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V.A.『Free Soul. the treasure of Hi』
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ソウル・ミュージックの歴史に輝かしい軌跡を残すメンフィスの名門ハイ・レコーズのレーベル・コンピレイション『Free Soul. the treasure of Hi』と、メンフィス・ソウルの貴公子アル・グリーンが黄金期のハイ・レコーズに吹き込んだ名作を選りすぐったベスト・コレクション『Free Soul. the treasure of Al Green』が、共に8/1に先行入荷します。黄金時代のハイ・サウンド本来の魅力に“アーバン・メロウ”“グルーヴィー・ノーザン”という色合いをまぶして、全26曲のうち14曲をシングル・オンリーの秘宝が占める前者、甘くささやきかけるような珠玉のラヴ・ソングを中心に、ディアンジェロからトーキング・ヘッズまで様々なアーティストに影響を与え多くの素晴らしいカヴァー/サンプリングも生んだ多彩な魅力に迫った後者、どちらもFree Soulならではのメロウ&グルーヴィーな感性が絶品です。アプレミディ・セレソンでお買い上げの方にはもれなく(通販含む)、橋本徹・選曲のスペシャルCD-R(どちらか1枚の方には『真夏の夜のラヴァーズ・ダブ』、2枚ともの方にはそれに加えて『真夏の夜のラヴァーズ・ロック』とオフィシャル特典CD『More Hi, More Al Green』)をプレゼント致しますので、お見逃しなく!
『Free Soul. the treasure of Hi』ライナー(橋本徹)
メンフィス・ソウルの名門レーベル、ハイ・レコーズ黄金時代のコンピレイションを、2014年の今、選曲できたことを、僕はとても幸運に思う。もし90年代の若き日の自分に、この企画のオファーが舞い込んでいたとしても、『Free Soul. the treasure of Hi』のように充実した作品集を編むことはできなかっただろう。当時の僕の音楽的な素養や趣味、知識の蓄積を考えると、そう思わざるをえない。
その証左のひとつとなるのは、今回セレクトした26曲のうち14曲をシングル・オンリー曲が占めていることだろう(さらにいわゆる未発表発掘音源が1曲)。どちらかと言えば、泥くさく“いなたい”印象が強いだろうメンフィス・ソウル~ハイ・レコーズを、“アーバン・メロウ・ミディアム”“グルーヴィー・ノーザン・ビート”といった人気の高いテイストと掛け合わせることに成功していると思う。生き生きと瑞々しい名曲が80分にわたって連なるそのフレッシュな輝きに、レーベル・イメージを一新されるような驚きを覚える古くからの音楽ファンもいらっしゃるだろう。
ハイ・レコーズの看板アーティストと言えば、このCDと同時に単独でベスト盤『Free Soul. the treasure of Al Green』を組んだアル・グリーン、そしてアン・ピーブルズ/シル・ジョンソン/O.V.ライト/オーティス・クレイあたりで、もちろん彼らのレコードはセレクションに際してすべて聴き返したが、オープニング曲はこれしかないと最初から決めていた。それはアルバム・デビュー前の1972年のフィリップ・ミッチェルの名作シングル「Little Things」。まさしく“ハイ・サウンドによる「What's Going On」”という感じで、Free Soulファンならずとも必聴のメロウ・グルーヴだ。
そしてFree Soulコンピならではの選曲の高揚感、という観点から必然的にクローズアップされてくる傑作が、続くジェイムス・ギャドソンの「Got To Find My Baby」。ハイと血縁関係にある西海岸のレーベル、クリームに吹き込まれたキラー・シングルで、聴けばわかるように、ワッツ・103rdストリート・リズム・バンドの人気ナンバー「Love Land」の改作。そのオリジナル・ヴァージョンでリード・ヴォーカルをとっているのもジェイムス・ギャドソンだが、彼はやはり何よりも、マーヴィン・ゲイやジョニー・ブリストルのバッキングで誉れ高いソウル・ドラマーとして名声を博している。
「What's Going On」~「Love Land」というFree Soulイメージを体現する流れのオープニングに続いては、ハイの愛すべきガール・グループ、クワイエット・エレガンス。彼女たちの貴重なシングル2曲(それぞれグルーヴィー/メロウ)と、2001年に編集された『The Complete Quiet Elegance On Hi』に収められていたダン・グリーアとの共演曲を、今回は選んだ。
たたみかけるように続くボボ・ミスター・ソウル~アフリカーノはノーザン・ソウル的にも熱い支持を集めそうなグルーヴィー・シングル。クワイエット・エレガンス×ダン・グリーアから力強くスピーディーに続けたヘンリー・シェドのシングルB面曲も、そんな着眼からセレクトしている。
シングル・オンリーの女性アーティストでは、クワイエット・エレガンスと並んでジーン・プラムも僕のフェイヴァリットで、3曲をエントリーしている。まるでスタックス時代の初期エモーションズのような可憐な瑞々しさ、と言えばその魅力が伝わるだろうか。典型的ハイ・サウンドと言えるだろうアル・パーキンスやジョージ・ジャクソンのシングル曲も、メンフィス・ソウルの知られざる秘宝として聴き逃さないでほしい。
看板アーティスト勢では、まずジャケットのモティーフにもしたアン・ピーブルズ。カサンドラ・ウィルソンによる名唱でも知られる「I Can't Stand The Rain」が何と言っても代表作だろうが、ここでは僕なりの3曲を。「If I Can't See You」は心洗われるようなナイス・シャッフル・ソウル。「Somebody's On Your Case」は思わず腰が動くグッド・ミッド・ファンク。沈みゆく夕陽を眺めているような気分になる「When I'm In Your Arms」の甘い憂愁と優しさもメンフィス・ソウルならではの情感だ。
男性アーティストでは、シル・ジョンソンとO.V.ライトが各3曲。シル・ジョンソンの「Let's Dance For Love」はこのコンピの最も重要なポイントとなる選曲のひとつ。揺れるエレピのイントロに、軽くミディアム・テンポで刻まれるカッティング・ギター。これぞハイ・サウンドによるアーバン・メロウだ。僕は20年前、『Free Soul Colors』のオープニングにジョニー・テイラーの「Your Love Is Rated X」を選んだときのことを思いださずにいられない。当時は革命的だったあのセレクトに匹敵する思いを、この曲には託している。「You're The Star Of The Show」にも同様の意味合いをこめているが、こちらはクラヴィネットが生みだすグルーヴに華やいだメロディーとホーン・セクションがきらめく。エンディングに向けてのサックス・ソロも、まさにアーバン。一方で、南部の香りがあふれるでるような「Take Me To The River」も、僕にとっては思い入れ深い、個人的にトーキング・ヘッズ~アル・グリーンを通してハイとの出会いになった曲。これがファースト・ヴァージョン、問答無用、極めつけのカッコ良さだ。
O.V.ライトは名盤『The Bottom Line』から、メンフィス・ソウルらしい力強さと哀切を秘めた「I Don't Do Windows」、イントロのレイドバック・メロウなインストゥルメンタル・パートは絶対にトラック・メイカーにサンプリングされるだろうと以前から思っていたラティモアのカヴァー「Let's Straighten It Out」。さらに、2014年に推薦するならこの曲と確信する、ボビー・ウーマックにも歌ってほしいような低音の効いた哀愁ミディアム・メロウ・ブギー「We're Still Together」(そのうち誰かが素晴らしいリエディットを作るだろう)。
そしてオーティス・クレイ「Too Much Mystery」「Holding On To A Dying Love」の2曲も素晴らしすぎる。ブランズウィックで例えるならタイロン・デイヴィスのような、華やかなオーケストレイションと塩辛い歌声が最高にマッチしたグルーヴィー・ソウル。ドン・ブライアントもシル・ジョンソン「Take Me To The River」からのファンキー・リレーにしびれてほしい「That Ain't Right Woman」(ちょっとビル・ブラックス・コンボもカヴァーしている「The Horse」を彷彿させる)に、ウィリー・ミッチェルとのノーザン・ビート調の「Everything Is Gonna Be Alright」という、2枚の60sシングルを収めた。
僕自身もコンピレイションのオファーをいただくことで自分の音楽的好奇心がこれほど広げられたことはないと感じている『Free Soul. the treasure of Hi』、いかがだっただろうか。メンフィス・ソウルの桃源郷への80分の音楽旅行を一緒に楽しんでいただけたならば嬉しい。同時に、選曲の過程で道しるべのひとつとなってくれた、先達のソウル・ミュージック愛好家のたゆまぬ探求にも、感謝の意を表したいと思う。