう。僕が最も愛してやまないのはスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ。大学に入ったばかりの頃に手に入れた『Going To A Go-Go』『Make It Happen』という屈指の名盤を2 in 1にまとめたCDを、現在に至るまで何度繰り返し聴いたかわからない。イントロのギターから切なく、そして限りなく優しい「The Tracks Of My Tears」は、サビに向けて胸が熱くなり、感極まっていく永遠の名作。ビートルズの「In My Life」やゾンビーズの「Time Of The Season」のような僕も大好きなブリティッシュ・ロックの絶対的な名曲、モータウン信奉者ピート・タウンゼントが書いたフーの「Substitute」などが、この曲に強くインスパイアされて生まれたのは、作者自らの証言によって広く知られるところだ。そしてエルヴィス・コステロ初期の名バラード「Alison」がライヴの際に「The Tracks Of My Tears」とメドレーで演奏されたときは、不覚にも涙が出そうになった。
トッド・ラングレンがスウィート・ソウル・メドレーの中でカヴァーしていた「Ooo Baby Baby」も、艶やかなハイ・テナー~ファルセットを駆使した情感豊かな表現が筆舌に尽くしがたい名唱。デルフォニックスなどへと連なるスウィート・ソウルの原点であり、ソウル・ミュージックの古典としての優雅な品格を備えている。ニュージャージー甘茶ソウルの雄エスコーツも、とろけそうなほどスウィートにカヴァーしていた。切ない詞世界に胸を打たれる「My Girl Has Gone」や「Choosey Beggar」も、スモーキーの甘美なリリシズム、繊細な美意識に貫かれた不朽の名作。そして極めつけは、メロウ・スモーキーここに極まれり、という感じのLA 録音のなめらかな感触を持つメロディアス・ミディアム「More Love」。こうした詩情あふれる名曲群に耳を傾けていると、ボブ・ディランがスモーキーを“アメリカ最高の詩人”と絶賛したのにも、深くうなずいてしまう。
一方で、H=D=H制作によるラテン的なリズム・アクセントがご機嫌な陽性ダンス・チューン「Mickey’s Monkey」の流れを汲む「Going To A Go-Go」は、重低音ビートとクールなコーラスが抜群のカッコ良さ。ローリング・ストーンズがカヴァーしたのも当然だろう。イギリスから火がついてNo.1ヒットを記録した「The Tears Of A Clown」も、ピエロの仕草を模したイントロからスピーディーなテンポに乗って感情があふれ出すファルセット唱法が最高。作家クレジットにはスティーヴィー・ワンダーの名も。2トーン・レーベルのビートやミック・タルボットが在籍したマートン・パーカスにカヴァーされ、ネオ・モッズ~スカ・リヴァイヴァルのシーンでも圧倒的に支持された。そして粋でスタイリッシュな佇まいを見せる「I Second That Emotion」は、ミラクルズのダンサブルな側面とメロウなフィーリングが絶妙に溶け合った一曲。洗練を感じさせるスモーキーのモダンで洒脱なセンスが気高く昇華されたグルーヴィー・ミディアムだ。

そのスモーキーの作品ばかりを歌った『Sing Smokey』という名盤を吹き込んでいるテンプテイションズは、映画『永遠のモータウン』でもその芸術的なイントロのギター・リフ誕生のエピソードが描かれていた「My Girl」があまりにも有名だけれど、ルーサー・ヴァンドロスによるカヴァーも印象に残る「Since I Lost My Baby」も、デヴィッド・ラフィンの抑えた歌唱が胸に沁みるセンティメンタルなスモーキー作の名曲。ラフィンのテナー、エディー・ケンドリックスのファルセットを中心にダンディズム漂うコーラス・ワークを身上とする彼らは、「All I Need」では一転、フォー・トップスを思わせる心弾むビートに乗りエネルギッシュな歌声も響かせる。ワイルドな妖しい魅力を放つグルーヴ・ナンバー「Get Ready」──モータウンの白人ロック・バンド、レア・アースがドラムンベースのルーツと言えるようなエキサイティングなサウンドでカヴァーした──や、新加入したデニス・エドワーズの絶唱が鮮烈な、60年代後半以降のノーマン・ホイットフィールド・プロデュースによるスライ&ザ・ファミリー・ストーンの影響色濃いサイケデリック・ファンク路線の一連の傑作群も、彼らのスリリングなカッコ良さを示す一面として、決して聴き逃すことはできない。
テンプテイションズを抜けたデヴィッド・ラフィンは、すぐにソロとして「My Whole World Ended」のヒットを放ち、同タイトルのファースト・アルバムを発表。そこには僕のフェイヴァリット・ソング、ラヴ・アフェアーの名作「Everlasting Love」のカヴァーが収められている。深い陰影が刻まれた、彼らしい男気を感じさせるディープな仕上がりだ。ちなみに彼はその後、兄のジミー・ラフィンと共にラフィン・ブラザーズ名義でデュエット・アルバムも作っている。弟とは対照的にソフトなテナー・ヴォイスの持ち主であるジミーは、ポール・ウェラーに敬愛され、カウンシル・コレクティヴ名義で吹き込まれた「Soul Deep」の録音に招かれたこともあるハートウォームなソウルマン。感傷的なメロディーとナイーヴな情感に心洗われる代表作「What Becomes Of The Brokenhearted」は、クリス・ファーロウがストーンズのマネージャーだったアンドリュー・ルーグ・オールダムのイミディエイト・レーベルからの再デビュー盤で取り上げていた。『永遠のモータウン』でもジョーン・オズボーンによる素晴らしいカヴァーを観ることができる。

やはりクリス・ファーロウがイミディエイトに吹き込んでいる「Reach Out I’ll Be There」のオリジナルはもちろんフォー・トップス。ジャッキー・ウィルソンを彷彿とさせるリード・ヴォーカリスト、リーヴァイ・スタッブスの汗が飛び散るような男気あふれるシャウト。馬に乗るようなパーカッシヴなリズムと物哀しげなメロディー。後にディスコ・ヒットも記録したのはご存じの通り。同タイプの「Standing In The Shadow Of Love」もイントロの力強いコーラスにギター・カッティング、ディープかつダイナミックな歌が強烈。典型的なH=D=Hスタイルの躍動するポップ・ソウル「I Can’t Help Myself」の熱情みなぎるヴォーカルからは、ホット・ワックス/インヴィクタス・レーベルの顔、チェアメン・オブ・ザ・ボードのジェネラル・ジョンソンも連想される。その曲の大ヒット後に即座にリリースされた、タイトルも示唆的な「It’s The Same Old Song」も、親しみやすいリフに心躍るH=D=H節全開の一曲。モータウンがコンパクトでキャッチーな複製芸術を生み続けるポップアート・ファクトリーであることをわかりやすく伝える一例だろう。
H=D=Hマナーの傑作ということなら、シュプリームスも歌っているけれどエルジンズがヒットさせた「Heaven Must Have Sent You」も見落とすことはできない。彼らはドゥーワップ調の「Darling Baby」でも知られる男女混声グループ。この曲はディスコ全盛期にボニー・ポインターによるダンサブルな長尺のリメイク・ヴァージョンも作られた。そして“H=D=H・ミーツ・アイズレー節”という夢の顔合わせにときめくアイズレー・ブラザーズの「This Old Heart Of Mine」は、まるで青春映画の胸を掻きむしるテーマ・ソングのように響く珠玉の名作。しなやかに高揚するコーラスと活き活きとした歌の表情は、まさしくエヴァーグリーン。

60年代のマーヴィン・ゲイは、ノーマン・ホイットフィールド制作でグラディス・ナイト&ザ・ピップスと競作の「悲しいうわさ」や、Free Soul Undergroundでは女性歌手スパンキー・ウィルソンの身震いするほどスリリングなヴァージョンが人気を集める「You」、ノーザン・ソウル・シーンのダンスフロアを元来は未発表音源ながら激しく揺るがした「This Love Starved Heart Of Mine (It’s Killing Me)」などに顕著な、緊迫感に満ちた歌唱も捨てがたいけれど、僕には初期のクルーナー・ジャズ/ポップ歌手から転向してR&Bシンガーとして歩み始めた頃の瑞々しさもとても魅力的だ。初ヒットとなった「Stubborn Kind Of Fellow」は、若々しく眩しいばかりのサビのコーラスが最高。いつ聴いても身体の底から一緒にシャウトしたくなってしまうし、聴けば必ず溌剌とした気分になり、元気が湧き出てくる。バックの歌声はマーサ・リーヴス&ザ・ヴァンデラス。ズート・マニーズ・ビッグ・ロール・バンドによる名演も僕の音楽友達の間では語り草だ。やはり学生の頃に聴いたポール・ヤングのスロウ・バラードによる名唱が思い出深い「Wherever I Lay My Hat」も、メロディアスなR&B感覚と初々しい甘さをたたえたヴォーカルが胸をくすぐる逸品。
理想の恋人像とまで言われたマーヴィン・ゲイとタミー・テレルのデュエット曲にも、当然のことながら記憶に残る名作は多い。ソウル界のおしどり夫婦ソングライター・コンビ、アシュフォード&シンプソンの鮮やかな手腕がどの曲にも光っている。後にダイアナ・ロスがポール・ライザーの荘厳なアレンジでカヴァーする「Ain’t No Mountain High Enough」は、ドラマティックなストーリーに魂を揺さぶられる名曲。『永遠のモータウン』のクライマックスでは、チャカ・カーンとモンテル・ジョーダンによって歌われていた。優しく繊細かつ凛々しいマーヴィンとキュートで愛らしいタミーが醸し出すスウィートハート・ムードは、息の合った掛け合いの妙と共にリズムとハーモニーがしなやかに絡み合う名ラヴ・ソング「Ain’t Nothing Like The Real Thing」や「You’re All I Need To Get By」にも親密に映し出されている。ディアンジェロ&エリカ・バドゥの素晴らしいカヴァーが記憶に新しい「Your Precious Love」も、男女デュエット屈指の名作としてこれからも歌い継がれていくだろう。

スティーヴィー・ワンダーにも60 年代モータウンならではの躍動感に満ちた傑作が数多くあるけれど、モータウン・マナーという観点からアルバムをひとつピックアップするとすれば『Up-Tight』だろうか。大ヒットしたタイトル曲はストーンズの「Satisfaction」にインスパイアされたという勢いあふれるビート・ナンバー。一方で知られざる名曲と言えるのが「Love A Go Go」。ヴァンデラスの「Dancing In The Street」に匹敵する豪快なブラスのイントロ、アップリフティングなビートに甘酸っぱい泣きメロが組み合わされたとっておきのダンス・チューンだ。フランク・シナトラやトニー・ベネットも歌ったジャズ・スタンダードをグルーヴィーに改作した「For Once In My Life」は、今ではスティーヴィーがオリジナルと錯覚しても不思議ではないほど、このスタイルで浸透している。生命力みなぎるビートと歌声、伸びやかな間奏のハーモニカ、突き抜けるような疾走感。Free Soul Undergroundではサミー・デイヴィス・ジュニアのモータウン盤、ソフト・ロックのスパイラル・ステアケイス、英国ガール・ポップのシラ・ブラック、フレンチ・ブラジリアンのカチアなどのヴァージョンでもヘヴィー・プレイされている。同じくロン・ミラーの作家クレジットがあるスタンダード「A Place In The Sun」は、初期スティーヴィーを代表する名唱。何か遠い記憶がフラッシュバックするような、そんなノスタルジックな名曲だ。デヴィッド・アイザックスを始め多くのロック・ステディー・カヴァーが生まれているように、ジャマイカのミュージシャンたちにも強く愛されている。同じようにメランコリックな旋律が胸を打つ「My Cherie Amour」は、70 年代のスティーヴィーへと受け継がれていく彼のメロウ・センスの結晶。そこはかとなくジャジーな香りさえ漂う、瀟洒な気品をたたえた珠玉のバラードだ。やはりジャマイカのハリー・J・オールスターズがオルガン・インストのロック・ステディーに仕立てていた。こうした60年代スティーヴィーのソフトでメロディアスな作風では、アレンジャーのニック・デカロが自ら歌ったMORの記念碑的名盤『Italian Graffiti』でカヴァーされた「Angie Girl」なども僕は気に入っているし、同じアルバムには密かにフロアで人気を呼ぶ「At Last」が収録されているのも嬉しい。そして隠れた傑作、と言えるはずの「Hey Love」は、僕には何と言ってもデ・ラ・ソウルによるリメイク・ヴァージョンが忘れられない。原曲の持つチャーミングでとぼけた小品ならではの魅力を発見し、再構築してみせた彼らのセンスに脱帽。こういう瞬間があるからヒップホップというアートフォームからは目が離せないのだ。

スティーヴィーらの共作による「It’s A Shame」がFree Soulファンの間ではクラシック中のクラシックになっているデトロイト時代のスピナーズが、実は60年代半ばにも「What More Could A Boy Ask You」という人懐こいメロディーの若さ弾けるノーザン・ソウルを吹き込んでいることも特筆すべきだけれど、その作者でもあるジョニー・ブリストル&ハーヴィー・フークアのコンビが書いた名曲「What Does It Take」をヒットさせたジュニア・ウォーカー&ジ・オール・スターズも、60年代モータウンの顔として紹介しないわけにはいかないだろう。彼らはモータウンには珍しいテナー・サックスをフィーチャーしたホンカー・スタイルのR&Bバンド。ノヴェルティー・タッチの出世作「Shotgun」や、ヤング・ディサイプルズのフェミとマルコがDJをしていたレア・グルーヴの聖地と言えるクラブ・イヴェントにその曲名が引用された「Shake And Fingerpop」のようなアーシーかつファンキーな雰囲気とは違い、この「What Does It Take」はメロウな味わいがじんわりと心に染みてくる。その哀愁テナーに魅せられてか、キャンディー・ダルファーやケニーGといったコンテンポラリーなサックス奏者もカヴァー演奏しているほど。70年代モータウンに残されたホット・ワックス/インヴィクタス的サウンドの幻の名盤、ハーツ・オブ・ストーンの『Stop The World - We Wanna Get On』でもコーラスとストリングスが胸を高鳴らせる瑞々しい好ヴァージョンを聴くことができる。

そして60年代編のライナーノーツの最後を飾るのはジャクソン・ファイヴ。Free Soulシーンではヤング・ソウルの聖典となっているデビュー・ヒット「I Want You Back」は69年10月リリース。弾けるような躍動感に富んだイントロのギター・カッティングから、まばゆいほどにイノセントな光を放つ歌声と、甘酸っぱくも微笑みに満ちたメロディーが零れ出す。それはまさしくモータウンの新しい顔に相応しい輝きだった。制作を手掛けたのはフレディー・ペレン、アルフォンス・マイゼル、ディーク・リチャーズ、そしてベリー・ゴーディー・ジュニア── “The Corporation”の面々で、録音はロサンゼルス。デトロイトを舞台に栄華を誇ったモータウンにも、新しい時代が確実に訪れようとしていた。


Free Soul. the classic of 70s Motown

Free Soul Undergroundを始めて10年が経つ。「とてつもなく素晴らしいことをそのままにしておきたいと願うなら、かならず終わらせなければならない」──ジャム解散の際にそう語ったのはポール・ウェラーだ。確かにそうかもしれない。Free Soulの編集盤CDもすでに70 枚を越えた。でも僕は、このソウル・ミュージック史上No.1レーベル──いや“ポップ・ミュージック史上”と言い換えてもいいだろう──のコンピレイションが結実するまで、Free Soul UndergroundというDJパーティーを続けることができて本望だ。“Up The Ladder To The Roof”と繰り返し歌うシュプリームスに勇気づけられる。
本当にFree Soul Undergroundの青春が詰まったようなコンピレイションだと思う。素晴らしく幸福な音楽の瞬間があったことを決して忘れないために、僕はこの選曲をしたのかもしれない。昨日より今日、土曜の夜から日曜の朝まで、月明かりの下で踊り明かしたいと願った日々── “Thank you baby, if you really love me, it’s great to be here”。どの曲も深く思い出と結びついてしまっていて胸が熱くなる。いくつかの曲では涙があふれそうになる。
大好きな音楽の“針供養”と言ったら言いすぎだろうか。さよならは言わないで。このコンピレイションに収められたモータウンの音楽の輝きが永遠に色褪せないことは、僕がここに断言する。ソウルとは“ 制約のない、感情に訴える、特別な音楽”なのだから。

それではさっそく、歓びも哀しみもリアルな表情でFree Soul Undergroundを彩ってくれた70年代のモータウン・サウンドをご紹介しよう。

まずは94年4月に出版された「Suburbia Suite; Welcome To Free Soul Generation」からこの文章を引用したい。
「淡いグリーンに染められた海に優しく浮かぶシルエット。ジャケットに漂う柔らかな風やメランコリーがサウンドからも浮かび上がる一枚。切なさがこみ上げる“Our Lives Are Shaped By What We Love”は、抑えたビートから少しずつ少しずつベースが歌い始める、あの高揚感。暗闇から遙か遠くにほのかな光が見えてくるような、そんなイメージ。“Battened Ships”は躍動感に満ちたヤング・ソウルの金字塔。哀愁を帯びたメロディーに絡み合うコーラスとフルート。夜の向こう側まで突き抜けるような疾走感」
モータウンの傍系レーベルであるモーウエストの白黒混成グループ、オデッセイが72年に発表した唯一のアルバムの紹介文だ。その後のDJパーティーを通して、彼らの「Battened Ships」がFree Soul Undergroundの決定的なアンセムになったことは、もう説明の必要がないだろう。あまり多くを言葉にしたくないほど、僕にとってはかけがえのない、大切な曲だ。
モーウエストには大切なシングル盤も2枚残されている。ファンキー・ガール・グループ、シスターズ・ラヴの「Give Me Your Love」は、ブラック・ムーヴィーの古典『スーパーフライ』のために書かれたカーティス・メイフィールドの名曲のカヴァー。バーバラ・メイソンも取り上げ、メアリー・J.ブライジも「I’m The Only Woman」の下敷きにしていたけれど、これほどまでに狂おしく、悩ましいほどに胸に迫る歌が他にあるだろうか。間奏のさりげないギター・フレーズまで完璧に記憶の中でプレイバックできる、エモーショナルな名演。74年のモータウンのサントラ盤『Save The Children』で何度クラブ・プレイしたかわからないカーティス自身のライヴ・ヴァージョンと双璧だ。やはりカーティスを彷彿とさせるG.C.キャメロンの「No Matter Where」も真摯なソウル・スピリットに胸を掻きむしられる。ビターなギター・カッティングから切迫感の高まりと共に熱い感情が沸き立つ、魂の震えが乗り移ったような名唱。ノーテイションズの「Super People」やシドニー・ジョー・クォールズの「Bad Risk」を思い出す。
G.C.キャメロンがリード・ヴォーカリストだったモータウン在籍時のスピナーズは、スティーヴィー・ワンダーらの共作による「It’s A Shame」が不朽の名作。印象的なイントロのギター・リフは、モニー・ラヴやR.ケリーに鮮やかにサンプリングされた。やはりスティーヴィーのペンによる「We’ll Have It Made」も、低音ピアノの響きが素晴らしい知る人ぞ知る逸品。

そのスティーヴィーは21歳の誕生日についに、デビュー以来のモータウンとの契約更改を実現し、クリエイティヴ・コントロールを手に入れて、コモン&ローリン・ヒルも歌った「Never Had A Dream Come True」を収めた『Signed Sealed & Delivered I’m Yours』を皮切りに、セルフ・プロデュース・アルバムを発表していく。70年代のスティーヴィーの音楽は、すべてに彼の血が通っていて、暖かい音に包まれた強さのようなものを感じてしまう。誰もが微笑んでしまうメロディーの美しさ、優しくメロウに揺れるフェンダー・ローズ、力強くリズムを刻むクラヴィネット。胸の奥からあふれる感情の動きを描写するような、しなやかなコード・チェンジ。いつしか音楽の魔法にかかり、曲が終わる頃には幸福な気分がこみ上げてくる。彼のキャリアの音楽的なピークとなった、どんなに絶賛しても言葉が足りないくらい素晴らしい72~76年の名盤5作『Music Of My Mind』『Talking Book』『Innervisions』『Fulfillingness First Finale』『Songs In The Key Of Life』── Free Soul Undergroundの人気曲を挙げても、それこそ枚挙に暇がない──に収録された傑作群は、契約の関係上からコンピレイションへの使用はできないけれど、その直前のヒット曲「If You Really Love Me」も、この時期に互いに愛を育んでいたシリータ・ライトとの共作による永遠のラヴ・ソング。耳をとらえて離さないオープニングのフレーズから起伏に富んだ展開に胸が詰まるような名曲だ。
シリータはスティーヴィーとの蜜月によって72年にデビュー作『Syreeta』を発表。淡い光の中で潮騒を聴きながら、裸足の彼女が軽く微笑むライト・ブルーの美しいジャケットから、愛と優しさに満ちたイメージが広がる。スティーヴィーが全編に渡ってプロデュースと楽器演奏を手掛けたこのアルバムは、思わず笑顔が零れるほどキュートで軽やかな「I Love Every Little Thing About You」を収録している。言わばスティーヴィーの『Music Of My Mind』と、やはり彼が全面参加したミニー・リバートンの「Loving You」を含む『Perfect Angel』の間を結ぶような存在と言えるかもしれない。シリータは74 年の『Stevie Wonder Presents Syreeta』に続いて、77年にはレオン・ウェアをメイン・プロデューサーに迎え『One To One』をリリース。しなやかな空気感に魅了される、パーカッションも艶やかなメロウ・グルーヴの隠れた名盤だ。柔らかな肌触りの「I Don’t Know」は、刻まれるピアノと高揚するストリングス、透明なヴォイスに包まれる至福の一曲。ラヴリーでアコースティックな「Harmour Love」は、スティーヴィー・プロデュースによる心洗われるラヴ・ソングだ。
レオン・ウェアは何と言ってもマーヴィン・ゲイの76年の名盤『I Want You』のプロデューサーとしての功績が大きいけれど、そのアルバムをマーヴィンに譲った代わりに自らモータウンに吹き込んだ『Musical Massage』も素晴らしい。彼らしい甘美な転調が官能的な「Journey Into You」や「Share Your Love」はチャック・レイニーとジェイムス・ギャドソンのリズム隊も抜群。メロウ・グルーヴ・クリエイターとしての彼は、ミニー・リバートンの「Baby, This Love I Have」「Inside My Love」──共にトライブ・コールド・クエストによって絶妙にサンプルされている──や、やはり彼女が歌ったクインシー・ジョーンズ名義の「If I Ever Lose This Heaven」──ナンシー・ウィルソンやマキシン・ナイティンゲイル、アヴェレイジ・ホワイト・バンドなどのヴァージョンでもFree Soulファンに人気が高い──の他、マイケル・ジャクソンがソロ・ヒットさせた「I Wanna Be Where You Are」──こちらはズレーマのソウルフルな熱唱でも支持されている──などでその本領を発揮している。80年代に入ってからの、マンハッタン・トランスファーのジャニス・シーゲルをフィーチャーしたAORフィーリングの傑作「Why I Came To California」や、ソウル・ミュージックにブラジル的な感性とサウダージ風味をまぶしたマルコス・ヴァーリの名曲「Sei La」のプロデュースも忘れることはできない。その後はルース・エンズやエル・デバージ、マックスウェルにもコラボレイションを望まれ、彼の濃密なメロウネスは脈々と受け継がれている。

マーヴィン・ゲイはスティーヴィー・ワンダーと並んで名実共に70年代モータウンの顔と言っていいだろう。理想のデュエット・パートナーであり、ほのかに想いを寄せていたタミー・テレルを病のために失ったマーヴィンは、「僕自身も彼女と一緒に死んでしまったような気がした」という痛々しいコメントを残しているけれど、その1年後、様々な心の中の葛藤を音盤に刻みつけるように、スピリチュアルな輝きとヒューマニティーあふれる名盤『What’s Going On』を生み出した。それはアフリカン・アメリカンの視点からヴェトナム戦争を始めとする社会問題を浮き彫りにするコンセプト・アルバムだったが、ヘヴィーなテーマを扱いながらも、寄せては返す穏やかな声の波と、ゆっくりと柔らかく織りなされる16ビートが深い陰影を刻み、スティーヴィー・ワンダーの心さえも揺さぶったという。シンコペイトするベース・ラインにクールに光るギター・カッティング、ラテン・パーカッションが絡むスムーズでポリリズミックなグルーヴに映える、温もりに満ちたサックス、優しく甘美に流れゆくコーラスとストリングス。ジャズやラテンの要素もはらんだ豊潤にして芳醇な音楽性を備えたこの作品で、しなやかで力強い歌声の持ち主マーヴィンは、思索的なシンガー・ソングライターであり、独創的なサウンド・クリエイターであるという、孤高のソウルマンとしての個性も確立した。メロウ・グルーヴの原型となったタイトル曲は、すぐに共感の意を示したダニー・ハサウェイのライヴ・ヴァージョンを筆頭に、幾多のミュージシャンシップあふれるカヴァー──とりわけジャズの名演が多いのは特筆に値する──が生まれているし、トッド・ラングレンやジェシ・コリン・ヤング、ローランド・カークなどはこの曲と「Mercy Mercy Me」をメドレーにしてカヴァーしている。90年代に入ってからもスピーチが「What’s Going On」をアダプトし、ヤング・ディサイブルズのフェミがシドニー・ヤングブラッドのリミックスで「Mercy Mercy Me」を下敷きにしているように、この2曲にインスピレイションを受けた楽曲を挙げれば星の数ほど。僕自身もソウル・ミュージックを聴き始めたばかりの頃は、この2曲のヴァリエイションばかり探していた。70年代ジャズのフィル・アップチャーチから90年代R&Bのアンジェラ・ウィンブッシュまで、さらに多くの好カヴァーを生んだ「Inner City Blues」も、深い哀しみに満ちた名作で、マーヴィンのトリビュート盤『Inner City Blues - The Music Of Marvin Gaye』における実娘ノーナ・ゲイ&ミシェル・ンデゲオチェロ版は圧巻だった。イギリスのブライアン・オーガーやワーキング・ウィーク、トライブ・コールド・クエストがサンプルしたリューベン・ウィルソンやロンドン・クラブ・シーンで人気のシャイ・ライツのヴァージョンも忘れがたい。
マーヴィンはその後、自らフェイヴァリットに挙げるブラック・シネマのサントラ盤『Trouble Man』──彼はそれ以前から映画音楽にとても興味を持っていたという──を72年に発表。その中のクールなファンキー・インスト「“T” Plays It Cool」は、ブレイクビーツとしても人気を集めている。そして翌73年には、鮮烈な赤を基調にした躍動的なジャケットも素晴らしい『Let’s Get It On』で愛の歓びを生き生きと歌い上げている。“ 性愛”をテーマにした、名バラード「Distant Lover」やシルヴィアもカヴァーした「You Sure Love To Ball」を含むこの官能的な作品を、かつて高橋芳朗くんが「ソウル・ミュージックの核心にあるものを絵に描いて額縁に入れたようなアルバム」と評していたのが印象的だった。
レオン・ウェアとのコラボレイションによる76年の『I Want You』は、掛け値なしに魅力的なアルバムで、僕は死ぬまでに1,000回は聴くだろう。アーニー・バーンズが描いたどこか悲哀を漂わせるジャケットの絵も、ブラック・ミュージック、そして誰よりもマーヴィンの音楽に潜む濃密な感情、いや情念をとてもリアルにとらえている。カーティス・メイフィールド『Something To Believe In』のジャケットも手掛けたアーニーは、キャンプ・ローの『Uptown Saturday』でもオマージュを捧げられていたけれど、僕は彼の絵が掛けられているソウル・バーに行くと、たとえその選曲センスが自分の趣味と一致しなくても無条件で好感を持ってしまうのだ。
英国のジャーナリスト、デヴィッド・リッツはマーヴィン・ゲイの伝記に『Devided Soul』というタイトルを付けていたけれど、『I Want You』は『Let’s Get It On』と同じように性愛を描きながらも、その“引き裂かれた魂”が音楽に孤独な影を映し出しているようで、僕は胸を掻きむしられる。表題曲や「After The Dance」を聴いていると、僕は例えばマリーナ・ショウがブルーノートに吹き込んだ「Feel Like Makin’ Love」──彼女はマーヴィンの「Save The Children」もブルーノートでライヴ録音している──を思い出す。“メイク・ラヴ”という人間の営み、そこには聖と俗、善と悪、愛と肉欲が渦巻いているはずだ。だからこそ「All The Way Around」の甘く開放的なメロディーが流れると、少し天国に近づいたような気分になれるのだろう。他の曲もどれも最高で、インタールード的な小品の「I Wanna Be Where You Are」は、メイズのフランキー・ビヴァリーに後に“Silky, Silky Soul Singer”と歌われた優しく繊細な歌唱と、センシティヴなサウンドのあまりの素晴らしさに、ぜひ独立した楽曲として聴きたかったと、つい口惜しい気持ちになってしまうほど。密やかなエロティシズムが甘美に昇りつめていく隠れた傑作「Since I Had You」をファーサイドがサンプリングしたときも本当に涙が出るほど感激した。

60 年代に一世を風靡したスモーキー・ロビンソンも、70年代半ばにはミラクルズを離れて精力的にソロ・アルバムを発表していた。中でも出色の輝きを見せていたのが75年の『A Quiet Storm』。まさに“クワイエット・ストーム”な静謐な響きをたたえた表題曲は、後にデ・ラ・ソウルに印象的にサンプリングされた。「Baby That’s Backatcha」もフルートとパーカッションがグルーヴィー。70 年代ならではのスモーキーの魅力が凝縮されたような「The Family Song」や、Free Soulファンにはニュー・バース版などでも人気の高いジャクソン・ファイヴのメロウ・サイドを代表する名曲「Never Can Say Goodbye」のカヴァーを収録した73年の『Smokey』も必聴の一枚だ。彼は79年にはスティーヴィー・ワンダーとの共作によるアーバン&ブリージンな名品「I Love The Nearness Of You」を発表すると共に、ディアンジェロもリメイクしたAORテイストの「Cruisin’」を大ヒットさせチャートに復帰、健在ぶりを示している。

70年代モータウンの快進撃を牽引したジャクソン・ファイヴは、デビュー曲「I Want You Back」に続いて「ABC」「The Love You Save」「I’ll Be There」と立て続けに4曲を全米No.1に送り込んだ。その後シングル・リリースされた「Never Can Say Goodbye」「Mama’s Pearl」「Sugar Daddy」などもどれも素晴らしい楽曲ばかりだった。僕が最もFree Soul UndergraoundでDJプレイしたのは、サビで胸キュン・メロディーが弾けるウィリー・ハッチ作の「I Can Only Give You Love」。そして“3分間の奇跡”という言葉が相応しいパーフェクトな一曲「It’s Great To Be Here」。完璧なベース・ライン、“Thank You, Baby”という決定的なフック。ご存じ『Ultimate Breaks & Beats』にも収められていた、二枚使いの大定番だ。古くはアフリカ・バンバータの「Death Mix」を皮切りに、数えきれないほど多くのヒップホップ・クリエイターにサンプリングされ続けている。ジャクソン・ファイヴをサンプリングしたオールド・スクール・ヒップホップでは、メロウでチャーミングな「Darling Dear」のイントロを使ったBボーイ・ボッセの「Tall, Dark And Handsome」も忘れられない。もちろん「I Want You Back」使いのエリック・B&ラキム「I Know You Got Soul」のノーマン・クックによるリミックスも。キャッチーな「I Want You Back」のイントロから怒涛のドラムンベースへと展開するジョーカーの「Rewind」もフロアを熱狂の渦に巻き込んだ。幾多の「I Want You Back」のカヴァー──エッソ・トリニダード・スティール・バンドのスティールバン・ヴァージョンや、CCSのファンキー・ロック版、カル・ジェイダーのラテン・ジャズ・ファンク版などが印象深い──も、Free Soul Undergroundでスピンされない日はなかっただろう。中でもオリジナルから3年後にモータウンに吹き込まれた、マーサ・リーヴス&ザ・ヴァンデラスの「I Want You Back」は、イントロの煽りから楽器の鳴り、リズムの勢い、鬼気迫るようなヴォーカルまで、圧倒的な生命力に満ちた快演だった。70年代の彼女たちのレパートリーの中で何か一曲と言われたら、僕はこのカヴァーか「Bless You」を挙げるだろう。

ジャクソン・ファイヴのメンバーはソロとしてもFree Soulファンの心をくすぐる傑作を数多く残している。マイケルはレオン・ウェア作の「I Wanna Be Where You Are」以外にも、「What Goes Around Comes Around」のチャーミングでセンティメンタルなグルーヴが密かな人気を呼んでいるし、ジャーメインはイントロからスタイル・カウンシルの「Headstart For Happiness」を彷彿とさせるギター・カッティングが心地よい「Live It Up」や、切ないメロディーに胸が疼くジャクソン・ファイヴでのリード・ヴォーカル曲「I Will Find A Way」が絶大な人気。
「ABC」を思わせるフォスター・シルヴァーズの「Misdemeanor」や「Never Can Say Goodbye」を思わせるシルヴァーズの「We Can Make It If We Try」──フロア爆発の「Cotton Candy」や「Happy」、ホット・ワックス/インヴィクタスのグラス・ハウス「Touch Me Jesus」のカヴァーあたりも──、あるいはオズモンズの「One Bad Apple」といったキッズ・ソウルの人気曲は、すべてジャクソン・ファイヴのポップ・イディオムが貫かれていると言っても過言ではないだろう。
78年のモータウンの企画オムニバス盤『Pops, We Love You』でジャーメイン・ジャクソンと「You’ll Never Rock Alone」をデュエットしているタタ・ヴェガは、以前はモータウン傘下のレーベル、ナチュラル・リソースのアースクワイアーというファンキー・ロック・グループで歌っていた女性シンガー。ソロになってからはポップな色合いを増した彼女は、ネッド・ドヒニー「Get It Up For Love」のダンサブルなカヴァーもフロア・ヒットさせているけれど、この「You’ll Never Rock Alone」は、高揚するコーラスのリフレインによる盛り上がりが圧巻の、Free Soul Undergroundの大合唱曲。ギターのイントロに乗ってやってくるハッピー・フィーリング。リズム隊はチャック・レイニーとジェイムス・ギャドソン。アレンジはアル・ジョンソンが手掛けている。

70年代の声を聞くと同時にシュプリームスから独立したダイアナ・ロスは、女優としてのキャリアも含めて順調な歩みを続けていくけれど、ソロとして初めて全米チャートNo.1を記録したのは、「Ain’t No Mountain High Enough」だった。60年代にはマーヴィン・ゲイ&タミー・テレルがデュエットしたこのアシュフォード&シンプソン一世一代の名曲を、彼女はドラマティックな魅力はそのままに、語りとコーラスをメインに壮大なソウル・シンフォニーへと仕立て上げた。この曲は後に、ジョセリン・ブラウンのエモーショナルな歌声をフィーチャーしてインナー・ライフにもカヴァーされ、そのヴァージョンはガラージ・クラシックとしてダンスフロアで聴き継がれている。彼女が来日してクラブで生でこの曲を聴かせてくれたときは、そのリアルな歌声に背筋が震えた。
70年代初頭に残されたダイアナの名曲としては、しっとりと歌われる切ないラヴ・ソング「I’m Still Waiting」も絶対に見落とすことはできない。ラヴァーズ・ロック・フレイヴァー香るコートニー・バイン・フィーチャリング・キャロル・トンプソンのグラウンド・ビート・ヴァージョンで完全にクラブ・クラシック化しているあの曲のオリジナルだ。フリーダ・ペインの妹シェリーの可憐なカヴァーも忘れられない。
そして70年代モータウン・レディー・ソウルの最高峰と断言したいのが「One Love In My Lifetime」。固く引き締まったビート、ホット・ワックス/インヴィクタス的な躍動感に乗って、こみ上げるメロディーと沸き上がるストリングス。僕にとってはFree Soul Undergroundの思い出と分かちがたく結びついた生涯の一曲だ。79年の「The Boss」は、哀愁をかき立てるFree Soul Undergroundの人気曲であると同時にニューヨーク・ダンス・クラシックでもある“ディスコの良心”。マスターズ・アット・ワーク制作によるブラクストンズのカヴァーの素晴らしさには脱帽した。
ダイアナ・ロスの抜けた後の70年代のシュプリームスにも、実はモータウンらしいポップでスウィートでグルーヴィーな傑作が多いこともこの機会に強調しておきたい。スティーヴィー・ワンダー作の「Bad Weather」は、Free Soulファンにはレオン・ウェア・プロデュースによるメリサ・マンチェスターの絶品カヴァーでもお馴染みだけれど、このオリジナルは賑やかなホーンやパーカッションに、ホイッスルも加わったパーティー感覚に胸躍る仕上がり。ホーランド兄弟作の「Early Morning Love」は、固く跳ねるビートに高揚感あふれるストリングスが爽快にたなびき、ホット・ワックス/インヴィクタスと双璧をなす70 年代版“The Sound Of Young America”という趣だ。フランク・ウィルソンが手掛けた「Up The Ladder To The Roof」は、僕には胸が詰まるほど感動的な一曲。この切なくもポジティヴなフィーリングはモータウンの真髄。僕も大好きなプリンスの「Little Red Corvette」は、曲構成やメロディーからアレンジまで、絶対にこの曲に影響を受けていると思う。そう考えると、さらにこの曲が愛しく思えてくるのだ。そしてスティーヴン・スティルスのアコースティックな名作をカヴァーした「Love The One You’re With」は、71年のフォー・トップスとの共演盤『Dynamite』から。この曲はアイズレー・ブラザーズ、スリー・ディグリーズ、トニー・オーランド&ドーンといった様々なヴァージョンで、フォーキーな気分の90年代半ばのFree Soulのフロアを沸かせてくれた。どれも聴いていて、とても清々しい気分になってくるのだ。

フォーキーなサウンドとモータウンの関係という意味では、ジャクソン・ブラウンの弟でもあるシンガー・ソングライター、セヴリン・ブラウンも浮上してくる。甘い語り口と都会的なセンスが光る「Stay」は、モータウンのリズム隊に乗ったまろやかなアコースティック・アンサンブルの逸品。ダニー・コーチマーの「For Sentimental Reason」やベン・シドランの「Chances Are」と並ぶ、コード感とグルーヴ感が両立した名曲だ。
スティーヴィー・ワンダーを思わせるとびきりグルーヴィーな名作「Why Don’t We Fall In Love」がFree Soulファンから圧倒的な支持を受ける白人ソウルマン、ジョン・ヴァレンティがリード・ヴォーカルを務めていたパズルも、モータウン傘下レア・アースのソフト・ファンキー・グループ。そこはかとなくサウダージ風味が漂うブルー・アイド・ソウル「Lady」は、洗練されたメロウなAORテイストが味わい深い。
モータウンがディストリビューションを行っていたオーストラリアのAORバンド、スタイラスもさりげないクラヴィネット使いにスティーヴィーへの憧憬が見える。鳥のさえずりが爽やかな「Bushwalkin’」は、軽快なリズム・ギターの刻みが心地よいサニー・グルーヴ。実はオーストラリアはスカイライトの「Get It Happening」やレネ・ゲイヤーの「Two Sides」──アレサ・フランクリンのカヴァー「It Only Happens」やノーマン・コナーズにカヴァーされた「Be There In The Morning」も人気を集めたけれど──など、こうしたタイプのAORとソウルの中間的なサウンドの宝庫で、ダグ・パーキンソンズ・サザン・スター・バンドによるレオン・ラッセル「Rainbow In Your Eyes」のカヴァーあたりと共に、Free Soul Undergroundを晴れやかに彩ってくれた。

モータウンの誇るファンキー・ロック・バンド、レア・アースも70年代半ば以降は、AORフィーリングも漂わせたホワイト・ソウルの傑作を吹き込むようになる。やはりイントロから凛々しいギター・カッティングに胸を掻きむしられる「My Eyes Only」は、ぐっと心を掴まれるメロディー、サビに向けて燃え上がる男気あふれるヴォーカルも最高。ノーマン・ホイットフィールドが制作した「Midnight Lady」からも、彼らの意外性に富んだ魅力は伝わってくる。
モータウンのロック系レーベル、レア・アースの作品では、ウルフの唯一のアルバムも、個人的には大切な一枚だ。なぜならそこには、僕の愛唱歌、キング・ハーヴェストの名作「Dancing In The Moonlight」のカヴァーが収録されているから。彼らはこのエヴァーグリーン・ソングを賑やかに、ご機嫌なラテン・ソウル・タッチでプレイしている。ミック・タルボットも参加したオーシャン・カラー・シーンの傑作「Up On The Down Side」がリリースされたとき、Free Soul UndergroundのDJ仲間でもある山下洋くんは、「たぶんウルフの“Dancing In The Moonlight”を参考にしているはず」と鋭く語っていた。
その山下くんがよくスピンしていたキキ・ディーの「More Today Than Yesterday」は、ユニオンジャックをあしらったジャケットもイギリス人好み、モッズ好みの70年作『Great Expectations』──彼女はヘア・スタイルからファッションまでルックスもモッズ好みだ──から。もちろんスパイラル・ステアケイスのソフト・ロック・クラシックのカヴァー。胸のすくようなノーザン・テイストがまぶしい「The Day Will Come Between Sunday And Monday」も僕のお気に入りだ。

70年作のモータウンのノーザン・テイストなら、この最高の一曲も忘れてはいけない。それはエドウィン・スターの「Running Back And Forth」。弾むようなフレッシュなグルーヴに息づく、力強く凛々しい歌声。イントロのフレーズから奇跡的に素晴らしい。テンプテイションズとの競作で全米No.1ヒットとなったファンキーな反戦歌「War」を含む『War And Peace』に潜んでいた珠玉の名作だ。タイプの違う曲だけれど、エドウィン・スターはブラック・サントラ『Hell Up In Harlem』に収められた「Easin’ In」も抜群。一度聴いたら病みつきになるベース・ライン、ストイックなブレイクビーツに引き込まれる。カーティス・メイフィールドで例えるなら、「Freddie’s Dead」のような傑作。ラリー&フォンス・マイゼル・ブラザーズが絡んでいるのも納得のヒップなサウンド・メイキングだ。モータウン産のブラック・サントラでは、「Love Power」のヒットで知られるウィリー・ハッチが手掛けた『The Mack』にも、カーティスを彷彿とさせる「Brothers Gonna Work It Out」のような緊迫感あふれるサウンドが隠れている。
70年のモータウンには、やはりノーザン・テイストが弾けるような、永遠にフレッシュな輝きを放つ“幻のアルバム”もある。ソウル・ミュージック特有の瑞々しさがジャケットからも伝わるハーツ・オブ・ストーンの『Stop The World - We Wanna Get On』だ。踊るようなギター・カッティングがグルーヴィーな「If I Could Give You The World」、溌剌とした勢いに満ちた「It’s A Lonesome Road」。ジュニア・ウォーカーの「What Does It Take」やブレンダ・ハロウェイの「You’ve Made Me So Very Happy」といったモータウンの名曲群も、グループの激しさと優しさをひときわ輝かせる若々しい哀愁にあふれている。

最後に70年代後半のディスコ全盛期に発表されたモータウンの名作を追っていこう。まずはハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツの「Don’t Leave Me This Way」のカヴァー・ヒットでもお馴染みのテルマ・ヒューストン。アフター・アワーズの定番「Saturday Night, Sunday Morning」が、Free Soul Undergroundでは、ミック・ジャクソンの「Weekend」などと並ぶ無敵の“週末手拍子クラシック”だ。歯切れよく弾むビート、爽やかで少し切ないメロディー、伸びやかでエモーショナルな女性ヴォーカル。確かに三拍子揃った胸キュン・メロウ・ダンサー。実は彼女は72年にモーウエストへもレコーディングしていて、疾走感あふれるビター・ソウルの「Do Something About It」はファンキーかつフォーキーなフロア・キラーとして知られている。
テンプテイションズを離れてソロとして吹き込みを始めたエディー・ケンドリックスの動向も、目が離せない70年代モータウンのトピックのひとつだろう。グループでは71年にヒットした「Just My Imagination」のファルセットによる名唱を特筆すべきだけれど、ソロ作では至上の哀愁男声ガラージ「Goin’ Up In Smoke」が筆舌に尽くしがたい。テン・シティーにもカヴァーされ、ニューヨークのクラブ・シーンでもゲイ・ピープルを中心に熱狂的に愛されている名作だ。エディー・ケンドリックスの作品では、ディアンジェロにカヴァーされた「Girl You Need A Change Of Mind」やメロウ・ラップのサンプル・ソースとして人気の高い「Intimate Friends」も、ヴィンテージのソウル・ミュージックとしての気高さと品格を備えている。
70年代後半版のシュプリームスか、ハニー・コーンかという佇まいのスリー・オンシズ・オブ・ラヴは、コモドアーズ・プロダクション所属のガール・グループ。ブライアン・ホーランドのプロデュースによる「In The Middle Of The Feeling」は、この時期にしては奇跡的に爽やかな清涼感に満ちた快作。軽やかで奔放なフルートの絡み、ビートの刻みも心地よい。リズム・アレンジを手掛けたのは、ホット・ワックス/インヴィクタスの血を引くマッキンリー・ジャクソンだ。

ヒットチャート的な観点から見れば、コモドアーズやリック・ジェイムスなどもここで紹介するべきなのかもしれないけれど、今回はFree Soulの名を冠したコンピレイション・シリーズということもあるので、またの機会、もしくは別の企画に譲ることにした。個人的にはハイ・イナジーやグロリア・ジョーンズやヴァレリー・シンプソンにも好きな曲はある。バート・バカラック&ハル・デヴィッドの実質的な最終プロデュース作になったステファニー・ミルズの『For The First Time』──ジャケットも含め、チャールズ・ステップニーが制作したミニー・リバートンの名盤『Come To My Garden』へのオマージュだ──からも本当は何か選びたかった。ソフト・ロックの名プロデューサー、ジェリー・ロスがクラウス・オガーマンをアレンジャーに立ててモータウンに吹き込んだイージー・リスニング・アルバムにも、トッド・ラングレン「I Saw The Light」やラスカルズ「How Can I Be Sure」のカヴァーが入っていたはずだ。テンプテイションズやアンディスビューテッド・トゥルースのノーマン・ホイットフィールド制作のサイケデリック・ソウル群も、長尺ゆえに収録を諦めざるを得なかった。そしてサミー・デイヴィス・ジュニアがモータウンに残したサイケ・スリーヴのファンキー・ソウル集『Something For Everyone』は、Free Soul Undergroundでもたびたびスピンされたレコードだけれど、どういうわけかアプルーヴァルが下りないらしい。
でもこのコンピレイションの選曲は僕にとって完璧だ。その音楽は僕の魂のくぼみを押してくれる。何度聴いても楽しかったFree Soul Undergroundの映像がフラッシュバックする。Free Soul 10周年の記念すべき年に、かけがえなく尊い企画に恵まれたことを心から感謝したい。オデッセイが歌っているように、“Our Lives Are Shaped By What We Love”なのだから。


Ultimate Free Soul Motown[DISC 1](waltzanova)

01. What's Going On / Marvin Gaye
マーヴィン・ゲイが1971年にリリースした音楽史に残る不朽の名曲であり、メロウ・グルーヴのルーツにして最高峰。マーヴィンの闊達自在なヴォーカル表現、R&Bにジャズやラテン、クラシックまでのエッセンスが溶けあったデヴィッド・ヴァン・ドゥピットのスムースかつ複雑なアレンジ、人種差別やヴェトナム戦争といったマーヴィンの問題意識が込められたリリックと、色褪せるどころか今なおエヴァーグリーン(スタンダード)としての存在感を放つ。シングル・ヴァージョンは、イントロの会話部分なしでスタートするのが相違点。同名アルバムは全曲がシームレスにつながるモータウン初のコンセプト・アルバムとして、あらゆる意味で時代を画した一枚だ。全米2位(アルバムは全米6位)。

02. For Once In My Life / Stevie Wonder
マーヴィン・ゲイやダイアナ・ロスと並ぶモータウン・レーベルの大スター、スティーヴィー・ワンダー。70年代にはクリエイティヴ・コントロールを手にして、『Music Of My Mind』以降、創造性に満ちたアルバムを連続してリリースし、1976年には2枚組の『Songs In The Key Of Life』が大ヒット、汲めども尽きぬ泉のような才能を見せつけた。本曲は彼がまだセルフ・プロデュース権を持つ以前の1968年の作品で、作曲はロン・ミラー。明日への希望を感じさせる曲調には、60年代ならではの明るさとポジティヴィティーが感じられる。スパイラル・ステアケイスなど、人気カヴァーも数多い。全米2位。

03. More Love / Smokey Robinson & The Miracles
幾多の名曲を生んだ名ソングライターにして名シンガー、ウィリアム・“スモーキー”・ロビンソンと彼のグループ、ミラクルズが1967年に発表したミッド・テンポのナンバーで、抑えられない想いを詩情たっぷりに歌う姿は、後のスモーキーのソロ作品にもつながるような手触りを持っている。デリケートなスモーキーのヴォーカルや、イントロのピアノに代表される落ち着いたアレンジが、誠実でやや内省的な男性像という曲の主人公をイメージさせるが、この曲は彼にとって最もプライヴェイトな愛情を歌ったラヴ・ソングと言われる。全米23位。

04. It's A Shame / The Spinners
のちにトム・ベルのもとでフィラデルフィア・ソウルとしてヒットを飛ばす、デトロイト出身のヴォーカル・グループ、スピナーズ1970年の金字塔。プロデュースとソングライティングはスティーヴィー・ワンダーとシリータ・ライトによるもの。90年代にモニー・ラヴのリメイク「It’s A Shame (My Sister)」やR.ケリー「Summer Bunnies」のリミックスで引用されたイントロのギター・フレーズから、次第に高まりを見せていくヴォーカル・ワークとオーケストレイションに、思わず完璧という言葉が漏れてしまう。そして何と言っても、後半部でのG.C.キャメロンの熱く燃えるシャウトは圧巻の一言。全米14位。

05. Battened Ships / Odyssey
躍動感に満ちたリズムとホーン、ソウルフルなヴォーカルが聴く者の心をがっちりと鷲掴みにする、何度となくフロアを熱狂させた絶対のフリー・ソウル・アンセム。オデッセイは、モータウンが70年代に設立した傍系レーベルであるモーウェストに所属していた7人組の白黒男女混成グループで、ロックやラテンの要素を含む、ソウルにとどまらない音楽性が特徴的。本コンピレイションのディスク1は、前半に70年代の曲が数多く並んでいるが、「What’s Going On」で始まることも含め、選曲者・橋本徹のモータウン観が反映されていると言えるだろう。

06. I Want You Back / The Jackson Five
言わずと知れた70年代モータウンを代表するグループ、ジャクソン・ファイヴ1970年のデビュー曲。全米1位、全英2位。この曲を含むアルバムもチャートのトップを獲得し、ジャクソン・ファイヴ旋風が吹き荒れた。やはり当時11歳のマイケル・ジャクソンのヴォーカルの魅力に尽きるだろう。天真爛漫で愛らしいキャラクターの彼がエモーショナルに溌剌と歌う姿は、ギター・カッティングやベースのフレーズを活かしたポップなサウンドとも相まって、リスナーの耳を引きつける訴求力を有している。

07. One Love In My Lifetime / Diana Ross
60年代にシュプリームスでモータウン・レーベルの顔の一人となった彼女は、70年に独立、女優としても活動の幅を広げていき、世界的に知られるアーティストの仲間入りを果たす。この曲は1976年に発表された『Diana Ross』に収録されていたが、ここでは『Greatest Hits』のヴァージョンが選ばれている。「こみ上げ系」という単語はフリー・ソウルによって一般化(?)したが、この曲はその最右翼と言えるだろう、フェミニンなメロウ・ダンサー。ちなみに邦題は「エデンの園」だった。ダイアナ・ロスは一時期以降の視点からするとメガ・スターのイメージも強いが、あくまで音楽性で曲をチョイスしているのはフリー・ソウルならでは。全米25位。

08. I Wanna Be Where You Are / Marvin Gaye
モータウンを代表するシンガーであり、ニュー・ソウル四天王の一人にも称されるレジェンド、マーヴィン・ゲイが1976年に発表した『I Want You』に収録されているメロウ・グルーヴ・ナンバー。ソングライティングはレオン・ウェアで、もともとはマイケル・ジャクソンのために書かれた作品である(邦題は「ボクはキミのマスコット」という意味不明なタイトルだった・笑)。マイケルやズレーマ、メリサ・マンチェスターなどのヴァージョンもとりわけ素晴らしい、フリー・ソウルのメロウ・サイドを代表する名曲。『Ultimate Free Soul Collection』に収録された、たっぷりと曲の世界に浸れる6分以上のアンエディッテッド・ヴァージョンも存在する(2003年の『I Want You』デラックス・エディションで陽の目を見た)。

09. I'm Ready For Love / Martha Reeves & The Vandellas
マーサ・リーヴス&ザ・ヴァンデラスは、公民権運動にも大きな影響を与えたと言われる「Dancing In The Street」や、その曲と同じくローラ・ニーロがカヴァーした「Jimmy Mack」などで知られる、60年代モータウンを代表する名グループのひとつ。シュプリームスと比較するとR&B色が強く、ゆえに英国のモッズたちにも愛された。これは疾走感と恋愛の切なさもはらんだ幸福感たっぷりの、次曲「You Can’t Hurry Love」と姉妹のような全盛期モータウン・ビートのこみ上げ系No.1の傑作で、1966年のリリース。リズムがドキドキする心臓の鼓動なら、マーサ・リーヴスの真っすぐで小気味いい歌は、訪れた恋へのときめきそのものだ。全米9位。

10. You Can't Hurry Love / Diana Ross & The Supremes
ジェイムス・ジェマーソンによるイントロのベース・ラインが聴こえてきた瞬間に心が躍り出す、ロネッツの「Be My Baby」と並ぶ60年代ガール・グループ・ポップスの燦然と輝く記念碑。独特のモータウン・ビートやタンバリンなど、60年代モータウンのシグネチュアとも言うべきアイディアがそこここにちりばめられている。作詞・作曲はエディー・ホーランド、ブライアン・ホーランド、ラモン・ドジャーのトリオ(H=D=H)。彼らがシュプリームスに提供した曲のうち、全米1位を記録したのは何と7曲。アメリカでもビートルズ旋風が吹き荒れていた66年当時、彼らに唯一対抗できる存在だとされていたのも頷ける結果である。

11. I Will Find A Way / The Jackson Five
ジャーメイン・ジャクソンがヴォーカルを取る、親しみやすさに溢れたヤング・ソウルの名曲。恋したときのワクワクするようなときめきと少しの切なさが入り混じる気持ちを、そのまま形にしたようなメロディーが素晴らしい。いわゆる渋谷系のファンには、小沢健二の「ドアをノックするのは誰だ?」の元曲(?)として知られているかもしれない(歌い出しのフレーズも同じ)。小沢健二は『LIFE』当時、ジャクソン・ファイヴやスライのような、ポップで人懐っこいソウル・ミュージックに大きな影響を受けていたようだ。1971年の4作目『Maybe Tomorrow』からのエントリー。

12. Bless You / Martha Reeves & The Vandellas
60年代の印象が強い彼女たちだが、開放感のあるフックが耳に残る本曲は、モータウン最終作である1972年の『Black Magic』から。作曲を担当したのは前曲同様、「I Want You Back」「ABC」など、ジャクソン・ファイヴに多くの曲を書き下ろしたコーポレイション。匿名的な名を持つ彼らの正体は、ベリー・ゴーディー・ジュニアやフォンス・マイゼル(のちに弟のラリーとプロデュース・チーム、マイゼル・ブラザーズとして知られる)らからなる、ソングライティング/プロデュース・ユニットだった。全米53位。全英では33位を記録している。

13. You'll Never Rock Alone / Tata Vega
「I Want You Back」を思わせるサビのフレーズ、ブレイク後のキッズ・コーラスも含め、好感度抜群のキャッチーなヤング・ソウルの傑作。タタ・ヴェガは、ポリューションやアースクワイアーというグループを経て1976年にソロ・デビュー、モータウンに4枚のアルバムを残している。セッション・シンガーやコーラス・シンガーとして活躍したものの、ソロとしては大きな成功を収められなかった歌手たちにスポットを当てた、2013年公開のドキュメンタリー映画『バックコーラスの歌姫たち』に、ダーレン・ラヴやメリー・クレイトンらとともに出演していたのも記憶に新しい。この曲にはジャクソン家の三男、ジャーメインとのデュエット・ヴァージョンもある(コンピレイション『Pops, We Love You』収録)。アレンジは、「I’ve Got My Second Wind」がフリー・ソウル・クラシックとしても人気のアル・ジョンソンが行っている。

14. Bad Weather / The Supremes
70年代シュプリームスの金字塔のひとつと呼ぶにふさわしい、スティーヴィー・ワンダー作/プロデュースのポップなグルーヴィー&メロウ・ソウル。リード・ヴォーカルはジーン・テレルで、賑やかなパーティー・フィーリングを前面に押し出したサウンドになっている。現在の感覚からするとちょっと信じがたいが、1973年にシングル・リリースされたものの、チャート・アクションは全米87位止まり。レオン・ウェアのプロデュースによるメリサ・マンチェスター版は、グルーヴィー度数もメロウ度数もマックスに仕上がっているフリー・ソウル・クラシック。

15. If I Could Give You The World / Hearts Of Stone
ヤング・ホルト・アンリミテッド「Soulful Strut」にも似たブレイクからの高揚感を感じるリズムに、蒼さを残した伸びやかなヴォーカルとコーラス(「ウ、ウーウー」がたまりませんね)の虜になる、グルーヴィーなヤング・ソウルの傑作。1970年にサブ・レーベルのV.I.P.に残された、彼ら唯一のアルバム『Stop The World - We Wanna Get On』から。ピチカート・ファイヴの「サンキュー」でサンプリングされていたこともあり、90年代の渋谷界隈では、アナログが日本主導でリイシューされるなど大人気のアルバムだった。

16. In The Middle Of The Feeling / Three Ounces Of Love
コモドアーズ・プロダクション所属のガール・グループ、スリー・オンシズ・オブ・ラヴ。彼女たちはシュプリームス、ハニー・コーン的なポジティヴで華やかな魅力が持ち味で、この曲も1978年の作品ながら、リズム・ギターとフルート、間奏のホーンが良いアクセントになっており、60年代的な瑞々しい香りが漂っているのが特色。プロデュースはH=D=Hのブライアン・ホーランドによるもので、ソングライティングも彼と弟のエドワードが行っている。

17. My Eyes Only / Rare Earth
モータウンは1969年にレア・アースと契約を結ぶ際に、同名レーベルを設立、彼らはその後レーベル史上初めて成功した白人グループとなる。サブ・レーベルの乱立やディストリビューションの拡大など、レーベルの多角化を考えると、彼らはある意味で70年代モータウンのあり方を象徴しているとも言えよう。「My Eyes Only」は、ギターとピアノのイントロから高揚していき、曲を引っ張るガッツあるヴォーカル、力強いコーラスやホーンなどがそれをバックアップする、ファンキー・ロック・チューン。1978年の『Grand Slam』のオープニング・ナンバーだった。

18. This Old Heart Of Mine (Is Weak For You) / The Isley Brothers
70年代に3+3体制で数々のヒット作を残した伝説的ソウル・グループが、モータウン時代に飛ばした1966年のスマッシュ・ヒット。当時はロナルド、オーケリー、ルドルフの3兄弟によるヴォーカル・グループだった。60年代のH=D=Hプロデュースらしい、前に出たリズムにヴァイブやストリングス、ブラスを配したサウンド・メイキング。そこにロナルドの唯一無二の声が乗ることで、この曲にエヴァーグリーンとしての命が吹き込まれた。モータウン・ナンバーの持つ、ハッピーでポジティヴなヴァイブレイション、その中に潜む胸を締めつけるような青春の切なさは、フリー・ソウルの世界観の一側面を担っていると思う。全米12位。

19. Can't Take My Eyes Off You / Diana Ross & The Supremes with The Temptations
フォー・シーズンズのフランキー・ヴァリの決定的名唱や、ボーイズ・タウン・ギャングのディスコ・ヒットで知名度抜群のボブ・クリュー作のラヴ・ソングを、モータウンを代表する二大グループが歌う。ここでは両者ともに甘酸っぱい旋律をスムースに歌いこなしているが、中でもエディー・ケンドリックスのシグネチュアである、とろけるようなファルセットはさすが。落ち着いたホーンや流麗なストリングスの音色が大人のムードを感じさせる。1968年の企画盤『Together』から。

20. A Place In The Sun / Stevie Wonder
スティーヴィーは、1963年に“リトル・スティーヴィー・ワンダー”名義で出した「Fingertips, Pt.2」が全米1位となり、一躍時代の寵児となる。1965年には、はちきれそうなエネルギー爆発の「Uptight (Everything's Alright)」がヒット、同名アルバムに収録されたボブ・ディランのカヴァー「Blowin’ In The Wind」に続いてリリースされたのがこの曲。レイ・チャールズ的なサウンド・スタイルを聴かせる。アルバム『Down To The Earth』では「Mr. Tambourine Man」もカヴァーするなど、レーベルの意図によって当時の彼はディランへの接近があるという印象も(ハーモニカのプレイ・スタイルはまったく異なるが・笑)。60年代はさまざまなジャンルが細分化されておらず、同列に聴かれたラジオ・ミュージックの時代だったということを痛感させられる。全米9位。

21. I Love The Nearness Of You / Smokey Robinson
ソロ転向以降のスモーキー・ロビンソンは、時流に過度に迎合することなく活動を続けていくが、1975年にリリースした『A Quiet Storm』のタイトル曲は、甘美でセンシティヴなソウル・ミュージック。そうしたテイストの曲が流れるラジオ・プログラムの総称としてジャンル化するなど、その影響は決して小さくない。軽快で心地よいサウンドがアーバン・フィーリングを演出するスティーヴィー・ワンダー作のこの曲は、1979年の『Where There's Smoke...』中のメロウなシティー・ソウル。同アルバムには、90年代にディアンジェロがよりセクシャルなムードでカヴァーしたスウィート・ソウル「Cruisin’」も収録。デヴィッド・T.ウォーカーやジェイムス・ギャドソンなど、名手の妙技も味わえる。

22. I Love Every Little Thing About You / Syreeta
シリータ・ライトは70年代初頭、公私ともにスティーヴィー・ワンダーのパートナーだった女性SSW。二人の結婚生活は2年足らずという短いものであったが、スティーヴィーの1971年作『Where I’m Coming From』では全曲を共作するなど、両者は深い絆で結ばれていた。スティーヴィーは彼女のアルバムを2枚プロデュースしているが、本曲は浜辺を歩くシリータの姿も印象的なファーストのオープニング・ナンバーで、作曲も彼自身によるもの。当時スティーヴィーが多用していた、アープ・シンセサイザーの音色が特徴的な一曲で、リンダ・ルイスやミニー・リパートンにも通じる、キュートでラヴリーな彼女の個性がよく発揮されている。

23. Love The One You're With / The Supremes & Four Tops
フリー・ソウル・クラシックとして、Tokyo No.1 Soul Setにもサンプリングされた、アイズレー・ブラザーズのフォーキー&グルーヴィーなヴァージョンが人気版・決定版としてよく知られている、スティーヴン・スティルス作の高揚感みなぎる名曲。ホーンが加わって以降の後半のダイナミックな盛り上がりは迫力満点で、サビのゴスペル的なコール&レスポンスにはぞくぞくするような興奮を覚えずにはいられない。1971年のシュプリームスとフォー・トップスのコラボ・アルバム『Dynamite』に収録。

24. All The Way Around / Marvin Gaye
マーヴィン・ゲイ1976年の名盤『I Want You』は、もともとレオン・ウェアのソロ作として制作されていたが、それをマーヴィンがいたく気に入ったためにレオンから譲り受けた、という経緯がある。そのため、すべての曲はレオンのペンによる(共作を含む)もので、稀代のソウル・スタイリスト同士の邂逅は、マーヴィン史上最もエロティシズムを感じさせるマスターピースとして結実した。メイズのフランキー・ビヴァリー、マックスウェルやディアンジェロを始めとして、このアルバムが後世に与えた影響は計り知れない。華麗なオーケストレイションとマーヴィンの多重コーラスに耳を傾けていると、何度でもリピートしたくなってしまう。

25. Stay / Severin Browne
ゆったりとしたグルーヴにAOR的なまろやかさを感じさせるコード感、そして優しげなヴォーカルが耳をくすぐる、白人SSWフリー・ソウルの最高峰。セヴリン・ブラウンはジャクソン・ブラウンの実弟で、モータウンに2枚のアルバムを残しているが、この曲は1973年のファースト・アルバムに収録。ネッド・ドヒニーやジェイムス・テイラー、ケニー・ランキンなどに通じる、フォークにR&Bやジャズのエッセンスをまぶしたような音楽性が特徴的だ。


Ultimate Free Soul Motown[DISC 2](waltzanova)

01. Saturday Night, Sunday Morning / Thelma Houston
パーティーに集う者の気持ちに訴えかけるタイトルが全てを物語る、土曜の夜のアフターアワーズ・クラシック。ヴァースからこみ上げるメロディーを経ての、大盛り上がり必至のサビへの展開、きらめきの中に流れる清涼感と、音楽の魔法に包まれた1979年の大人気曲。テルマ・ヒューストンは1976年に「Don't Leave Me This Way」のヒットを放ち、ディスコ・シンガーとしての地位を確立した。この曲のプロデューサーはジャクソン・ファイヴなどを手がけたハル・デイヴィス。全米34位。

02. It's Great To Be Here / The Jackson Five
マイケル・ジャクソンのキャリアのスタートであり、「I Want You Back」「ABC」を始めとする音楽史に残る数々の名曲を生み出した、70年代モータウンを代表するファミリー・グループであるジャクソン・ファイヴは、フリー・ソウル・シーンでも絶大な人気を誇る。この曲はヒップホップ~レア・グルーヴ・ファンの聖典と言われたブートレグ・コンピレイション『Ultimate Breaks & Beats』にも収録され、アフリカ・バンバータなど数多くのサンプリング・ソースとしても知名度が高いが、歌ものとしても抜群の高揚感あふれる胸キュン・キッズ・ソウル。1971年の名作アルバム『Maybe Tomorrow』から。

03. Mercy Mercy Me (The Ecology) / Marvin Gaye
時事的なテーマが多く取り上げられた『What’s Going On』だが、ここでのサブジェクトは副題にもあるように、当時大きな問題となっていた公害などの環境問題。だが、マーヴィンは声高に怒りを叫ぶのではなく、穏やかな口調で神の慈悲を求める。「What’s Going On」の兄弟のような曲調だが、よりメロウネスが際立っている。中盤のサックス・ソロも絶妙に効果的だ。スティーヴィー・ワンダーは、進歩的で創造意欲に満ちた『What’s GoingOn』の成功が、自身のセルフ・プロデュースを決意させるきっかけになったと語っている。全米4位。

04. Journey Into You / Leon Ware
“メロウ大王”の異名を取るシンガー/コンポーザー/プロデューサーのレオン・ウェアが1976年に発表した『Musical Massage』からの、光沢感のあるシルキー・ソウル。このアルバムは、のちに『I Want You』となるトラックをマーヴィン・ゲイに譲った代わりに制作されたといういきさつもあり、裏『I Want You』とも呼ぶべき名作だ(CDのボーナス・トラックとしてレオン版「I Wanna Be Where You Are」も聴ける)。軽快なストリングスとリズムに、ひそやかな恋人たちの秘めごとを思わせるレオンのヴォーカルは、まさに音楽的マッサージ。

05. I Don't Know / Syreeta
前曲に引き続き、レオン・ウェアの美学が冴え渡る珠玉の一曲。彼がほぼすべての曲のプロデュースを行った1977年のシリータ3枚目のアルバム『One To One』に収録されていた、官能的で陶酔的なフィールにとろける、メロウ・グルーヴの理想形。ピアノやホーン、ストリングスなどが織りなす、媚薬のように中毒性を備えたアンサンブルはデイヴ・ブラムバーグの手によるもの。やはりレオン作曲のミニー・リパートン「Inside My Love」を思い起こさせる、伸びやかなヴォーカルにも耳を奪われる。

06. Darling Dear / The Jackson Five
こみ上げるような切なさを感じさせる曲調と、音数多めのベース・ラインが存在感を見せる、『Third Album』からのメロウ・トラック。アレンジはデヴィッド・ヴァン・ドゥピットが担当しており、曲はベリー・ゴーディーの弟、ホーゲイとロバートのペンによる。彼らはそれぞれ、スティーヴィー・ワンダーやシュプリームス、マーヴィン・ゲイなどに曲を書いている。モータウンは毎週、金曜日の朝に会議を開き、シングル曲などを決めるコンペティションを行っていたという。ある意味では民主的なやり方だが、レーベルはベリー・ゴーディーによって独裁的に運営されていたという落差が面白い。

07. Up The Ladder To The Roof / The Supremes
ダイアナ・ロス脱退後、新たにジーン・テレルを迎え入れて1970年に発表された『Right On』のオープニング・ナンバー。彼女たちの魅力のひとつである可憐さが前面に出た作品で、ストリングスなどが清々しい雰囲気を生み出している。一方でリズムや音像は、ジャクソン・ファイヴなどに代表されるような70年代的な感覚のものへと変化しているのが興味深い。作曲/プロデュースは、この時期のシュプリームスを支えた重要人物、フランク・ウィルソン。全米10位。

08. Dancing In The Moonlight / Wolfe
60年代後半からのモータウンは、映画制作を行ったりサブ・レーベルを設立したりと、より手広くビジネスを展開していくが、このウルフも先述のレア・アース所属の白人アーティスト。キング・ハーヴェストの名曲カヴァーは、ファンキー・ロック的なフィーリングとラテン・リズムが見事に溶け合っている。モータウンのサブ・レーベルには、従来の価値観では評価されなかったような、ハイブリッドな音楽性を持ったアーティストも多い。1972年に吹き込まれた彼らの唯一のアルバムから。シングル・カットもされている。

09. Live It Up / Jermaine Jackson
ジャクソン・ファイヴにおいて、マイケルが伸びやかで天真爛漫な歌声を聴かせる一方で、大人担当として女性を中心に人気を博していたのがジャーメイン。ギター・カッティングに文句なしに心を掴まれ、ブルー・アイド・ソウル的なメロディー・ライン(ときにポール・ウェラーを思わせる部分も)を瑞々しいヴォーカルが歌い上げるこのグルーヴィー・チューンは、彼の初ソロ作『Jermaine』に収められていた。ジャーメインは1973年にレーベルの大先輩、マーヴィン・ゲイの影を追うかのようにベリー・ゴーディーの長女ヘイゼルと結婚し、J5がモータウンを離れる際も一人だけ残留。兄弟たちと袂を分かつことになったが、結局は決定的なサクセスを得ることはできず、一族の中で微妙な立場に置かれることになってしまった。

10. We'll Have It Made / The Spinners
ベースとユニゾンして始まるホンキー・トンク風のピアノのフレーズがキャッチーな、リスナーを笑顔にする力を持ったグルーヴィー・ナンバー。作曲は「It’s A Shame」と同じくスティーヴィー・ワンダーとシリータ・ライト。収録アルバム『The Best Of The Spinners』のジャケットには車のホイールが写っているのだが、彼らのグループ名とモータウンがデトロイトを本拠としていた(72年にはLAにオフィスを移しているが)ことにかけているのだろうか。全米89位。

11. Running Back And Forth / Edwin Starr
歌い出しから引き込まれるエドウィン・スターの力強いヴォーカル、そこに絡むコーラスが青さと少しの切なさを醸し出す若々しいノーザン・スタイルの名作。イントロのサックスも都会的な印象を生むのに一役買っており、熱っぽさと洗練のバランスが素晴らしいヤング・ソウル。エドウィン・スターは、ノーマン・ホイットフィールド作の反戦歌「War」(邦題は「黒い戦争」)の大ヒットでファンキーなソウルマンとして認知されていたが、その「War」と同じ1970年の『War And Peace』に潜んでいたこの曲に光を当てたことが、いかにもフリー・ソウルらしい。

12. In My Lonely Room / Martha Reeves & The Vandellas
胸を疼かせるイントロのフレーズとビートが聴く者の心の扉をノックするような、マーサ・リーヴス&ザ・ヴァンデラス1964年の絶品パーティー・ナンバー。ハンドクラップとご機嫌なサックス・ソロも、華やかなムードを作り出している。ドリーミーな曲調、マーサたちのヴォーカルも最高と言う以外ない。当初はシングルのみのリリースで、1966年の『Greatest Hits』に収録されている。作詞・作曲はH=D=Hの黄金チーム。全米44位。

13. When The Lovelight Starts Shining Through His Eyes /Diana Ross & The Supremes
デビュー後しばらくはヒットに恵まれず、「No Hit Supreme」とあだ名されていた彼女たちだが、H=D=Hが提供した本曲が全米23位のスマッシュ・ヒットとなり、一気にブレイクへと向かう。セカンド・ライン・リズムが強調された、自然と身体が動き出してしまうポップなダンス・ナンバー。H=D=Hは、ダイアナ・ロスの声に合わせて低音域を活かした曲を書くことで、その個性を開花させた。モッド人気も抜群の一曲。邦題は「恋のキラキラ星」。

14. Do I Love You (Indeed I Do) / Chris Clark
クリス・クラークは、白人女性としてはモータウンと初のサインを交わしたアーティスト。ベリー・ゴーディーの信頼が厚く、ダイアナ・ロスの主演映画『ビリー・ホリデイ物語/奇妙な果実』の脚本の共同執筆を行ったり、レーベルの開発担当役員になったりするなどしている。演奏とヴォーカルが一体感を見せるフレッシュなこのノーザン・ソウル・ナンバーは、1966年にブレンダ・ハロウェイとのカップリングで出された7インチに収録。同じトラックを使った作曲者のフランク・ウィルソン自身のヴァージョンも、マニア垂涎のレア音源だった。

15. If You Ever Get Your Hands On Love / Gladys Knight & The Pips
グラディス・ナイトはアトランタ出身、現在まで活動を続ける女性R&Bアーティストの重鎮。兄や従兄と結成したグループ、グラディス・ナイト&ザ・ピップスで数々のヒットを放った。作曲陣にはジョニー・ブリストルやハーヴィー・フークワが名を連ねる、突き抜けるような勢いに満ちたノーザン・ダンサー。モータウン・サウンドは本国のみならず、60年代イギリスのモッドたちにも愛されたが、この曲などはいかにも彼ら好みという感じだ。その感じは、例えばモッズを題材とした1979年の映画『さらば青春の光』の中でもうかがえる。

16. The Tears Of A Clown / Smokey Robinson & The Miracles
1967年の発売から3年後、イギリスで再発されて火がつき大ヒット、追って全米でも1位を獲得した。ピエロの所作を思わせるキャッチーなイントロからの起伏に富んだ展開、サビのフレーズなど、スモーキーと共作者であるスティーヴィー・ワンダーのメロディー・メイカーとしての面目躍如な一曲で、サウンドにはロックやスカ的なニュアンスも感じられる。モータウン・ビートのイメージの強い60年代のモータウンだが、その時代に合わせて流行のサウンドを取り入れており、そのあたりに着眼して聴くのも面白い。

17. The Boss / Diana Ross
胸を熱くするうねるディスコ・ビートに、ギターやピアノ、ホーンとストリングスが週末気分を高め、ダイアナのヴォーカルが恋する気持ちを歌う、ソフィスティケイトされたダンス・ナンバー。プロデュースは70年代の彼女に多くの作品を提供した名コンビ、ニック・アシュフォードとヴァレリー・シンプソン、アレンジは名匠ジョン・デイヴィスによる。シグマ・スタジオで録音された、1979年の同名アルバムに収録。全米19位。

18. Since I Had You / Marvin Gaye
1976年のアルバム『I Want You』は、前作『Let’s Get It On』同様に、17歳年下の恋人ジャニス・ハンターに捧げられた、官能に彩られた作品だった。マーヴィン・ゲイは生涯を通じてパーソナルな感情を創作のひとつの原動力としたが、それが人の心を揺さぶる音楽へと昇華されたのは、彼のアーティストとしての能力ゆえだろう。本曲も、恋人たちの時間を真空パックしたようなアフター・ミッドナイトのセンシュアル・ソウル(邦題は「恋人たちの神話」というのも、担当者がそれを感じたからなのだろう)。西海岸のヒップホップ・グループ、ファーサイドの「Otha Fish」リミックスでイントロ部分がサンプルされ、真夏のメロウ・マッドネスが演出されていたのも印象深い。

19. Lady / Puzzle
同時代のSSW作品にも通じるムードを持った、隠れた名曲。街角を見つめているようなセンティメントが胸に沁みる。パズルは、シカゴと共通するような個性を持った6人編成の白人バンドで、モータウンに2枚のアルバムを吹き込んでおり、本曲は1973年リリースのファースト・アルバムからのエントリー。ヴォーカルを取るドラムのジョン・リヴィグニは、のちにジョン・ヴァレンティ名義でソロ・アルバムをリリース。フリー・ソウル・クラシックとして知られる大人気曲「Why Don’t We Fall In Love」を始め、スティーヴィーへの憧憬が感じられる内容で、モータウンとの接点があったのも自然に思える。

20. If You Really Love Me / Stevie Wonder
緩急をつけた展開に若々しさを、サビにはラヴリーさを感じさせるスウィートなグルーヴィー・ソウル。ピチカート・ファイヴの「悲しい歌」に、ホーン・フレーズが引用されていたのも渋谷系世代には懐かしい話だろうか。リリースは1971年。当時のスティーヴィーはシリータ・ライトを公私ともに伴侶としており、彼女によるコーラスも睦まじい。収録アルバム『Where I’m Coming From』(邦題『青春の軌跡』)も全曲シリータとの共作。本作は当時のスティーヴィーにとって、言わば愛の結晶だったのだろう。全米8位。

21. All Your Love / Brenda Holloway
ブレンダ・ハロウェイは、60年代モータウンでは異色の西海岸の実力派女性シンガーで、同レーベルに2枚のアルバムを残している。フランク・ウィルソン作の胸をくすぐられるポップ・ナンバーで、ちょっとハスキーに恋心を表現するヴォーカルも魅力的。サウンド的には1964年当時にほぼ完成されていた、生き生きとしたビートにコーラス隊という、一般的に知られるモータウン・サウンドだが、これらを主に作り出していたのはファンク・ブラザーズという、ほぼ専属のバンド/ミュージシャンたち。彼らについての詳細が明らかになったのは、2002年のドキュメンタリー映画『永遠のモータウン』においてだった。

22. Heaven Must Have Sent You / The Elgins
エルジンズは、男性3人と女性1人というちょっと珍しい編成のグループで、V.I.P.レーベルにアルバム1枚を残すのみ。しかし、「Heaven Must Have Sent You」は全米50位、R&Bでは9位と、ちょっとしたヒットになっており、ソウル愛好家の間ではそれなりに知られた存在だ。サンドラ・エドワーズのヴォーカルと、男性3人のハイトーンのコーラスに、つい笑顔がこぼれそうになる。70年代には、ダンサブルなボニー・ポインターによるリメイク版も、ディスコ・ヒットした。

23. Ain't No Mountain High Enough / Marvin Gaye & Tammi Terrell
モータウン・レーベルを代表するアーティストのひとり、マーヴィン・ゲイは60年代に3人の女性歌手とのデュエット作を録音しているが、タミー・テレルとのそれが最も成功し、かつ音楽的成果も高かった。「君に会いに行くのを妨げるほど、高すぎる山なんかないし、深すぎる谷も、広すぎる川もない」という歌詞も忘れがたい、デュエット・ソングの最高峰のひとつ。心洗われる思いがする二人の息の合ったコンビネイションには、確かに愛の真実の形が刻印されている。ソングライティングは「Your Precious Love」なども提供した名コンビ、アシュフォード&シンプソン。全米19位。

24. More Today Than Yesterday / Kiki Dee
オリジナルはソフト・ロック・グループ、スパイラル・ステアケイスによるサンシャイン・ポップだが、ここでも心弾むようなアレンジに乗って、明るい希望が歌われる。ダスティー・スプリングフィールドを彷彿させるようなヴォーカルを聴かせるのは英国人シンガー、キキ・ディー。彼女はモータウン初の外国人アーティストだったが、1970年の『Great Expectations』は期待通りのヒットとはならなかった。のちにエルトン・ジョンのロケット・レーベルに所属、1976年にエルトンとのデュエット「Don’t Go Breaking My Heart」(邦題「恋のデュエット」)がヒットしたことで広く名が知られるようになった。

25. Baby Love / Diana Ross & The Supremes
「Where Did Our Love Go」に続く、シュプリームス2曲目の全米No.1ヒット。もちろんソングライティングとプロデュースはH=D=Hが担当し、彼女たちのチャーミングな魅力が見事に引き出されたスウィートなポップ・チューン。この曲に代表されるように、60年代モータウンのヒット・ナンバーは、青春の甘酸っぱさを詰め込んだようなフレッシュさと輝きが宿っている名曲のオン・パレードだが、“The Sound Of Young America”というレーベルのキャッチフレーズに象徴されるように、それはアメリカという国のゴールデン・エイジとも重なっていた。


Ultimate Free Soul Motown[DISC 3](waltzanova)

01. At Last / Stevie Wonder
冒頭のドラム・ブレイクから突き抜けるような高揚感が押し寄せる、究極のグルーヴィー・ナンバー。フリー・ソウルを体現するかのような、スティーヴィーの歌いぶりとハーモニカも最高だ。小西康陽は、『We Love Free Soul 2』(2006年)ライナー・ブックレットで「60s Mod」をテーマに、朝方近くほろ酔いでDJするというシチュエイションを想定して10曲をリストアップし、さらに何曲かを取り上げたあと、「それでも、あと二曲、などと言って迷惑がられながらもきっとStevie Wonderの“At Last”、The Isley Brothersの“If You Were There”をかける」と書いている。スティーヴィーの60年代最終作となる『My Cherie Amour』に収められていた。

02. The Day Will Come Between Sunday And Monday / Kiki Dee
前述した英国の女性シンガーが歌う、陽性のエネルギーにあふれたノーザン・ビートのポップ・ソウル。ソウルフルなヴォーカルは、ペトゥラ・クラークやダスティー・スプリングフィールド、ルルなど60年代ブリティッシュ・シンガーの系譜と言える。アルバムでは、ダスティーの「You Don't Have To Say You Love Me」(邦題「この胸のときめきを」)や、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの「Ain't Nothing Like The Real Thing」をチョイスしているが、その中でも白眉と言える傑作だろう。

03. He's My Sunny Boy / Diana Ross & The Supremes
コンガの音にキュートなスキャットが重なり、そこにベースとホーンが切り込んでくる冒頭の数十秒は、何度聴いても震えが来るほど素晴らしい。音楽を聴く歓びとは、こういう瞬間にこそあるのだろう。1968年の『Love Child』に収められていた非シングル曲だが、フリー・ソウル~渋谷系という文脈では、小山田圭吾がプロデュースしたカヒミ・カリィの「Candy Man」の下敷きになったことに象徴されるように、シュプリームスの中で一番のグルーヴィー・ヤング・ソウル。コンポーザーはスモーキー・ロビンソンだが、この当時H=D=Hとレーベルは係争中だったため、彼らの曲が使えなかったという裏話も。

04. I Can Only Give You Love / The Jackson Five
彼らの5枚目のオリジナル・アルバム『Lookin' Through The Windows』(1972年)のラストを飾っていた、マイケルとジャーメインの掛け合いも楽しい、ハッピーなヴァイブレイションが横溢するヤング・ソウル。曲を書いたのは、当時のモータウンで期待のライター/アーティストだったウィリー・ハッチ。『Ultimate Free Soul Motown』にジャクソン・ファイヴの曲は6曲エントリーしているが、ヒット・ナンバーかそうでないかといった視点ではなく、あくまで曲のポテンシャルというフラットな物差しが選曲の基準になっている。それが90年代以降の「歴史を横に切る視点」のひとつの形であるのは言うまでもない。

05. Early Morning Love / The Supremes
モータウン成功の立役者であるH=D=Hは、68年に金銭上のトラブルからモータウンを離れ、新たにホット・ワックス/インヴィクタス・レーベルを立ち上げる。LAに拠点を移したモータウンに対し、地元のデトロイトで音楽制作を行った彼らのサウンドは、「モータウン以上にモータウンらしい」と言われた。タイトル通りに朝の光に包まれるような幸福感を運んでくれるこの曲も、H=D=Hの個性がよく発揮された、60年代モータウンの美点が70年代に生かされた仕上がり。1975年のセルフ・タイトルド・アルバムからの一曲で、リード・ヴォーカルを務めるのはマリー・ウィルソン。

06. No Matter Where / G.C. Cameron
「It’s A Shame」でも熱い喉を聴かせてくれていたスピナーズのリード・シンガー、G.C.キャメロンが、スピナーズ脱退後にモーウェストからソロ名義で発表した1973年のシングル。ストリングスとフルート、女声コーラスが緊張感を生み出しているバック・トラックに、彼のファルセット・ヴォーカルが絡むフォーキー・ファンク・チューンで、歌い回しも含めて同時代のカーティス・メイフィールドが憑依したかのような傑作である。

07. I Want You Back / Martha Reeves & The Vandellas
このジャクソン・ファイヴ・カヴァーは、1972年のアルバム『Black Magic』に収録。切れ味の良いホーンのサウンド、マーサのエネルギッシュな歌など、原曲よりも勢いと迫力を感じさせるダンサブルなアレンジがフロアを熱くする。ファンク~ロック的なイディオムも含んだ、テンション高いグルーヴに反応せずにはいられない快演だ。「Tear It On Down」(全米103位)のフリップサイドだった。

08. Do Something About It / Thelma Houston
ファズの効いたギター・サウンドにJB風のホーンが飛び交う、ワイルドなファンキー・グルーヴ。バックに煽られるように、テルマ・ヒューストンの歌もホットにシャウトしている。前曲に続き70年代的なテイストが導入されたサウンド・プロダクションだ。彼女はABC/ダンヒルでMOR的なサウンドのアルバムを1枚リリースしたのちにモーウェストと契約、1972年のアルバムからの一曲。その後モータウンでは、ディスコ・テイストの4枚のアルバムを制作している。

09. Goin' Up In Smoke / Eddie Kendricks
テンプテイションズのリード・ヴォーカリストを務めていたエディー・ケンドリックスが、1976年に放ったガラージ・クラシックとしても知られる傑作。力強いホーンに導かれるイントロに続いて、ファルセットとストリングスが華麗な世界を演出する。同名のアルバムはフィラデルフィア録音で、サルソウル・オーケストラで知られるヴィンセント・モンタナらのミュージシャンが参加している。テン・シティーのカヴァーで、オリジナルを知らないハウス・ジェネレイションにも広く知られるようになった。

10. Give Me Your Love / Sisters Love
オリジナルはカーティス・メイフィールドが1972年に手がけたサントラ『Superfly』に収録されていた曲で、バーバラ・メイソンなどのカヴァーもよく知られているが、これは70年代前半にモーウェストに所属していたガール・グループ、シスターズ・ラヴによる、クラブ・シーンで決定的な人気を誇るヴァージョン。彼女たちはレイ・チャールズのコーラス隊、レイレッツを母体として生まれたグループとされるが、結局コマーシャルな成功を得ることはなかった。2010年には幻のアルバム『With Love』が、40年近い時を越えて発掘されている。

11. I Wanna Be Where You Are (After The Dance) / Marvin Gaye
2000年代になってユニバーサル・グループは、アウトテイクやシングル・ヴァージョンなどのレア音源を本編と合わせて2枚組でリリースする、デラックス・エディションという形態でのCD再発を多数行うようになり、現在も続く人気シリーズとなっている。マーヴィン・ゲイの作品では『What’s Going On』『Let’s Get It On』に続き、『I Want You』が2003年にリリースされた。収録曲のミックスやヴォーカルのテイク違い、未発表曲が大量に収められており、同作を愛するファンなら必ずもう一枚の愛聴盤となること請け合いだ。ここでは、ディスク1に収められていた曲の歌詞違いヴァージョンを。言わば夢の組み合わせ。スタジオでマーヴィンが作品を作り上げていく過程を垣間見ているような気分になる。

12. Never Can Say Goodbye / The Jackson Five
デビュー時以来、明るいポップネスを売り物としていた彼らが、「I’ll Be There」に続く新生面を開いた曲としての評価が高い1971年の名曲。「I’ll Be There」と比較すると、ソウル・ミュージック的なしなやかさややるせなさがしっかり含まれているのが特徴で、特に恋人との別れを前にした主人公の心情を、卓越したヴォーカル・ワークで表現したマイケルの歌唱には心を揺さぶられる。作曲はクリフトン・デイヴィス、ジャクソン・ファイヴの大人路線を進言したハル・デイヴィスのプロデュースも冴えている。全米2位。

13. The Family Song / Smokey Robinson
前年にミラクルズを離れたスモーキーが1973年にリリースしたファースト・ソロ・アルバム『Smokey』に入っていた、優しげな表情を見せるフリー・ソウル人気のミディアム・チューン。彼のトレードマークであるファルセットが、曲のムードを決定づけている。ウィリアム・“スモーキー”・ロビンソンはベリー・ゴーディー・ジュニアの片腕とも言える人物で、10代の頃にゴーディーとの親交は始まっている。ゴーディーにレーベル設立を持ちかけたのも彼。契約第一号アーティストはミラクルズだった。その後、長くレーベルの副社長を務めるなど、モータウンとの関わりは切っても切れないものと言える。

14. Harmour Love / Syreeta
童謡のようなシンプルなメロディーが可愛らしい、光が射し込んでくるようなハートウォームなナンバー。ソングライティングとプロデュースは、彼女の最大の理解者であるスティーヴィー・ワンダー。1977年のアルバム『One To One』で、唯一彼が手がけた曲である。シリータは似た資質の持ち主であるパトリース・ラッシェンやシェリー・ブラウン(どちらもフリー・ソウルでは人気のアーティスト)とも関わりが深く、彼女たちのアルバムにも参加している。2004年に57歳の若さで惜しくも亡くなった。

15. My Cherie Amour / Stevie Wonder
60年代のスティーヴィーを代表するミディアム・メロウ・ナンバー。異国のカフェに佇んでいるような気分になる、どこかメランコリックな懐かしさとエキゾティックさをたたえた曲調は、ビートルズ・ナンバーならポール・マッカートニー作の「Michelle」と相通じるものがあるように思う。全米4位。イタリア語ヴァージョンも存在する(モータウン・ヒッツの各国語ヴァージョンを集めた『Motown Around The World: The Classic Singles』というコンピレイションで聴ける)。

16. Ain't Nothing Like The Real Thing / Marvin Gaye & Tammi Terrell
二人の仲睦まじいハーモニーが心を温めてくれる、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルの4枚目のシングル。マーヴィンは、タミーとの間に単なる仕事相手という関係を越えた特別なリレーションシップを感じ、ステージ上では恋人同士のような気持ちでいたというが、1967年にその彼女がコンサート中にマーヴィンの腕の中に倒れこむという事件が起きる。彼女は脳腫瘍と診断され、1970年に24歳の若さで他界。大きな精神的ショックを受けたマーヴィンは、しばらく沈黙してしまう。そんな闇の淵から抜け出して生み出されたのが、かの大傑作『What’s Going On』だった。全米8位。

17. What Does It Take (To Win Your Love) / Jr. Walker & The All Stars
ジュニア・ウォーカー&ジ・オール・スターズは、ヴォーカル/テナー・サックスがフロントマンの、ジャンプやジャイヴなど黒人音楽の伝統にルーツを持つグループ。「Shotgun」の大ヒットのためかファンキーで泥臭いイメージで捉えられがちだが、ここではドゥー・ワップやR&Bのフィーリングを感じさせつつも、都会的洗練を宿したサウンドを響かせている。そもそも、モータウンは白人層もマーケットとして開拓して大きな支持を受けたレーベルであり、それは70年代へと続くブラック・ミュージックの都市化~洗練化の流れと呼応している。全米4位。

18. You've Made Me So Very Happy / Brenda Holloway
ブラッド・スウェット&ティアーズやハーツ・オブ・ストーン、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズらのカヴァーでも知られる、スケールの大きなメロディーとソウルフルな歌が胸に迫るラヴ・ソング。モータウン・スタンダードのひとつで、イントロはピチカート・ファイヴが引用した。この曲が発表された1967年はモータウン転換期の直前に当たり、デトロイトの自動車産業の好況によって興隆したレーベルは、70年代にはLAへ移り、デトロイトの街はマーヴィン・ゲイの「Inner City Blues」よろしく、不況に襲われて荒廃していく。全米39位。

19. The Tracks Of My Tears / Smokey Robinson & The Miracles
スモーキー・ロビンソンはシンガー/ソングライターとしてはもちろん、それ以上にリリシストとしての評価も高く、ボブ・ディランやジョン・レノンといったロック・アーティストにも多大な影響を与えた存在。頬に涙の跡がつたう、という切ない男心を描いたこの曲は、スモーキーのキャリアのみならず、ソウル・ミュージックにおいても屈指の名バラード。ビートルズの「In My Life」やゾンビーズの「Time Of The Season」(「ふたりのシーズン」)は、この曲にインスパイアされて生まれたという。1965年作。本曲やスウィート・ソウルの原点と言われる「Ooo Baby Baby」を含むアルバム『Going To A Go-Go』も、彼らの名盤として名高い。全米16位。

20. Girl You Need A Change Of Mind / Eddie Kendricks
テンプテイションズの一員だったエディー・ケンドリックスが、ソロ転向後にリリースした2作目に当たる、1972年の『People... Hold On』に収められていたファンク・ソウル・チューン。時代を反映してニュー・ソウル的な意匠が施されており、アルバム・ヴァージョンは8分近くに及ぶが、乾いたリズムに絡むエディーのファルセットも好調だ。ディアンジェロによるビート感をより際立たせたリメイク版は、彼らしい濃密なファンクネスが充満した素晴らしい出来映えになっている。全米89位。

21. Easin' In / Edwin Starr
ファットなリズムがレア・グルーヴ~ヒップホップ的な感触を持つ密室的なインナー・ファンク・ナンバー。1974年の『Hell Up In Harlem』という映画のサントラに収録。同作は『黒いジャガー』や『スーパーフライ』など、70年代前半に流行したブラックスプロイテイション・ムーヴィーのひとつ。作曲とアレンジメントにフォンス・マイゼルとフレディー・ペレンの名がクレジットされており、90年代以降の感覚がフィットするのも納得の先進的な音作りだ。

22. Our Lives Are Shaped By What We Love / Odyssey
テリー・キャリアーやジャクソン・シスターズなど、フリー・ソウル・ムーヴメントや90年代のDJカルチャーによって、一気に定番化したアーティストやアルバムは数多いが、オデッセイもそのひとつ。本曲は「Battened Ships」とは異なる相貌の、シンプルな中に力強さを有した彼らのフォーキーなナンバー。ヴィブラフォンのソロやギター・フレーズなどがセンスを感じさせる。「私たちの生活は、私たちが愛するものによって形作られている」という曲タイトルには、フリー・ソウル~サバービア的な世界観と強く共振するものがある。

23. Everlasting Love / David Ruffin
オリジナルはロバート・ナイトだが、イギリスのサイケ・ロック・グループ、ラヴ・アフェアーのヴァージョンが大ヒット。こちらもゴージャスなフロア爆発のアンセムだが、ここではテンプス脱退後のデヴィッド・ラフィンが1969年に放ったソロ・デビュー作『My Whole World Ended』から。粗削りな中にもダンディズムを滲ませるヴォーカルは、確固たる存在感を主張している。アルバムのプロデュース陣にはハーヴィー・フークワやジョニー・ブリストル、ポール・ライザーらの名が。

24. Until You Came Along / Caroline Crawford
キャロライン・クロフォードは、60年代半ばの数年、モータウンのバック・シンガーとして活動した女性アーティスト。シングルを3枚残してレーベルを離れ、70年代になるとPIRから7インチをリリースしたのち、マーキュリーでアルバムを2枚発表している。1965年に録音されたこの曲は、当時15歳だったという彼女のスウィート・ヴォイスと弾むようなテンポのリズムに心癒される、60年代的ドリーミー・ポップの隠れた逸品だ。

25. Ain't No Mountain High Enough / Diana Ross
シュプリームス脱退後の彼女に初の全米1位をもたらした、アシュフォード&シンプソンのペンによる名曲で、プロデュースも彼らが行っている。マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルのオリジナルとはアレンジに大幅な変更が加えられ、実にドラマティックな展開を見せるのが最大のポイントにして聴きどころ。語りからのサビへの盛り上がり、そして感極まるような終盤のリフレインは涙なくしては聴けない、という感じの仕上がりに。2004年に発売されたモータウン・コンピレイション『Free Soul. the classic of 70s Motown 2』でも本曲はトリを務めており、映画で言うところのエンドロール的な役割を果たしている。
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