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V.A.『Free Soul origami PRODUCTIONS』
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日本で最も信頼できる良心的なレーベルのひとつorigami PRODUCTIONSの8年間の歴史を集大成した『Free Soul origami PRODUCTIONS ~ Mellow Mellow Right On』が8/23に先行入荷します。揺れるエレピの心地よいメロウネス、繊細かつシャープに研ぎ澄まされたビートが生む“あわい”のグルーヴ。ジャズやソウルやファンク、ブラジル音楽からクラブ・ミュージックまでを愛し、ディアンジェロ〜エリカ・バドゥそしてQ・ティップ〜J・ディラの流れを汲み、ロバート・グラスパー・エクスペリメントと同時代を生きる絶品のジャパニーズ・メロウ・ミュージックが、ミルトン・ナシメントやコモンのカヴァーを含め2枚組・41曲・160分以上にわたって連なる、世界に誇れるorigamiの魅力を完全パッケージした珠玉のコンピレイションです。アプレミディ・セレソンでお買い上げの方にはもれなく(通販含む)、橋本徹・選曲のスペシャルCD-R『夏の終りのハーモニー 2014』と『Free Soul D'Angelo ~ Private Edition』、それにオフィシャル特典CD『More origami PRODUCTIONS』をプレゼント致しますので、お見逃しなく(オフィシャル特典CD『More origami PRODUCTIONS』の配布は終了致しました。スペシャルCD-R2枚のみ継続してお付けしております)!
『Free Soul origami PRODUCTIONS ~ Mellow Mellow Right On』ライナー(橋本徹)
日本で最も信頼できる良心的なレーベルのひとつだと感じていたorigami PRODUCTIONSから選曲依頼をいただいたときは、とても嬉しかった。8年間のレーベルの歴史を振り返りながらセレクションを進めていったが、どうしても収録したい作品が40曲をこえてしまい、定価は据え置いたまま2枚組にできないかという僕の相談に、快い返事をいただいたときも感激した。
揺れるエレピの心地よいメロウネス、繊細かつシャープに研ぎ澄まされたビートが生む“あわい” のグルーヴ。ジャズやソウルやファンク、ブラジル音楽からクラブ・ミュージックまでを愛し、ディアンジェロ〜エリカ・バドゥ そして Q・ティップ〜J・ディラの流れを汲み、ロバート・グラスパー・エクスペリメントと同時代を生きる、絶品のジャパニーズ・メロウ・ミュージック。160 分以上にわたって世界に誇れる日本のナイス・コレクティヴorigami の素晴らしい魅力をパッケージすることができたと確信している。
オープニングはミルトン・ナシメント「Ponta De Areia」のカヴァー。その気持ちよいグルーヴ感に身を委ねながら、エスペランサ・スポルディングも同じ頃リメイクしていたこの曲を取り上げることの、現代における(ブラジル音楽としてだけでなく)ジャズ〜ソウル〜クラブ・ミュージック的意味を感じてほしい。
OvallとShingo Suzukiには、2008年の『Place 54』が大好きなアルバムで、Mellow Beatsコンピにもフィーチャーしていたフランスのジャジー&メロウなライヴ・ヒップホップ・バンド、ホーカス・ポーカスと親交の深い日本人アーティストがいる、と聞いたのをきっかけに興味を抱き、2000年代後半に多少飽和状態にあったジャジー〜メロウ・ヒップホップという文脈をこえて、惹かれるものを感じた。僕はホーカス・ポーカスをフィーチャーした「Supalover」はもちろん、「Multifacette」のBlanco Niceによるフランス語のナレイションを聴くだけで、何となく嬉しくなる。
この『Free Soul origami PRODUCTIONS』の選曲に際して、最初に聴き返したのはmabanuaの『Done Already』だった。そのことは、このコンピレイションのトーン(通奏低音)とヴォリューム(曲数)を決定づけていると思う。僕はFree Soulと共にMellow Beats的な音楽性にもフォーカスしたくなってしまったのだ。ソウルクエリアンズ〜J・ディラ以降を感じさせるビート・メイキング/サウンド・プロデュースはmabanuaの真骨頂だが、近年の彼のそうした枠さえもこえた多彩なめざましい活躍は、皆さんご存知の通りだろう。僕はやはり”ディアンジェロ以降の”と表現したくなってしまう、ジェシ・ボイキンスやニコラス・ライアン・ギャントを起用するそのヴォーカル趣味にも着目してセレクトしている。女性ヴォーカル曲では、エリカ・バドゥにも通じるような気だるくジャジーなメロウネスを意識していることも付け加えよう。
45 a.k.a. SWING-Oは、2007年のorigami PRODUCTIONS立ち上げの当初に、推薦コメントを寄せさせてもらう機会があったのが懐かしく、今では必然と感じる。ソウルとジャズ、ときにはラテン〜ブラジリアン、そしてグルーヴとメロウネス。東京の音楽シーンを”黒く”する男。今回はマイゼル・ブラザーズのスカイ・ハイ・プロダクションズ的な高揚感や、アーバン・メロウでサマー・マッドネスな情感によって、Free Soulファンのファースト・インプレッションを高める役割を果たしてもらっている。
thirdiqには僕の監修・選曲している音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」で、これまで何度となく世話になり続けている。今は亡きNujabesが絶賛していたのも忘れられない。中でも時が止まるほど好きな「4a.m.」(いや、時の流れる音さえ聴こえそうなほど、と言った方がいいかもしれない)は、余韻を大切にしたいエンディングに、と最初から決めていた。
Kan Sanoは今、最も脚光を浴びているミュージシャンのひとり、と言えるのではないだろうか。今年リリースされた『2.0.1.1.』は、個人的にも2014年に入ってよく聴いている日本人アーティストのトップ5に入るかもしれない。その現在進行形の輝きをこのコンピレイションにも、という気持ちを託して、ひとつのアルバムから4曲も選ばせてもらった。リリカルなピアノも、気だるくメロウなグルーヴも、フューチャリスティックなジャズも素晴らしい。
そして2009年から2011年にかけて毎月リリースされ、凄いなと感じていたlaidbookプロジェクトからも、たくさんのトラックをセレクトさせていただいた。これぞorigami PRODUCTIONSの底力・総合力。ちょっとした小品にも彼らのアイディア、音楽愛がさざめいている。コモン「Resurrection」のカヴァーでのアーマッド・ジャマル「Dolphin Dance」や、「Outro〜Theme From The Beginning〜」でのボビー・ハッチャーソン「Montara」に象徴されるように、ヒップホップ・ジェネレイション(ロバート・グラスパー・エクスペリメントの面々がそう言われるのと同じ意味合いで)ならではのジャズ・センスが滲んだりする瞬間が、僕はたまらなく好きなのだ。
最後にサブタイトルについて一言。僕が選曲しながら何度も、思わずくちずさんでしまっていたフレーズが、ロウレル・サイモンのこれだった。コモン(&シャンテイ・サヴェイジ)やジャネイもサンプリングしていたが、マッシヴ・アタック、と思ってしまう自分はやはり彼らより上のレア・グルーヴ〜アシッド・ジャズ世代なのだろう。そんな両者の架け橋となれば、と編んだのが、この『Free Soul origami PRODUCTIONS』なのかもしれない。皆さんで一緒に、“Mellow Mellow Right On”とくちずさんでいただけたなら、コンパイラーとしては本望だ。
『Free Soul origami PRODUCTIONS ~ Mellow Mellow Right On』ライナー(原雅明)
実は、origami PRODUCTIONSの音楽を僕に初めて教えてくれたのは、レイ・ハラカミだった。彼は自分のiPodに入れているお気に入りの音楽を、時たま僕に聴かせてくれた。騒がしい外でいきなりヘッドフォンで聴かせたりするので、よく聴き取れないこともあったのだけど、そんなことはお構いなしに、とにかく聴かせたくてしょうがないんだ、っていう感じで来られると断りようがない。改めて、僕なんかよりずっと優れた音楽の紹介者でもあったと思う。
もう、いつの頃か記憶は定かではないのだけど、たぶん彼がJ・ディラのビートを気に入っていたときだったと思う。「ドラムが生なんだけどディラみたいで、ライヴも良かったんだよ」と言って、ヘッドフォンで聴かせてくれたのが、Ovallだった。それ以来、僕はOvallの音楽を追うようになった。残念ながら、ライヴを見る機会はいままで一度もなかったのだけど、その録音作品のクオリティの高さには驚かされた。
僕は2008年から、ロサンゼルスのパーティLOW END THEORYを日本で開催することに関わってきた。余談になるが、かつて京都のメトロで開催したときには、人手が足りず、たまたまお客さんとして遊びに来ていたレイ・ハラカミが僕と一緒に物販を手伝ってくれたりもした。意外かもしれないが、LOW END THEORYに代表されるような新しいビート・ミュージックの流れに彼は興味を持っていた。
だから、その数年後、LOW END THEORY JAPANのBeat Invitationalという、ビート・メイカーが自分の新しいビートを掛け合う一種のビート・バトル(でも勝ち負けはない)にmabanuaが参加して、ドラマーとしてではなく、SP404を駆使するビート・メイカーとして出演してくれたときに、僕は自分の中で、ひとつ大きな輪が繋がった感覚があった。ビート・ミュージックを軸にした、ジャンルや世代を超えた繋がりは、僕がLOW END THEORY JAPANでほんとうにやりたいことだった(それはもう叶わないことだけど、だからレイ・ハラカミにもいずれ出てほしいと思っていた)。
一度繋がった輪は、さらに輪を作っていく。僕はひょんなことでKan Sanoとも知り合うことになる。ちょうど、DJ KenseiとSagaraxxによるCoffee & Cigarettes Bandがいろいろなミュージシャンと繰り広げていたセッションのコーディネイトに僕も関わっていて、そこに参加してもらったこともあった。まだ、アルバム『2.0.1.1.』のリリース前のことで、録り溜めていた未発表の音源をいろいろ聴かせてもらって、これまたその才能に驚かされた。彼の場合も、ビアニストとして確固たるテクニックを持ちながらビート・メイクもこなす。僕からすれば、海外の動向ともシンクロする、ほんとうに新しい世代のミュージシャン/プロデューサーの活動を彼らやorigami PRODUCTIONSを通して知ることにもなった。また、僕自身はまだ直接繋がりがないのだけど、際立った個性を発揮している45やthirdiqともこれから出会いがある予感がしている。
そして、輪はまだ繋がっていく。今回、この『Free Soul origami PRODUCTIONS』に文章を寄せてほしいと依頼されたときに、意外に思ったのと同時に何か必然的なものも感じたのだ。それは、橋本徹さんの存在があったからだ。敏腕編集者と、まだ小生意気だったライターの関係で、もう優に15年以上前に僕は橋本さんと一度仕事をしたきりである。しかし、その後も橋本さんは僕にとって気になる存在であり続けた。トレンドを理解しながらもトレンドに流されず、音楽をフラットに紹介するスタンスは日本では希有のものだろう。本人はその言葉を嫌うかもしれないが、確かな批評性が備わっていなければ実現できないことである。言わずもがなだが、橋本さんもまた優れた音楽の紹介者に他ならない。
その選曲によるこの2枚組で実現されたあまりにも滑らかな流れが、僕に徒然なるままにこの文章をしたためさせた。個々の楽曲の解説もない、ライナーノーツの本筋を外れたような文章ではあるが、許してほしい。音楽は時にいろいろなものを繋げる力があるのだと教えてくれる。音楽は記憶を呼び覚まし、新たな出会いを用意する。聴く者の心の奥底で抗えないでいる感情を焙り出したり、常識的な判断を無に帰することもある。その生々しさを含めて、音楽の魅力であり、マジックなのだ。だから、聴く人のシチュエイションで如何ようにもそれは作用するし、この音楽はこれから聴く人にも新しいストーリーを用意するだろう。
『Free Soul origami PRODUCTIONS ~ Mellow Mellow Right On』ライナー(Yoshi Tsushima/origami PRODUCTIONS主宰)
音楽は家具に似ている。
エッジの立った新品が、時を経てただ古いだけの “ボロ”になるのか“アンティーク”になるのか、
それは素材次第。
もちろん音楽は家具のように物理的に劣化して味が出る訳ではなく、
人々の捉え方が時代に応じて変わっていくことでマイルドに聴こえるのだと思う。
まだまだ新品だった我々の音が、少しまろやかになった頃合いを見計らい、橋本さんに会いに行った。
僕の中で橋本さんはアンティークの鑑定士。
スティーヴィー・ワンダーやカーティス・メイフィールドのように熟成されるまでは、
まだまだ前進あるのみだが、ボロになるかアンティークになるか、
橋本さんの鑑定書をいただくことはレーベルとしてひとつの目標だった。
レーベルという形で渋谷のジャム・セッション・シーンを切り取り、世に送り出してきた我々を
橋本さんが切り取ったら、いったいどんなことになるんだろう?
聴いてくれるお客さんに楽しんでもらうことが一番大事だが、
今回は個人的な好奇心や気持ちも大事にした。
Free Soulの刻印が押されたジャケット案を並べ選んでいる今も、ただただ心躍る瞬間が続いている。
橋本さんの鑑定書どころか「良い曲が多すぎて1枚に収まらない」という
嬉しいお電話をいただいたときは、体中に安堵感と幸福感が満ちあふれた。
こんな仕事に携わることができる幸せを再認識させてくれた、
自分にとっても大事な1枚(いや2枚!)。
皆さんにも楽しんでいただけたら最高です。