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V.A.『Free Soul. the treasure of Tabu』

通常価格(税込): 2,420
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Toru Hashimoto Compilation > Free Soul

メロウ・ハワイ/ブランズウィック/ホット・ワックス&インヴィクタス/ハイ/タブー/サルソウル/ウエスト・エンド/ベツレヘム……2014年にULTRA-VYBEからリリースされるFree Soulコンピから数曲ずつ選りすぐった(初CD化を含む)全23曲のベスト・オブ・ベストとなるダイジェスト・セレクション『Free Soul Peace Island』と、アーバン・ブラック・ミュージックの名門タブー・レコーズの傑作群から、“アラウンド・80sのニュー・パースペクティヴ”をテーマに、都会的な色香あふれるナイトクルーズ〜ベッドルーム・ソウルや、多くのカヴァー/サンプリングを生んだメロウ・フローター、胸疼く麗しのFree Soulクラシックが選び抜かれた『Free Soul. the treasure of Tabu』が、共に9/5に先行入荷します。アプレミディ・セレソンでお買い上げの方にはもれなく(通販含む)、橋本徹・選曲のスペシャルCD-R(どちらか1枚の方には『Free Soul ~ Wonder Love Collection』、2枚ともの方にはそれに加えて『Free Soul ~ Love Deluxe Edition』とオフィシャル特典『More Tabu』)をプレゼント致しますので、お見逃しなく!


『Free Soul. the treasure of Tabu』ライナー(橋本徹)

蒼い夜、神秘的な女神が微笑みかける、月へと誘う。満月の夜に起こる奇跡。『Full Moon』と名づけられたこのアルバムは、ジェリー・ピータースのプロデュース。甘く優しい、都会的でメランコリックな匂い。星のようにきらめくイントロから始まる「Changin'」。軽く刻まれるビートとギター・カッティング。少しずつ少しずつ心の深い部分を溶かしていく、切ないメロディーと甘美なホーン。真夜中のクラブのダンスフロアの息づかいが聴こえてくる。ひとときの光、ひとときの天国まで。

1994年春に作ったレコードガイド「Suburbia Suite; Welcome To Free Soul Generation」に寄せたシャロン・リドレー紹介文から、『Free Soul. the treasure of Tabu』のライナーを始めさせていただいた。このコンピレイションの選曲オファーをいただいたときから、オープニングには「Changin'」を、と決めていた。というかこれ以外には考えられない、Free Soulにとって、最も大切な、特別なタブー作品。DJパーティーのクライマックスで、朝方のアフター・アワーズを締めくくる最後の曲として、何度となくスピンした。デニース・ウィリアムス「Free」を彷彿させるようなイントロから、リズムが入る瞬間に心も身体も震え、甘美に濡れるメロディーに思いがこみ上げていく。
ビル・ウィザースを輩出したサセックス・レーベルのクラレンス・エイヴァントが、新たにタブーを設立して女性シンガーとしては最初にアルバムをリリースしたのが、このフィラデルフィア出身の歌姫。サセックス時代からの付き合いとなる、アーバンでメロウな作風を得意とするジェリー・ピータース制作による『Full Moon』は、ジャケットもとても美しく、僕はソウル・ミュージックのアートワークで最も好きかもしれない。エスター・フィリップスやリンダ・クリフォードがカヴァーしたこの「Changin'」以外にも、タイトル曲やメアリー・ウェルズのカヴァーが素晴らしい。「Changin'」は近年、作者のひとりであるジェイムス・マクレランドがジェシー・ジェイムス名義で吹き込み、お蔵入りしていたオリジナル・ヴァージョンも陽の目を見た。

続く2曲目は、ウッズ・エンパイアの「Destiny」。本当に胸がキュンとする、甘酸っぱく清々しい名曲。夕焼けのドライヴが似合うような、青春の風景がよみがえるような。Free Soulのイヴェントでは、やはりかつて「Suburbia Suite」で推薦した、ロサンゼルスで録音されハワイのパラダイス・プロダクションから届けられた、ロイヤル・ガーナーの爽やかな高揚感と女性ヴォーカルが心地よいヴァージョンもよくかけた(オリジナルは1979年のエグザイルだったか)。カリフォルニアの兄妹グループ、ウッズ・エンパイア唯一のアルバム『Universal Love』は、タブー屈指のレア盤と言われ、内容的にも高品質で、哀愁ミッド・メロウ・グルーヴのタイトル曲も今回エントリー。ステファニー・ミルズ「What Cha' Gonna Do With My Lovin'」やカーティス・メイフィールドの「You're So Good To Me」を彷彿させるアーリー・80sの珠玉、と言っていいだろう。AZやロンリー・アイランドのサンプリングでも知られるが、近いうちにニュー・ディスコ~ビートダウン系のDJがリエディットを作りそうな気がする。
そしてFree Soulファンに、アレクサンダー・オニールにこんないい曲があったのか、と驚いてもらえると思う「Look At Us Now」へ。これも夕暮れが似合う、ミディアム・テンポのグッド・メロウ・グルーヴ。AOR風味のマリン・フレイヴァーが快いが、何よりもそこに宿る瑞々しさに惹かれてしまう。1985年のデビュー・アルバム『Alexande O'Neal』より。
続いて同タイプの(ブレイクウォーター~ナイトフライト的な、と言えばいいだろうか)、ブレインストームのベーシストだったラモン・ジョンソンが1980年にソロで発表したシングル「Masta Luva」を、と思いマスタリングまで終えていたが、残念ながら楽曲の権利関係が明らかにならず、ちょっとA・トレイン「Baby Please」を連想させるその爽快ヴルーヴィーな名作はスキップして、ブレインストーム「Waiting For Someone」へ。彼らはタブーに3枚のアルバムを残した、レーベル初期を代表するグループで、プロデュースは70年代らしいテイストでやはりFree Soulと親和性の高いジェリー・ピータース。これは1977年のファースト『Stormin'』収録のこみ上げるミディアム・グルーヴの名品だ。ブレインストームでは、ラモン・ジョンソンに代わってこのコンピの最後に急遽収録した「Brand New Day」も隠れた好曲で、オマー・チャンドラー&オードリー・ウィーラーによる1991年のカヴァーも好きなスウィート・バラード「This Must Be Heaven」も、決して聴き逃すことはできない。
ブラジルの盲目のジャズ・ピアニスト、マンフレッド・フェストの1979年作『Manifestation』は、DJなら一度はチェックしたことがあるだろう人気盤だ。なぜなら、ここに収めた「Koko And Leeroe」が入っているから。ジーン・ハリスのブルーノート録音で知られるメロウ・グルーヴを、パーカッションとエレピが織りなす爽やかなサウダージ・グルーヴに仕立てている。バレアリック的とも表現できる心地よい快楽に抗えない、極めて現代的なトラックと言えるだろう。

そして、満を持して、S.O.S.バンドが登場するわけだが、ここで僕がこの『Free Soul. the treasure of Tabu』に託したコンセプトのようなものを説明することにしよう。実は当初はこのコンピレイションも、Free Soul本来の70年代的なグルーヴィー&メロウなフィーリングに寄せて選曲しようと考えていた。ところが、20周年を迎えFree Soulコンピのオファーが相次ぐ中で、言わばその王道的なセレクションの魅力は十分に伝わった、と感じるようになり、せっかく80年代に栄華を極めたタブーをコンパイルするなら、これまであまり機会のなかった“アラウンド・80s”のニュー・パースペクティヴを提示することを試みよう、と思うようになったのだ。70年代から80年代へ、プロデューサー/アーティストを例にするなら、ジェリー・ピータース/ブレインストームあたりからジャム&ルイス/S.O.S.バンドなどへ、と比重が傾いたのは、そんな理由からである。80年代前半、リアルタイムでは高校生としてニュー・ウェイヴ~ネオアコを熱心に聴いていた自分が、タブーの作品群を前にこう決意するには、いささかの“英断”が必要だったことを理解していただけたらありがたい。したがって『Free Soul. the treasure of Tabu』は、この中盤から、Free Soul史上最もアーバンでアダルトでブギーなコンピ、という色彩を強めてゆく。
ということでS.O.S.バンド、まずは1982年の『Ⅲ』(ソーラー・レーベルでシャラマーなどをヒットさせたレオン・シルヴァーズをエグゼクティヴ・プロデューサーに迎え、初めてジャム&ルイスのペンによる曲「High Hopes」が登場したアルバムとしても特筆すべき)から、まさしくアーバン・メロウ・ブギー「Groovin'」。デクスター・ウォンゼルやウェブスター・ルイスなどにも通じる洒落たピアノとコーラスが印象的で、マイケル・ワイコフの「Looking Up To You」を思い浮かべるFree Soulファンもいるだろう。夜景に映えるナイトクルーズ・フィーリング、ブリージンなネオンライト・ムードは、アーリー・80sならではの粋を感じさせる。
続いてS.O.S.バンドそしてタブーにとってのファースト・ヒットであり、ダンス・クラシックとして不滅の人気を誇る「Take Your Time」を、1980年のデビュー作『S.O.S.』から。彼らがブレインストームに代わりレーベルを代表するヴォーカル&インストゥルメンタル・グループとして輝いた記念碑とも言える一曲だ。シギティのプロデュースによる、ダンサブルなビートとカッティング・ギター。親交のあったソーラーのヒット作にたとえるなら、シャラマーの「A Night To Remember」のような存在感。マックス・ア・ミリオンのカヴァーでも広く知られているだろう。
そして僕ら世代的には真打ち登場と言いたくなる「Just To Be Good To Me」へ。90年代初頭、ノーマン・クック率いるビーツ・インターナショナルが、あのクラッシュ「Guns Of Brixton」の麻薬的なベース・ラインと掛け合わせてリメイクした鮮烈な印象は、今なお忘れがたい。これはS.O.S.バンドにとっても、ジャム&ルイスとの出会いによって、TR-808によるクールに抑制されたファンク・グルーヴで新境地を切り開いた金字塔的作品で、1983年の4作目『On The Rise』収録曲のスペシャル・ヴァージョン。メアリー・デイヴィスの凛とした女性ヴォーカルも魅力的で、クラブでフル・プレイしてオーディエンスと“ナナナナーナナーナナ”のコーラス・パートを大合唱し、得も言われぬ興奮と一体感に包まれたことは一度や二度ではない。

さて、S.O.S.バンドを3曲続けたところで、場面転換をインタールード的につなぐように挿入されるのがジェネラル・ケイン。ジャム&ルイスとS.O.S.バンドの蜜月のクライマックスはまだまだこれから、その前に来たるメロウ・ヘヴンに向けての予告編のように、と意図している。ジェネラル・ケインはメイシオ・パーカー/フレッド・ウェズリーも客演したP・ファンク・マナーのファンク・バンド、その一世一代のスウィート・バラードが「For Lovers Only」で、かつてボーン・サグスン・ハーモニーがサンプリングしたことでも有名だ。こうした甘いスロウ・ジャムは80sブラック・ミュージックの最も美味しい部分のひとつだと思う。そしてここから、その曲名通り“For Lovers Only”な恍惚のパートが始まるのだ。ナイトクルージング~ベッドルーム・ソウルという意味では、もちろん“For Drivers, Too”とも言えるのだが。
今回のコンピの甘美なハイライトと考えている、ジャム&ルイス×S.O.S.バンドのTR-808メロウ・クラシック、まずは何と言っても1983年作の『On The Rise』の幕開きを飾った「Tell Me If You Still Care」だ。これほど中毒性の高いメロウ・グルーヴ~クワイエット・ストームがあるだろうか。マーヴィン・ゲイ「Sexual Healing」を機に80年代のソウル・ミュージックを席巻するローランドのリズム・マシンTR-808を使った、アイズレー・ブラザーズ『Between The Sheets』と並び称される1983年のモニュメントだが、僕は敢えてパトリース・ラッシェン「Remind Me」へのタブーからの回答とも呼びたい。90年代半ばにはモニカによってカヴァーされ、ディアンジェロ&クエストラヴによるライヴ・パフォーマンスも圧巻だ。
続く1984年の『Just The Way You Like It』からの「No One's Gonna Love You」と「Weekend Girl」も、「Tell Me If You Still Care」と並んでTR-808メロウ絶品として名高い。前者はマックスウェルがトリビュートを捧げたのも納得のエレガント・ソウル、これまた中毒性のあるグルーヴには抗えない。波の音と繊細なギターに始まる後者は、クリスタルな光沢と気品を漂わせたミディアム・バラードによるデュエット、メイズを思わせると感じるのは僕だけだろうか。
先述したウッズ・エンパイアの逸品「Universal Love」を挟んで、S.O.S.バンドはもう一曲「The Finest」の7インチ・エディットも。彼らとジャム&ルイス(とTR-808)の到達点と誉れ高い、過不足のない完成された名作。コンビ最終作となった1986年の『Sands Of Time』より。クールでシャープな空間性のあるトラックに、澄んだコケティッシュな女性ヴォーカルは、80年代のシャーデーにも通じる雰囲気だが、やはり僕が思い浮かべずにいられないのは、リアルタイムで当時から大好きだった同年のプリンス『Parade』だ。

その「The Finest」はアレクサンダー・オニールとシェレールをゲスト・ヴォーカルに迎えたミディアム・ファンクだが、タブーの看板アーティストと言える両者の歌声をさらに続けていこう。「Never Knew Love Like This」は、1987年という時代における完璧なポップ・ソングというイメージ。僕は大学生になったばかりの頃の、(バブル期へ向かう)あの時代の街の空気を思いだしてしまう。男女デュエットとしての相性の良さも抜群だ(マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルなどとはまた違った意味で)。まさにアレクサンダー・オニール×シェレール×ジャム&ルイスというタブーの顔役の真骨頂。このコンピレイションは当初、レーベル・スタートからジャム&ルイスがジャネット・ジャクソン『Control』のプロデューサーとしてワールド・ブレイクするまでの10年間(1977~1986)にフォーカスする、という制限を設けてセレクションにのぞんだが、これだけは1987年作ながら選ばざるをえなかった。
次の「Saturday Love」もシェレールとアレクサンダー・オニールによるデュエット。タブーと言えばこの曲を思い浮かべる方も多いだろう。プロデュースはもちろんジャム&ルイス、土曜日ソングの大定番で、80年代後半にナイトライフの愉しみを覚えた僕と同世代なら、若き日のちょっと気恥ずかしいような思い出がよみがえるかもしれない。90年代ならクイーン・ラティファによるサンプリング、近年ではトロ・イ・モアのカヴァーが記憶に残っているが、週末ムードを演出する多くの楽曲で参照されていることは言うまでもない。
そしてエンディングに向けては、1970年代に回帰してアナコスティアの「Anything For You」。ワシントンDC出身、元プレジデンツ、ヴァン・マッコイとその右腕チャールズ・キップスが手がけたスウィート・ソウル・ファンに人気の高いヴォーカル・グループだが、これは心洗われるように軽快なグルーヴィー・ダンサー。ピアノが印象的な12インチ・ヴァージョンも素晴らしいので、機会があればぜひどうぞ。
 
というわけで、僕のコンピとしては極めてアーバン~ナイトクルーズ~ベッドルーム仕様となった『Free Soul. the treasure of Tabu』、いかがだっただろうか。2014年の今、こうしてアーバン・ブラック・ミュージックの名門タブー・レコーズの選曲オファーをいただいたことを、僕はセレクションの過程で次第に必然と感じ、とても幸運に思うようになった(17歳の自分は、まだ驚いているかもしれないが)。今年上半期に最も聴いたCDのひとつが、スヌープ・ドッグとデイム・ファンクによる“7 Days Of Funk”だった、というのも大きなプラス要素になっているだろう。80sファンクやメロウ・ブギーを現代にアップデイトした、アーバンで“ブギーナイツ”な一枚。そんな感覚も踏まえて、このコンピレイションを楽しんでもらえたら嬉しい。
最後に、ラモン・ジョンソン「Masta Luva」と共に、残念ながら使用許諾が下りなかった音源についてひとこと。それはマイケル・ブースマンの「Saying It With Music」。カタログ品番的にはタブーのファースト・リリースとなるはずの、トリニダード・トバゴ出身のギタリストによる、深海をたゆたうようなスピリチュアル・メロウ・グルーヴ(一度聴いたら忘れられない歌声は、スティーヴィー・ワンダーの諸作やアフロ・ラテン・ソウルテット「Batucada」でもお馴染みのラニ・グローヴス)。20年前に作った『Free Soul Visions』に収録したことがあるので、興味を持たれた方はそちらでぜひ。
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