商品コード: 00003533

The Ryan Driver Quintet

通常価格(税込): 2,420
販売価格(税込): 2,420
ポイント: 22 Pt
カルロス・アギーレ/ルイ/シモン・ダルメ/デコーダーズ/チガナ・サンタナに続くアプレミディ・レコーズ単体アーティスト作品として、現在充実を極めるトロントのジャズ/フォーク系インディー・シーンの最重要バンド、ライアン・ドライヴァー・クインテットの日本では入手しづらかった名盤『Plays The Stephen Parkinson Songbook』が6/20に先行入荷します。1930〜50年代の古いジャズにインスパイアされたスティーヴン・パーキンソンのペンによるロマンティックな情趣と洒落た言い廻し(この日本盤にはオリジナルCDに掲載されていなかった歌詞カードが付いてます!)、チェット・ベイカーを思わせる憂愁を帯びた歌い口が胸を打つ名曲群が、シックでラウンジーな心地よさと前衛的なセンスが絶妙なバランスで両立する新しい解釈によって、まさに“21世紀のスタンダード”と言うにふさわしい叙情と陰影をまとった、素晴らしい一枚です。アプレミディ・セレソンでお買い上げの方にはもれなく(通販含む)、橋本徹・選曲のスペシャルCD-R『Jazz Supreme For The Ryan Driver Quintet』と『Folky-Mellow Songs For A Rainy Day』をプレゼント致しますので、お見逃しなく!
※詳しいCDの内容は、[Toru Hashimoto Blog(5/30)]とライナーノーツをご覧ください!

01. Being In Love
02. Birds In Spring
03. I'm Feeling Fine
04. My Baby
05. Falling In Love
06. How About Me?
07. Goodbye
08. I Couldn't Help But Falling In Love
09. This Thing Called Love
10. Dreaming Of Love


The Ryan Driver Quintet『Plays The Stephen Parkinson Songbook』ライナー(国分純平)

トロントのダウンタウン北部を東西に横切るブロア・ストリートを、高級店が立ち並ぶヨークヴィルを背にして西に下り、ロイヤル・オンタリオ博物館やトロント大学を越えた先のブランズウィック通りを南に折れる。学生街として知られるアネックス地区の緑の多い路地を進むと、まもなく壁一面に大きなウォールアートが描かれた古い2階建ての建物がみえてくる。建物の正面には「TRANZAC」と書かれた小さな看板。カナダに移住したオーストラリア人、ニュージーランド人たちによるコミュニティー、トロント・オーストラリア・ニュージランド・クラブの略称だ。古くは1930年代に母国の文化を守る目的で集まった彼らが、音楽、演劇、芸術に親しむ場として、いまの場所にクラブを開いたのは1971年のこと。半世紀近くにわたって地元に根ざして運営してきたこのクラブで、ライアン・ドライヴァー・クインテットは定期的にステージに立っている。月の後半の金曜日、夜10時にTRANZACを訪れれば、彼らのショウをみることができるはずだ。

1999年の結成以来、ライアン・ドライヴァー・クインテットはライヴを軸に活動してきた。2010年にカセットテープで『Glamour』という作品をリリースしているが、75部の超限定盤だったためか、本作が正式なデビュー・アルバムとなるようだ。メンバーは、ライアン・ドライヴァー(ピアノ/ヴォーカル)、ニック・フレイザー(ドラムス)、マーティン・アーノルド(エレキ・ギター)、ロブ・クラットン(ベース)、ブロディー・ウェスト(アルト・サックス)の5人。ライヴではサックスのウェストが抜けたカルテット、ヴィブラフォンのマイケル・デイヴィッドソンが加わったセクステットという編成になることもある。また、過去にはドラムスにブレイク・ハワード、オルガンにジャスティン・ヘインズがいたこともあった。

メンバーはいずれもトロントのアヴァン・ジャズ/インプロヴィゼイション・シーンの中核をなす面々だ。クインテットとしては本作がデビュー・アルバムになるものの、それぞれのソロ作やリーダー作は非常に多い。各人のオフィシャル・サイトに掲載されているのでアルバム名やグループ名を細かく挙げることは省くが、ライアン・ドライヴァーひとりをとっても、ソロ・アルバム2枚に加えて、これまでのキャリアでメンバーとして在籍してきたバンドは合計で20近い。そして、それらのバンドの多くには、クインテットのほかのメンバーが重複して在籍している。

また、彼らは全員が優秀なセッション・マンでもある。メンバー間で互いのリーダー作に参加しあうことはもちろん、トロント産のさまざまな作品でも演奏をしている。サイケデリックな作風で電子音楽からブラジル音楽までをダイナミックに横断するサンドロ・ペリ。重要レーベル、ラット・ドリフティングをマーティン・アーノルドとともに立ち上げたギタリスト、エリック・シェノー。エクスペリメンタルなアレンジでブルースの可能性を広げるアレックス・ルカシェフスキー。オーウェン・パレットなどの作品に参加するギタリストでありながら、R&Bシンガーとしての顔ももつトム・ギルなどなど。素朴な弾き語りのフォークから、アヴァンギャルドなジャズまで。トロピカリア風味のサイケ・ロックから、アンビエントなR&Bまで。ジャズやインプロ系に限らない、実に多岐にわたるジャンルの作品に彼らの名前はクレジットされている。

さらに言えば、サンドロ・ペリやエリック・シェノーら、上に挙げた人たちを始めとしたロック/ポップス系のアーティストもまた、それぞれがさまざまなプロジェクトを立ち上げ、プレイヤーとして多くの作品に参加しあっている。担い手たちが濃密なネットワークを形成し、ジャズ/インプロ/フォーク/ロック/チェンバー・ポップ/R&Bといったジャンルが境なく隣接する。このネットワークの存在がトロントのインディー・シーンの面白さだ。そして、個性の強いプレイヤーたちがどの作品にもあまねく参加しているということが、シーン全体に共通したカラーをもたらしていると言うこともできる。例えば、サンドロ・ペリであれば、モーグ・シンセサイザーやオーケストラを多用した色鮮やかな世界。エリック・シェノーであれば、幽玄で幻想的なギター・プレイ。異なるタイプの音楽であっても、各プレイヤーが持ち寄る独自のスタイルがさまざまな割合でブレンドされ、交感しあうことで、シーン全体が同じ色のグラデイションをつくりあげている。ほかの地域ではなかなかみられない、特殊な環境だ。

そうした強いネットワーク、動的なシーンが可能であるのも、ライアン・ドライヴァー・クインテットのような確固とした存在があるからだろう。バンドのコンセプトは明確だ。古い楽曲に新たな解釈を。彼らが普段ライヴで取り上げているのは、30年代から50年代にかけてのオールド・ジャズやポピュラー・ヴォーカル作品。例えば『Glamour』ではフランク・シナトラ、ビリー・ホリデイ、ビング・クロスビーが歌った楽曲をピックアップしているし、YouTubeにはサミー・デイヴィス・ジュニアなどで有名な「And This Is My Beloved」を演奏するTRANZACでのライヴ映像が上がっている。多くの人々に長い間歌われ続けてきたスタンダードを、インタープレイを繰り返すことで紐解き、これまでみえてこなかった表情を浮かび上がらせる。それが彼らのスタイルだ。スロウな楽曲を多く選んでいるのは、ゆったりとした音の隙間に解釈を挟み込みやすいからだろう。

ただし、本作はスタンダード集ではない。アルバム・タイトルからもわかるように、収録されている楽曲はすべてトロントに拠点を置く作曲家/ギタリストのスティーヴン・パーキンソンによるものだ。パーキンソンもまたこの界隈の人物である。アカデミックな現代音楽や実験的な電子音楽作品を発表する一方、マーティン・アーノルドらとともにドライストーン・オーケストラを結成。エリック・シェノーも在籍するアリソン・キャメロン・バンドやライアン・ドライヴァーによるブリティッシュ・フォーク・プロジェクト、マーメイズのメンバーとしても活動している。2009年から2012年にかけて、パーキンソンがライアン・ドライヴァー・クインテットのために書き下ろしたという楽曲は、いずれもロマンティックなラヴ・ソングだ。普遍的な美しさをもった旋律や洒落た言い回しを用いた歌詞は、それこそライヴでカヴァーしている古い時代のスタンダードのよう。

「彼女はナイトクラブに行かない/やつらはちょっと気取りすぎだって/クリスチャン・ディオールは必要ないし、朝4時までのパーティーもいらないってさ/僕のベイビー、彼女は僕だけを気にかけてくれるんだ」(「My Baby」)

「僕は春の鳥が好きなんだ/君はどうだい?/僕は秋の枯葉が好きなんだ/君もそうだといいな/この世の中で誰か思い当たるふしはあるかい?/君のことを想っている誰かを/僕がそうしているくらいに」(「Birds In Spring」)

穏やかな歌声で静かに愛をささやき、物思いにふけるライアン・ドライヴァーに、チェット・ベイカーなんかを思い浮かべる人もいるかもしれない。ピアノとリズム隊が演出するしっとりとしたラウンジーなムードに、甘い言葉が溶けだしていく。サックスとギターはラヴ・ソングにおける感情の機微を豊かに表現している。メロディーをなぞっていたサックスは徐々にそこから外れて中空を舞い、エレキ・ギターはノイズを纏ってフリー・インプロヴィゼイションを延々と繰り返す。

シックでスモーキー。けれど、アヴァンギャルド。「Birds In Spring」におけるピアノとサックスのロマンティックなやりとりを静かに受けるドラムスとベースの抒情性。まとわりつくギターとサックスをかきわけて立ち上がる「I'm Feeling Fine」のピアノ・ソロの気高さ。前曲の気だるいアンサンブルを受けて始まる「My Baby」のウェットな歌いだし。恋人との別れを歌った「I Couldn't Help But Fall In Love」での胸を締めつけられるようなギター。「Dreaming Of Love」における静寂のインタープレイ。柔軟な発想と確かな技術が正統派の楽曲に深い陰影をつける。15年間、毎月、彼らが繰り返してきたことがここで実を結んでいる。これは新たな時代のスタンダードと言ってもいいかもしれない。

彼らはいまでもトロントの古いクラブで定期的にステージをとっている。古いジャズ・ソングと新しいスタンダードを携えて。自由なインプロヴィゼイションに溢れんばかりの情緒を込めて。週末を迎える金曜の夜遅くに聴く彼らの演奏は、さぞ素晴らしいものだろう。
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