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Al Green『Free Soul. the treasure of Al Green』

通常価格(税込): 2,420
販売価格(税込): 2,420
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Toru Hashimoto Compilation > Free Soul

ソウル・ミュージックの歴史に輝かしい軌跡を残すメンフィスの名門ハイ・レコーズのレーベル・コンピレイション『Free Soul. the treasure of Hi』と、メンフィス・ソウルの貴公子アル・グリーンが黄金期のハイ・レコーズに吹き込んだ名作を選りすぐったベスト・コレクション『Free Soul. the treasure of Al Green』が、共に8/1に先行入荷します。黄金時代のハイ・サウンド本来の魅力に“アーバン・メロウ”“グルーヴィー・ノーザン”という色合いをまぶして、全26曲のうち14曲をシングル・オンリーの秘宝が占める前者、甘くささやきかけるような珠玉のラヴ・ソングを中心に、ディアンジェロからトーキング・ヘッズまで様々なアーティストに影響を与え多くの素晴らしいカヴァー/サンプリングも生んだ多彩な魅力に迫った後者、どちらもFree Soulならではのメロウ&グルーヴィーな感性が絶品です。アプレミディ・セレソンでお買い上げの方にはもれなく(通販含む)、橋本徹・選曲のスペシャルCD-R(どちらか1枚の方には『真夏の夜のラヴァーズ・ダブ』、2枚ともの方にはそれに加えて『真夏の夜のラヴァーズ・ロック』とオフィシャル特典CD『More Hi, More Al Green』)をプレゼント致しますので、お見逃しなく!


『Free Soul. the treasure of Al Green』ライナー(橋本徹)

マーヴィン・ゲイやカーティス・メイフィールドと並び称される偉大なソウルマンであり、メンフィス・ソウルの貴公子とも言われるアル・グリーン。2000年初夏に編んだ『Free Soul. the classic of Al Green』以来14年ぶりに、そのアップデイト・エディションとなる彼のベスト盤『Free Soul. the treasure of Al Green』を選曲した。
アル・グリーンがメンフィス・ソウルの屋台骨となった名門レーベル、ハイ・レコーズの黄金期に吹き込んだ名曲のオン・パレード。甘くささやきかけるような優しいラヴ・ソング、誰もがくちずさめる人懐こいメロディー、固く引き締まった弾力性のあるビート。曲タイトルを見れば、好きな人に届けたいような言葉ばかり、まさに“Simply Beautiful”。これほど日常のささやかな時間や日々の感情に寄り添ってくれるソウル・ミュージックはない──そんな気がしてくる。それは言ってみれば、“恋する音楽”だ。
『Free Soul. the classic of Al Green』は、自分でも特に気に入っていたCDで、ランチタイム・ミュージックとして、あるいはナイトクルージング~ベッドルーム・ソウルとして、とても愛聴していたから、敢えて選曲を変える必要はないと感じていたが、その発売権の移行に伴って新たに『Free Soul. the treasure of Al Green』を、というオファーを受けて、セレクトに際して新しく3曲は加えようと心に決め、曲順を組んでいった。それでも、2000年当時もこれしかない、と強く思ったオープニング3曲の流れを踏襲した結果、まっさらな気持ちで楽曲と向き合ったにもかかわらず、基本的に14年前のセレクションを尊重する80分強となったことは、正直に告白しておこう。
ニュー・エントリーされたのは、2000年に陽の目を見た未発表作品集『The Rarities』に収められていてすぐに好きになったナイス・ミッド・グルーヴ「I Think It's For The Feeling」、1973年の『Livin' For You』収録の弦が加えられた正規ヴァージョンより断然好みの「So Good To Be Here」、同じく1973年の『Call Me』より「Your Love Is Like The Morning Sun」。特に締めくくりに「Your Love Is Like The Morning Sun」を置いたことで、個人的にこのCDの“恋する音楽”感はさらに増したのではないかと感じている。
14年前に引き続き選出した曲についても、簡単なメモをいくつか。「Let's Stay Together」~「Call Me」~「I'm Still In Love With You」という冒頭の黄金リレーを今回も変えられなかったのは、若き日に僕がソウル・ミュージックの虜になった最も大きなきっかけのひとつ、ウィリアム・ディヴォーン「Give The Little Man A Great Bid Hand」にそのビート感が似ているからではないか。ぜひともこの“ハイ・サウンド”ならではのミディアム・グルーヴを、ひたすら堪能してほしい。
思えば僕がアル・グリーンの魅力に取りつかれてから、今年で30年の月日が経つ。トーキング・ヘッズが「Take Me To The River」を披露したライヴ・ドキュメンタリー映画「ストップ・メイキング・センス」が公開されたのは1984年だった。高校生だった僕はその頃、「Love」をカヴァーしていたイギリスのネオアコ・グループ、オレンジ・ジュースの青い瑞々しさにも魅了されていた。
モンティー・アレクサンダーのヴァージョンをビートナッツがループして以来、僕の中で特別な存在になっている「Love And Happiness」は、ここ数年はShoesによるリエディットをよくDJプレイしている。タイトなビートが心地よいこの曲は、昨年ホセ・ジェイムスがライヴでカヴァーしていた。もちろんモブ・ディープによるサンプリングもお忘れなく。
やはりファンキーなグルーヴ感の「Love Ritual」は、『The Rarities』で印象的だった“Bwana Mix”に差し替えるかどうか、マスタリング直前まで迷ったが、Free Soulコンピにはやはりオリジナルがふさわしいと判断した。他にも選曲の過程で、「King Of All」に象徴されるように、典型的なFree Soulイメージの軽く跳ねるビートとこみ上げるように高揚するメロディー展開がアル・グリーン/ハイ・レコーズにも見られることを再発見できたのは嬉しかった。
2000年のコンパイルのときにも思ったが、「Simply Beautiful」~「I'm Glad You're Mine」と続くパートは、静かなハイライトだ。「Simply Beautiful」はノトーリアス・B.I.G.などのサンプリングでも注目を集めたが、今年になってホセ・ジェイムスもカヴァーした本質的なラヴ・ソング。メアリー・J.ブライジがサンプリングしていた「I'm Glad You're Mine」はイントロから極めつけのビート、そのドラミングの衝撃と価値は、年月を経てますます増すばかりだ。現代のリスナーが初めて聴いたら、ディアンジェロそのもの、と思うかもしれない。
個人的な思い入れも強くこめて選曲した『Free Soul. the treasure of Al Green』、改めていかがだっただろうか。僕は以前にも増して、自分がアル・グリーンの音楽を求めている、必要としている、と実感した。むしろ歳を重ねるにつれて、僕の音楽的な趣味はどんどんアル・グリーンに戻っている、そんな気がしてならない。皆さんにも、ささやかな、でもかけがえのない幸せに触れるように、このCDに接してもらえたら嬉しい。僕が14年前に書いた『Free Soul. the classic of Al Green』ライナーも、併せて読んでいただければ幸いだ。


『Free Soul. the classic of Al Green』のリリースに寄せて(橋本徹)

アル・グリーンという偉大なアーティストの名が若いFree Soulファンの間でどのくらい認知されているのか、これまでぼくは改めて考えてみたことがなかった。そんなことを思ったのは、同じ黒人男性ソウル・シンガーでも、マーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダー、カーティス・メイフィールドやダニー・ハサウェイに比べると、もうひとつ知名度が低いような気がするからだ。でもぼくの個人的なソウル・ミュージック史においては、彼らニュー・ソウル四天王に比較してアル・グリーンの存在感は優るとも劣らない。むしろ彼こそは、ぼくがソウル体験の最初期に出会いブラック・ミュージックの魅力に気づかせてくれた、かけがえのないアーティストだと言えるのだ。

ぼくがアル・グリーンに惹かれるようになったのは、最近またリヴァイヴァル上映されているジョナサン・デミ監督の「ストップ・メイキング・センス」という音楽映画での、トーキング・ヘッズによる「Take Me To The River」の圧倒的なパフォーマンスに衝撃を受けたことがきっかけだった。さっそくオリジナルを聴いてみようとベスト盤を購入したぼくは、彼の音楽を、その後夢中になるボサノヴァやソフト・ロック、サントラやイージー・リスニングのように、最高のランチタイム・ミュージックとして愛聴した──つい最近も“ドルチェタイムのための音楽”というテーマのJ-WAVEからの選曲依頼に彼の「Sha-La-La (Make Me Happy)」をすべり込ませてしまったほどだ。いま話題になっているソフィア・コッポラの初監督作品「ヴァージン・スーサイズ」のサントラ盤にはアル・グリーンの「How Can You Mend A Broken Heart」が収録されているけれど、そんな映画体験をきっかけに、このFree Soul版ベスト・アルバムを手にされた若い音楽ファンがいるならば、こんなに嬉しいことはない。きっと15年前のぼくと同じように、彼の音楽の虜になるに違いないだろうから。

ウィリー・ミッチェルがブッカー・T & ザ・MGズのアル・ジャクソンらメンフィス・ソウルの精鋭を起用し、アル・グリーンのために用意した固く乾いたバック・ビートの効いたサウンド──いわゆる“ハイ・サウンド”の素晴らしさ。それはもちろん言うまでもないのだけれど、やはり圧倒的なのはラヴ・ソングの素晴らしさ。以前Free Soul版ベスト・アルバムをリリースしたミニー・リパートンと同じように、“Love”という言葉がタイトルや歌詞につく曲が多いのが彼の特徴だ。そういった甘くささやきかけるような、誰もがくちずさめるような人懐こいメロディーをもつ名曲と、彼の感情の奥底にあるもの、ときおり顔をのぞかせるファンキーでブルージーな表情を、ここにはバランスよく映し出すことができたと思う。

最後に、以前ディアンジェロにインタヴューした際、彼がアル・グリーンへのリスペクトの気持ちを熱く語っていたことを付け加えておきたい。90年代半ばのソウル・ルネッサンスの動きの中で彼が登場してきたとき、ぼくが真っ先に思い浮かべた印象も“ヒップホップ世代のアル・グリーン”というものだった。甘く湿った南部の濃密な空気が立ち込めるような「Simply Beautiful」や「I'm Glad You're Mine」のような歌を聴けば、皆さんもこの意見に賛同してくれるだろう。アル・グリーンがその他の後続アーティストに与えた影響については、高橋道彦氏の素晴らしい解説を読んでみてください。また、「Let's Stay Together」や「I'm Still In Love With You」のような代表曲には素晴らしいカヴァーが数多くあるので──例えばマージー・ジョセフのような──熱心なFree Soulファンにはその探究もお薦めします。それにしても、10代で当時のリズム&ブルース界のトップ・シンガー、ジャッキー・ウィルソンのレコードを聴いているところを父親に見つかり、兄弟で組んでいたゴスペル・カルテットを脱退させられてしまったり、キャリアの絶頂期に女性ファンに襲われて大怪我したりする人生というのは、どんなものなのだろう。
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